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6.死別

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 魔物発生事件の翌日。


 結局、村の大人達は対応に悩んだ末、「魔物は勝手に死んだ」という事にしたらしい。

 まあ、「悪魔憑きであるアルティーノが殺した」とするよりは、風聞上よろしいのかもしれない。


 とはいえ、あの事件をきっかけに、村民達のアルティーノへの態度は少しだけ軟化した。本当に少しだけではあるが。







 いつも通り、朝目が覚めたアルティーノは、食事を食べ終わった後村の外れに向かう。

 食事の量がいつもより少し多かった気もするが、些細な違いとアルティーノは気にしなかった。


(やっぱり、リアは来ないかぁ)


 アルティーノもある程度予想はしていた事だ。


 立ち上がって、オフィーリアの家に向かう。


 体調自体は昨日の時点でかなり良くなっていたが、恐らくロアーナの死を知ったのだろう。

 今は、外に出る気分では無いのかもしれない。


 そうは思いつつも、心配になったアルティーノは、結局オフィーリアの家にやってきた。


 扉を叩くと、少しやつれた顔のクルレディアが出てきた。


「おう、坊主か……」


「おじさん!?なんでそんなやつれて……」


「悪いが、今はリアを一人にさせてやってくれ……」


「あ、はい……」


 やつれた様子のクルレディアに驚きつつも、アルティーノは頷いた。

 一応リビングに入るのはいいらしく、家の中には入れてくれた。


 クルレディアが対面に座ったところで、アルティーノはスポンジケーキと食器を召喚して、クルレディアに差し出した。


「あの、これ、どうぞ……少しでも甘い物食べて下さい」


「ッ……!?おう、悪ぃな……」


 目の前で起きた召喚に驚きつつも、素直に食器を受け取り、黙々とスポンジケーキを食べ始めるクルレディア。

 これで、多少は調子が良くなってくれるだろう。


 しばらく、クルレディアが食器を動かす音だけが響く。


 気まずい沈黙空間をどうにかしようと、アルティーノは何度か口をパクパクさせたが、こういう時に言うべき台詞が見つからなかった。


「「…………」」


 少しすると、クルレディアはスポンジケーキを食べ終わり、食器を机に置いた。


 流石に何か言おうと、アルティーノが口を開いたとほぼ同時に――オフィーリアが自室から出てきた。


「あの――」


「アル、来てたのね……」


「――あ、うん……」


 それだけ喋って、オフィーリアはアルティーノの隣に座った。


 再び沈黙が流れる。


「「「…………」」」


 沈黙に耐え切れなかったアルティーノは、立ち上がって帰ろうとした。


「あ、あの、僕帰りま――」


 その時、パチィン!という甲高い音が、アルティーノの隣から発せられた。

 オフィーリアが、自身の頬を思いっきり叩いたのだ。


「――え?」


「ごめん、いつまでもメソメソしてたら良くないよね。父さんも、もっと明るい顔しよ!母さんに叱られるよ!」


「ッ……そう、だな……」


 気持ちを切り替えたのか、オフィーリアは明るい――とまでは言えないものの、もう暗い顔はしていなかった。

 クルレディアも、苦笑しながらオフィーリアの言葉に頷いた。


(よかった……大丈夫そう)


 二人の事を心配していたアルティーノは、心の中で安堵した。

 結局アルティーノには二人を慰めたりする事はできなかったが、オフィーリアは自身の力で立ち直ったのだ。


 次の瞬間、ぐぅ~、とオフィーリアのお腹が鳴った。

 これにはアルティーノだけでなく、まだ少しばかり表情の暗かったクルレディアも、揃って笑った。


「も、もうっ、二人とも!アル!ご飯頂戴!」


 唯一オフィーリアだけは、顔を真っ赤にして叫んでいたが。







 その後、アルティーノとオフィーリア、クルレディアの三人だけで、村の共同墓地にロアーナを埋葬した。

 こういう場合本来は、村人が総出で葬式を行うのだが、アルティーノを参加させたかった二人がそれを嫌がったのだ。


 なので、今墓地にはこの三人しか居ない。


「ロアーナ、今までありがとう……。リアは俺が責任を持って立派な大人に育ててみせるから、見守っててくれ……」


「母さん、今まで育ててくれてありがとう……」


「おばさん、助けられなくてごめんなさい……それと、ありがとうございました……」


 三人それぞれの涙を流しながら、ロアーナの遺体に向かって黙祷した。


 どれくらい経っただろうか。

 数分か、数十分か。


 全員が涙を流し終えたところで、クルレディアがロアーナを棺に入れた。

 クルレディアは最愛の妻に口付けすると、棺を閉じた。

 もうロアーナは、太陽の光を浴びる事は無い。永久にこの棺の中で横たわったままだ。


 クルレディアは最後にロアーナの棺に向かって何か呟くと、予め掘ってあった穴に棺を入れた。


「「「…………」」」


 最後に全員で黙祷を捧げ、穴に土を被せて蓋をした。


 墓石には、「最愛の妻ロアーナ、ここに眠る」と記されている。

 読み書きのできないクルレディアが他の村民に教わりながら書いたので、字は汚いながらも、想いが籠もっていた。


 三人は墓石に背を向け、村に向かって歩き出した。

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