ミーティング
三宅副支部長は、以前林田未結が監禁されていた部屋に拘束されていた。もちろん、青島孝の提案によるものだ。
三宅副支部長は、部屋を隅々まで調べたが、彼の能力をもってしても、脱出は不可能だと悟った。悟った後は、無駄な動きによるエネルギーの消耗を避けるため、ただ静かにじっとしていた。
特殊捜査室のミーティングルームでは、7人の男女がテーブルを囲んでいた。口火を切ったのは、神山一輝だ。
「世界各地で活動しているアークの拠点を潰すのは、容易なことではない。軍隊を動員している国もあるが、今のところ、うまくいっていない」
「このままでは、状況はますます悪化するでしょう。アークは、次元転送装置で次々と増援を送り込んでくるはずです」
林田未結が、深刻な表情で付け加えた。
「やはり、アークの元を断たない限り、この戦いは終わらないでしょう」
中原の意見に、全員が頷き、その視線は、自然と関森リコへと集まった。
「私は、タイムリープする覚悟はできています。ただ、過去に行くのは簡単ですが、こちらに戻ってくるのは、非常に困難なことになる可能性があります。帰り道を選ぶのに、大変な苦労を伴いますから」
関森リコは、複雑な表情で答えた。
「帰り道がたくさんある、ということですか?」
神山一輝が、確認するように尋ねる。
「未来へ跳ぶ時は、無数の分岐が存在するため、ほんの少しの選択の違いが、全く別の世界へと繋がってしまう可能性があるのです」
「なるほど… しかし、そのリスクを背負ってでも、私たちを過去へ送り届け、更に連れ帰ってくれる、ということですね?」
神山一輝は、全員の顔をゆっくりと見回した。
「誰が一緒に行くか、だが… まず、関森リコさんを護衛し、確実に戻ってこられるようにサポートできる人物であり、アークの芽を潰すための人材である事。そして… 過去の人間と円滑にコミュニケーションを取るためには、英語が堪能でなければならない」
「英語?」
神山明衣が、不思議そうな表情で首を傾げた。
「ああ。目的地は、産業革命直前のイギリスだ」
神山一輝の言葉に、部屋にわずかなどよめきが走った。
「それなら、淳を行かせるのが一番じゃないかな?」
神山明衣が提案する。
「彼はアメリカでの生活が長いが…」
神山一輝が難色を示すと、青島孝が口を挟んだ。
「確かに、現代アメリカ英語と、産業革命期のイギリス英語では、発音もイントネーションも大きく異なります。しかし、英語が堪能であれば、どうにか対応できるはずです」




