決意ニ.
現代に戻った青島孝たちは、変わり果てた東京の姿に唖然とした。いつもなら人で溢れ、車で埋め尽くされているはずの道は閑散とし、そびえ立つビル群は、無表情な影を落としている。
特殊捜査室室長の神山一輝は、副室長の神山明衣からの報告を受け、さらに青島孝の進言も踏まえ、しばらく考えた後、受話器を握った。すでに、一般の電話回線は完全にダウンしており、メンテナンスを行う人間さえいない。多くの人々が消失し、残された人々は、政府の指示で地方へと疎開していた。東京に残っているのは、ごくわずかな人々だけだ。神山一輝が使っている電話は、政府との緊急回線だった。
「はい、もはや最後の手段です。アーク日本支部に直接乗り込み、次元転送装置を使って、向こうの世界へ行き、戦うしかありません」
神山一輝は、電話の相手に、自らの決意を伝えた。
電話の相手は、彼らが人類最後の希望であることを告げ、細心の注意を払って行動するようにと伝えた。
「わかりました。総理も、どうかご無事で」
神山一輝は電話を切り、皆が待つミーティングルームへと向かった。
アーク日本支部が、彼らの目の前に迫ってきた。神山明衣は、先頭に立って歩き始めた。彼女の役目は、基地内の状況を探り、安全な侵入経路を見つけることだ。
かつてこの場所で、特殊部隊の精鋭たちが、アークのレーザー兵器によって全滅させられた。まずは、レーザー兵器がどこに設置されているのか、そして、現在のアークの警戒態勢がどうなっているのかを確認する必要がある。
神山明衣が偵察に向かっている間、青島孝は、再び深く考えていた。特殊捜査室に保護されていた、関森由紀の両親から聞かされた話を。