対決四.
「君は、これからどうするつもりだ?」
今度は明らかに、青島孝に向かって問いかけてきた。その声には、先ほどまでの冷酷さに加え、僅かながら興味のようなものが感じられた。
「これから…?」
青島孝はしばらく間を置いてから、言葉を続けた。
「アークを… 消滅させる事にするか… いや、正確には、出現させない、と言い換えるべきかな…」
そう言うと、三宅副支部長の目をまっすぐに見つめた。
その瞬間、三宅副支部長の全身に、稲妻が走ったような感覚が走った。彼の体が、まるで石のように硬直し、微動だにできなくなる。
(…その技は、彼には通用しない…!)
青島孝は、周囲を見回したが、そこには誰もいない。金縛り状態の三宅副支部長と、気を失って倒れている林田未結だけだ。
(見回しても無駄だ。私は、遠くから直接脳にコンタクトしている)
なるほど、テレパシーか。青島孝は、そう納得し、次のメッセージを待った。
(早く、その場を離れるんだ! 彼は、人間ではない! 脳が二つあるんだ! 君が使った技は、人間の脳にしか効かない! 間もなく、もう一つの脳… 電脳に切り替わるだろう! そうなったら、もう、手のつけようがなくなる!)
その言葉が脳内に響き渡るや否や、三宅副支部長の体が、動き始めた。
「…まずい!」
青島孝がそう呟いた瞬間、金縛りが解けた三宅副支部長が、信じられない速さで動き出した。
「…!」
青島孝が身構えるよりも早く、三宅副支部長の拳が彼の体を捉え、彼はまるで砲弾のように吹き飛ばされた。
「ぐ… あ…!」
三宅副支部長は、電脳に切り替わると同時に、加速装置を作動させ、青島孝を遥か遠くまで突き飛ばした。そして、落下地点を正確に予測し、彼が地面に叩きつけられる寸前に、その場所に移動した。
「ごぼっ…!」
四石の力を持つ青島孝だったが、スピードとパワーにおいて、三宅副支部長には全く及ばない。金縛りの技も通用しない今、彼には、なす術がなかった。地面に叩きつけられた体は、辛うじて生きているのが不思議なほどに損傷し、意識は朦朧としていた。
三宅副支部長は、倒れ伏す青島孝を、まるでゴミのように片手で持ち上げた。そして、次の瞬間、彼は、気絶している林田未結の元へと移動した。