対決五.
三宅副支部長は、背後から声をかけられた。
振り返ると、そこには見覚えのない男女が立っている。
「アーク日本支部、副支部長の三宅だな」
男が確認するように尋ねた。その声は、静かだが、どこか威圧感があった。
「答える必要はない」
三宅副支部長は、二人の男女には興味がないと言わんばかりに、再び青島孝へと視線を戻した。しかし、彼の視界に、先ほどの女が入り込み、青島孝に向かって歩き出す。
少し前まで降っていた雪は嘘のように止み、空は信じられないほど晴れ渡っていた。まるで、この戦いの結末を見届けるために、世界がその姿を変えたかのようだ。
三宅副支部長は、青島孝へと歩み寄る神山明衣に、攻撃を加えようとした。加速装置を起動させ、一瞬で決着をつけるつもりだった。しかし、その時、彼の頭上から、男の声が響き渡った。
「三宅」
三宅副支部長が見上げると、なんと、5mほど上空に人が立っている。重力など存在しないかのように、彼は空中に静止していた。
「待たせたな」
空中に浮かぶ男、神山一輝がそう言葉を発した時、中原は心の中で、(本当に待っていた)と呟いた。
中原の能力では、すでに電脳に切り替えてしまった三宅副支部長を操ることはできない。そして、神山明衣も同じように、待ちわびていた。
神山明衣は、傷ついた細胞を再生するだけでなく、細胞を破壊する能力も持っている。しかし、三宅副支部長の脳は、すでにそのほとんどが電脳に置き換えられており、彼女の能力が及ぶ余地は、ごくわずかしか残っていない。最後の手段を使うにしても、相手はスピードに特化した能力を持つ。周囲への被害を考慮すれば、おいそれと使うことはできない。
三宅副支部長は、再び金縛りにあっていた。しかし、それは、先ほどまでとは全く違う感覚だ。力で押さえつけられている感じである。
「三宅副支部長は、私が止めておく。今のうちに、青島君を治療しなさい!」
空中から、神山一輝が神山明衣に向かって叫んだ。その声は、戦場に響き渡る雷鳴のようだった。
神山一輝の能力は、PK、つまり、物体そのものを操る能力だ。彼は、その能力で三宅副支部長を完全に拘束していた。