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炎の魔術師と神の使徒  作者: 揚羽常時
竜の呪(ドラゴンズカース)編
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アルト公の想う者02


「あー、終わった」


 期末試験が終わり、一学期にやるべきことは、やり終えたと言える。


「てーるのっ!」


 エリスが声を掛けてくる。


「……………………」

「……………………」


 クリスとアリスが、胡乱げに見てきた。


「小生のせいではないでやしょ」


 とはいうも、根幹の部分では一面性がある。


 教室はざわめいていた。


 夏休み前と言うこともあって、確かに浮き足立つのもしょうがない。


 クリスとアリスとエリスについては、男子生徒による妬み嫉みはあれど、「致し方ない」……で決着していた。


「デートしよ!」


「構いやせんが」


 アレからコッチ、エリスの猛アピールは続いた。


 行け押せの攻性だ。


「小生の何が好きで?」


「思考!」


 といった具合。


 なかなかにポンコツ具合が進んでいると取るべきか……あるいは憎からずの無明性について論じるべきか……。


「いいんでやすがね」


 そんなわけで、デートすることになった。


「あのさ。あのさ。お金貰った!」


 近場のショッピングモールでのこと。


 藤原の四鬼を倒したことで、エリスは報酬を貰っていた。


 とりあえずは倭人神職会から。


 魔術師ではある。


 二次変換は使える。


 ただし今のところ結社には所属していなかった。


 色々と、こき使われるのが目に見えているので、


「やめときやっせ」


 と照ノが自重を促した結果だ。


 照ノは暇潰し。


 クリスは使命。


 アリスは宿業。


 それなりに、やる必然性を持つ。


 だがさすがに先までパンピーだったエリスを此処に加えるのには、少し躊躇が挟まれるのも、また致し方ないと言うべきか。


 罪悪感の又従兄弟。


「……………………」


 ピコピコとキセルが上下する。


「魔術師って結構稼げるんですね」


「それなりにでやんすな」


 実際に、魔術結社が、潤沢な資金を持っているのも大きいのだろう。


「照ノはこれで暮らしてるの?」


「殊更、必要はありやせんが」


 元が超常種なので、人間の定義からは少し外れる。


 とはいえ、五臓六腑はあるし、酸素と食事で生命を維持しているのも、また事実。


 その意味でなら、たしかに生活費程度は稼がなくてはならないのだろう。


「えい」


 と、愛らしい声。


 エリスが、照ノの腕に抱きついた。


 フニュンと胸が、押し付けられる。


「悪女め」


「感じます?」


「生憎と」


「私なら、照ノを養ってあげますよ?」


「可能でやすか?」


「田舎の名家なので!」


「そう言ってやしたね」


 嘆息。


「それで何しやす?」


「アイスクリームを食べたい!」


「ではそうしやしょ」


 そんなこんなで二人は、某アイスクリーム屋に入った。


 照ノは、オレンジのシャーベット。


 エリスは、メロン味だ。


「ん~~~! 美味しい!」


「そりゃようござんした」


「デートって感じだよね!」


「面白いでやすよ?」


「えへへぇ!」


 エリスの、はにかむ顔は、それはそれは美しい。


 可愛らしい。


 愛おしい。


 ――小生でなければ惚れてやしたね。


 そう自己論評する程度には、たしかにエリスは可愛かった。


「これがロマンスなら」


「でやす?」


「次は映画かな?」


「何か心当たりが?」


「夏休みに先んじて、アニメ映画が公開されてるよ?」


「ではそうしやしょ」


「そんなことになった」


 映画館へ足を向ける。


 チケットを買って、時間潰し。


「何しやす?」


「ウィンドウショッピング」


「にゃる」


 照ノもソレで良いらしい。


「ところで」


「はい?」


「いつまで腕組むつもりで?」


「照ノが私に惚れるまで!」


「南無」


 照ノは印を切った。


「何でよぅ」


「小生、さほど青春ではございやせんので」


「男の子なのに?」


「魔術師でやんすからな」


「理由になってる?」


「さて、どうでやしょ?」


 口の端をつり上げて、照ノは微笑した。


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