63.お茶会
『烈火』の人達とお茶を楽しむ事数十分、ようやく師匠が帰ってきた。
「客間が騒がしいと思えば、二人共帰ってきておったのか……おかえり、アル、リア」
「「ただいま帰りました」」
「それで……そちらの三人は?」
師匠はコートや杖を使用人に預けながら、僕らにそう訊いた。
僕が答える内容では無いので、リアに一任する。
リアは紅茶のカップを置くと、『烈火』を一人一人紹介した。
「こちら、Dランクパーティー『烈火』の三人です。左から、リィ、レーン、リシアン」
「お、お邪魔させて頂いております。リーダーのリィです」
「お邪魔させて頂いております。剣士のレーンです」
「お邪魔させて頂いております。巫女のリシアンです」
リィさんとレーンさんはぺこぺこと頭を下げるだけだったが、リシアンさんはきちんとした礼を取っていた。帝国貴族式では無いから、神国式だろうか……?
師匠は全員の紹介を受けると、帝国貴族式の礼を返す。
「宮廷魔術師長のルイ・トマスじゃ。リアのパーティーメンバーならば、好きに泊まっていっておくれ」
「お気遣いありがとうございます」
師匠の言葉に、リーダーのリィさんでは無くリシアンさんが言葉を返した。リィさんはあまりこういう会話に慣れていないのかもしれない。
師匠は部屋を一瞥すると、今度は僕に向かって質問をしてきた。
「リアのパーティーメンバーはおるのに、エルナト嬢は居ないのか?アル」
「ああ、エルナトなら、サーカットに旅立ちましたよ」
「サーカットか……冒険者らしいと言えば冒険者らしいな」
「アル、エルナトって、どなた?」
僕の報告に、師匠からは懐かしむ様な感想が、隣のリアからはなんだか冷たい視線が飛んできた。
火魔術師なのに、そんな人を凍らせそうな視線を放つのは、やめて下さい……。
「た、ただのパーティーメンバーだって」
「ふ~ん……?女の人?」
「え?う、うん」
「ふ~ん……?」
リアの視線が更に冷たくなった気がする。なんで。
リアの隣に座るリシアンさんが笑顔で頷いている……助けて、見捨てないで!
「どれ、わしも紅茶を貰おうかの」
助かった……。
師匠がその言葉と共に、僕達の向かい側、つまりリィさんの横に座った事で、場の視線が師匠に向かった。狙ってかそうじゃないかは分からないが、ありがとう師匠。流石師匠。
使用人さんが師匠の前に紅茶を置いたところで、リシアンさんが師匠に質問した。
「先程、宮廷魔術師長と仰られましたよね。宮廷魔術師の方には、聖職者……というか、神聖術師の方はいらっしゃるんですか?」
「む?いや、神聖術師はおらんな。代わりに光魔術師ならば、それなりにおるぞ。……神聖術師は久々に見たな」
最後の師匠の小さな独り言の様な呟きに、リシアンさんはしっかりと反応した。
「神国はあまり訪れないのですか?」
「まあ、な……。巫女のお主に言う事でも無いが、神国は個人的にあまり好かん事情があるのでな……」
「あはは……お気持ちお察しします。私も、パライス教は信仰していますけど、神国はあまり……」
「分かってくれるか……」
「ええ……」
なんだかこのままだと神国に対する愚痴になってしまいそうなので、話を変えよう。
「『烈火』の皆さん、今日……はもう夜になりそうなので、明日にでも、手合わせをしませんか?」
それに一番食い付きを見せたのは、レーンさんだった。
「本当か?俺達も、Cランク冒険者との手合わせなら、願っても無い事だ」
「レーンは相変わらずだな……まあ、俺も楽しみだが」
興奮して頷くレーンさんに、リィさんは苦笑しながら同意した。
「アル、私とも久々にしましょ!」
「うん、勿論。……師匠はどうします?」
「うむ、わしも良いぞ。冒険者の先達として、指導してやるのも吝かでは無い」
「「「「先達??」」」」
師匠の言葉に、『烈火』の三人とリアが頭にハテナマークを浮かべた。
僕も知らなかったから人の事は言えないが、師匠がSランク冒険者である事は、あまり知られていない事なのかもしれない。
「こう見えて、わしはSランク冒険者じゃからな」
「え、Sランク!?」
「あのドラゴンスレイヤーの!?」
ドラゴンスレイヤー?
なるほど、だから師匠は対魔物の話をする時の例えに、よくドラゴンを持ち出してくる訳だ……。
取り敢えず、明日の予定も決まったという事で、よしとしておこう。
そのまま僕達は、お茶を飲みながらの談笑を続けた。
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