対決
二人は時間を跳んだ。
青島孝と関森リコが姿を現した場所に、林田未結が茫然と立ち尽くしていた。しかし、すぐに彼女の瞳の奥で光が激しく燃え上がり、その表情は挑戦的な笑みに変わった。
「…今の技は何? 突然現れたけど」
林田未結は、興味と警戒が入り混じった声で尋ねた。青島孝と関森リコが何も答えないのを見ると、彼女は構わず言葉を続けた。
「まぁ、いいか。青島孝… そろそろ、最後の石を見つけたようね」
彼女の言葉には、確信と焦りが入り混じっていた。
「林田未結… まだだ」
青島孝は、彼女の挑発に乗ることなく、静かに答えた。
「私の名前を、なぜ知っている?」
林田未結の眉がぴくりと動き、その表情に明らかな不審の色が浮かんだ。
「アークを抜け出し、反旗を翻そうとしている強化人間…」
青島孝の言葉に、林田未結は目を見開いた。
「…そこまで知っているとは。しかし、どうやって情報を掴んだ?」
彼女の声には、驚きと同時に、隠しきれない動揺が滲んでいた。
「…」
「喋るつもりがないなら、それでもいい。体に聞くだけだ」
林田未結は、そう呟くと同時に、信じられない速さで青島孝に肉薄した。彼女の姿が、まるで残像のように揺らめく。
「…!」
避けようとする間もなく、強烈なボディブローが青島孝の鳩尾に叩き込まれた。それは、常人ならば内臓が破裂するほどの、凄まじい一撃だった。
「ぐ…!」
だが、青島孝は、かろうじて体勢を保ち、その場に踏みとどまった。彼の口から、わずかに声が漏れる。
「…やはり、既に四石の能力を身につけたということか…!」
(四石の中の一つ、抗石の能力のお陰だがな)
青島孝は心の中で呟き、林田未結の出方を待った。
林田未結は、青島孝の能力を目の当たりにすると、容赦なく追撃に出た。今度は、先程の比ではない、渾身の力を込めた拳が、青島孝の顔面を捉えた。
「ごふっ…!」
青島孝の体が、まるでボールのように吹き飛んだ。骨が砕け、脳が揺さぶられるような、凄まじい衝撃。数メートル先の地面に叩きつけられた彼は、動くことができなくなったように見えた。
「…!」
しかし、次の瞬間、青島孝はゆっくりと顔を上げ、立ち上がった。体はわずかに震えているものの、その表情には、ほとんどダメージの色が見られない。
「今のも効かないか…」
林田未結は、信じられないといった表情で、青島孝を見つめた。彼女の攻撃が、まるで無効化されたかのように、彼の体にはほとんど傷がない。
青島孝は、林田未結をまっすぐに見つめた。その瞬間、林田未結は、生まれて初めて経験する感覚に襲われた。