決意一.
青島孝は深く考えていた。ジョージが指摘した、「自分たちの世界が正統ではない」という言葉が、彼の心を重くしていた。しかし、そうだとしても、罪のない人々が次々と命を奪われていく現状は、あまりにも悲惨だ。
林田未結は言っていた。「地球環境の悪化は、人間の数が多すぎるからであり、その人間を間引くことは、地球のためになる。地球は、人間だけのために存在するのではないというアークの考えには、私も賛成できる。でも、アークが目指している社会は、結局のところ強者が弱者を支配する差別的な社会であり、エゴイストの主張に過ぎない。それは、どうしても許せない」と。
ジョージを監禁することで、地球の分岐を防ぐことはできた。しかし、時折未来へ跳び、その都度報告に戻ってくる関森リコからの報告は、状況が一向に変わっていないというものだった。
(やはり、我々のいた世界が、正統な世界というわけではないのか…)
青島孝は、深く落胆した。
(こうなったら、もう一つの地球に乗り込んで、レジスタンスとして戦うしかないのか…)
林田未結は、もし向こうの地球へ行けるのなら、自分もレジスタンスに加わって戦うつもりだと言っていた。
関森リコは言う。「正統な世界なんて、どこにもない。時空を旅すればわかるけど、世界は無数に分岐していて、どの世界が正統かなんて、誰にも決められない。私たちが生きるこの世界を、少しでも良い場所に変えていくしかないんだ」と。
過去を変えたところで、未来が必ずしも良い方向に変わるとは限らない。変えられた世界は、新たな分岐した世界として続いていくだけなのではないか。そうであるならば、ここに留まっている意味はない。自分たちがいた現代に戻り、自分たちの手で戦うしかない。青島孝は、皆にそう伝えることを決意した。