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0 おわりとはじまり
幸せになりなさい
誰かが言った。
私は何もないところにいた。
何故ここにいるのかわからない。
前はどうしていたのかもわからない。
ただ一つ解っていたのは
私は死んだのだ
だから「ここ」にいるのだ
深く、傷ついて
深く、絶望した
それでも生きた
さいごまで
あきらめずに
だからおねがい
ねむらせて
それに呼応するように闇が「わたし」を覆う
わたしは泣いていた
けれど、もう…
泣くひつようはない
わらうひつようもない
闇の中に沈めば
全てが終わる
私は意識を闇に委ねる
嗚呼、心地よい
全てがどうでもいい
真っ暗闇に染まりかけた意識にふいに柔らかいものが触れる。
それは決して不快なものではないけれど、「それ」が何かを私は理解する。
嗚呼、やめて
心地よく、抗い難い「それ」をわたしは拒む。
もうやすみたいの
駄々をこねる子供のように、そこから逃れようともがく。
「それ」が私を包んだ時、もう逃れられない事を悟った。
ああ・・・
わたしののぞみは絶たれたのだ。
あきらめないで
だれ?
その問いかけに答えはなかった。
幸せになりなさい
その言葉を最後に、私の意識は光に包まれた。