逮捕
神山明衣が治療を開始した。虫の息だった青島孝の呼吸が、みるみるうちに力強くなっていく。さすが、驚異的な回復力だ。
一方、金縛りにされている三宅副支部長は、ただ拘束されているだけで、なす術がなかった。電脳化を解除しても、状況は変わらない。
宙に浮かんでいた神山一輝がゆっくりと着地し、呟いた。
「さて、これからどうするか… 逮捕したとしても、こいつを拘束しておくのは、かなり大変そうだ」
その時、林田未結が、徐々に回復しつつある体で、かろうじて声を上げた。
「私は… どうなるの?」
その声は、まだ弱々しい。
「もちろん、君も拘束する」
中原が冷たく言い放った。
「アークに対しては、これからどうするつもり?」
林田未結は、なおも食い下がった。
「叩き潰すさ」
神山一輝が、力強く答えた。
「…私も、協力させてください」
しばらくの沈黙の後、中原が口を開いた。
「彼女の言葉は、本心からのものです」
「わかった。しばらく、ここで待機していてくれ」
神山一輝がそう言った、その時だった。突然、関森リコが現れ、青島孝の方へ駆け寄ろうとした。
「動くな!」
中原が鋭く叫び、彼女の動きを制止した。そして、すぐに彼女の心を読む。
読んだ内容を、彼はテレパシーで神山一輝に伝えた。指示を仰ぐためだ。
「解放してやれ」
神山一輝は、そう指示した。
動けるようになった関森リコに、神山一輝が穏やかに話しかけた。
「部下が、失礼なことをしました。いきなり現れたので、仕方なかったのです。私たちは、警察の者です。そこにいる、身動きできない男は、アークの者です。青島孝君と共に、私たちと同行していただきたい」
神山一輝が話している間、中原は青島孝とテレパシーでコンタクトを取り、彼の話が終わると同時に、その内容を伝えた。
「中原、東京の天気は?」
神山一輝が尋ねる。
「探ります」
中原は、意識だけを東京へ飛ばし、状況を確認した。そして、晴れていると答えた。
「都合がいい。こちらも晴れている。明衣、全員を瞬間移動させるぞ。中原、行き先を明衣に伝えてくれ」




