表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

time52.次の未来へ

死んだ永市を乗せ、マリアは時空へと旅立った。時空時差を挟んで小一時間後、突如現れた巨大物体は見事爆発に成功した。

静かな爆発音と共に、細かな破片が辺り一面に火花をちらつかせながら落ちて行く。なんて穏やかな爆発なのだろう。これが夜だったら綺麗に見えただろうな、と望美は思った。

地球の未来は救われた。小さな少女の手によって。しかし、その少女を知る者は、ここにいる三人しかいない。


「はぁー、無事自爆出来たみたいね。ありがとう、マリアちゃん!」

 

空に勢い良く手を振る。アイのその勇ましい気持ちの切り替え方は、逆に微笑ましいくらいだった。


「アイちゃんはいつでも元気ね。すごいわ。その元気があれば、ここでも生きていけるわよ」

 

アイが「そうですか?」と笑って答えた。そして思い出したように手を差し出す。


「望美さん、仲直りして下さい。これからいろいろとお世話になりそうだし」

 

望美は差し出された手を躊躇う事なく握った。


「分かっている。私こそアイちゃんを出し抜いて悪かったわ。そうだ、アイちゃんの本当の名前、教えてくれる?」

 

アイが胸を張って、自慢気に答えた。


「あたしの名前は相川奈緒美。コードネームは苗字から取っていたの」

「そう。素敵な名前ね」

 

望美は手を繋いだまま、後ろを振り返った。ケイが二丁の拳銃を取り出し、血で染められたコンクリートの上に立っている。


「ケイ、貴方はどうするの?」

 

しばらく動かないように止まっていたが、やがて吹っ切れたのか、笑って答えた。


「一先これらを持って警察にでも出頭してみるか。戸籍も何もない俺がまともに取り扱ってもらえるかどうかわからないがな」空を見上げ、話しかける。「マリアに言われた通り、罪を償ってくる。いつ自分が消えるか分からないけどな」

 

ケイはそう言って歩み出した。私達とは反対の方向に。その背中に投げかけるように叫ぶ。


「大丈夫よ、きっと。私達が待っているから!」

 

望美は空いている方の手で下腹部をさすった。そこに新たな可能性を感じ取っていたからだ。




一ヵ月後、望美は妊娠した。ケイの子に違いなかった。それをアイに告げたら、悔しがりながらも祝福してくれた。


「ねえねえ望美さん、名前どうするの?男の子?それとも女の子かな?」

 

まだ気が早いわよ、と望美は笑って下腹部を撫でる。外は小春日和らしく、光から暖かみが感じられた。少し散歩でもしたくなる天気だ。望美はこたつから出ると身支度を始めた。


「少し外に出ない?ランチでも食べに行こうよ」

「いいわね。暇過ぎてこたつに入っていたら、今日も寝る所だったわ。あたしも早く仕事見つけなきゃ。今週の求人情報誌ついでに貰ってこよー」

 

アイは最初こそ戸惑い、しばらく落ち込んではいたものの、今では前向きに仕事探しを始めている。アイなりの未来をこれから見つけようとしていた。

望美はお腹を冷やさないようにと、こっそり腹巻を服の下に忍ばせる。そしてもう一度下腹部をさすった。自分は絶対に、女の子だろうと思った。そしてその名を呟く。


「行くよ、マリア――――」




終わり

四人のお話はこれでおしまいです。ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。数々のいたらない点もございますが、読者様あっての原作です。感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。

それではまた次の作品で!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ