エピローグ
青島孝は、関森由紀の両親から聞いた話を思い出していた。四石のパワーを全て取り込むと、時空を操る能力が備わるという。しかし、その能力を得るには、三年もの歳月が必要になるという。
今の状況で、三年も待つことはできないと判断した青島孝は、アークの基地に乗り込むことに賛成したのだった。
先行していた神山明衣が戻ってきた。彼女は様子がどこかおかしいと言う。
基地内に、誰一人いないというのだ。かつてアークが基地を移動させたことがあったため、今回もそうなのかもしれないと神山一輝は考え、林田未結に尋ねるが、彼女は新しい基地建設の予定はないし、これほどの規模の基地を放棄するとは考えられないと答えた。
神山明衣は、様々な機械は残されていることから、何か特別な理由があるのかもしれないと言う。
神山一輝は、世界各地でアークの活動が停止しているという連絡が入ってきたので今がチャンスだと判断し、転送装置の破壊を急ぐよう指示した。
妨害する者がいない基地への潜入は、いとも簡単に成功した。
一方、中原は、林田未結がアークの消えた理由について、ある予測を立てていることに気づいていた。しかし、それはあくまで予測であり、確実な情報とは言えない。それでも、彼は一応その内容を報告することにした。それは、次のようなものだった。
マシンクラスを創り出したのは、もともと人間だった。その技術は強化人間に受け継がれ、メンテナンスも同様に行われてきた。力によって支配されていた強化人間も、ただ黙って従っていたわけではない。彼らは密かに、メンテナンスの際に酸化しやすい部品と交換する工作を行っていたのだ。そして今、その部品が地球上の酸素と結合し、酸化による機能不全を起こし始めた。そのため、アークは一時的に活動を停止せざるを得なくなったのだ。
レジスタンスから事前に情報を得ていた林田未結は、自分がいた酸素の薄い世界では実現できなかった実験を、この世界で成功させた。残るは、その薄い酸素を増やすだけ。その準備はすでに整っている。つまり、自分がいた世界へ、こちらの世界の酸素を送り込めばいい…。
四石を最後までお読みいただき、ありがとうございました。続編として、「四石Ⅱ-もう一つの世界へ 第一部」を投稿しておりますので、そちらもぜひご覧ください。