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59.一週間

 アグマ・ネタル討伐から一週間が経った。

 もしかすると、準備から討伐までよりも、後処理のこの一週間が一番忙しかったかもしれない。それくらいの一週間だった。



 まず最初に行われたのが、討伐戦に参加した計十五人の叙勲。

 野営地で行われた簡易的な物だったが、ほとんどの人は緊張していた。

 緊張していなかったのはそういうのに慣れていそうな、貴族であるアメリアさんと師匠、それとリンさんだ。

 アメリアさんに聞いた話だと、リンさんはアメリアさんお付きの護衛らしい。なので、そういう場面にも結構慣れているそうだ。


 貰った勲章は『イェヘラ防衛勲章』。名前の通り、イェヘラの防衛に関して尽力した者に与えられる勲章だ。



 叙勲後は、協力のお礼として、野営地で色々と仕事をしているリエント子爵にショートケーキを贈ったりもした。大変喜ばれた。



 次に、町の復興。

 町、と言っても、壊れたのは冒険者ギルド近辺の数箇所だけだ。

 ちなみに、修繕作業の最中、一度だけ壊れた迷宮の扉から魔物が出てくるという事件が起きた。色々な作業でみんな忘れていたが、そりゃあ扉を壊れっぱなしにしていたらそうなる。

 幸い、出て来た魔物が第一階層の魔物で弱かった事と、その場に師匠が居た事で、大して大きな問題にならずに済んだ。


 師匠と言えば、復興作業に関して、師匠の働きは凄まじいものだった。

 討伐戦に参加した僕達を含む冒険者全員と、町の大工達に依頼された仕事は、壊れた家屋と冒険者ギルドの修繕。それも、なるべく早急に、という事だった。


 被害を受けた地域はごく限られるものの、破壊された家屋は漏れなく粉々なので、早急にと言われても困る。というのが、僕達の共通意見だった。


 そこに現れたのが師匠。

 粉々になった家の跡に立ち尽くしていた僕達を退かすと、師匠はアグマ・ネタルとの戦いに使っていた大きな杖を振るった。

 すると、大量の水が現れ、粉々の木材や石材を全て一か所に集めた。誰一人として怪我をする事も無く、どこかに木材が詰まったりする事も無く、綺麗に一か所に集められたのだ。恐ろしい魔術制御である。


 次に師匠は、元々家屋があった場所の前に立った。

 師匠が再び杖を振るうと、地面からゆっくりと土や石が生えてきて、それは段々と家の形をとっていったのだ。

 数分程で家が一軒建ち、集まった僕達は驚愕に包まれた。

 師匠はその間にも次々と家々を建設していき、数十分程でギルド以外の全ての修復が完了した。


 師匠は驚きで立ち尽くす僕達に、「ドアや机椅子などの家具は無いから、その辺りを設置してくれ」という旨の指示を出すと、冒険者ギルドの跡地に向き直った。

 大工さんや冒険者達が動き回る背後で、師匠は再び杖を振るう。

 師匠の杖の先端に付けられた魔石が光り、ゆっくりと土石が生えてくる。


 数十分もすると、元のギルドよりも明らかに質の良い建造物が出来上がっていたのだ。

 師匠は大工さん達に「建築の神」と崇められていたが、それはまあ別の話である。


 リエント子爵は思っていた数倍以上の速度で復興が完了した事に驚き、サールデさんは新築されて以前よりも良質になった冒険者ギルドに腰を抜かした。そして師匠はそれを見てドヤ顔をしていた。







「まあ、ようやく落ち着いたって感じかしらね……」


 新しくなった冒険者ギルドの食堂で、僕が召喚したショートケーキを食べながら、エルナトはそう言った。


 ちなみに、師匠はもう帝都に帰ったので、この場には居ない。


「そうだねぇ……」


 僕はコーヒーを飲みながら、エルナトの言葉に首肯する。


 そういえば、報酬の三百万アロードも払われたという事で、討伐戦に参加した面々もそれぞれの道に進む様だ。



 『闇の力』は、より高難易度の迷宮を求めて、自由都市サーカットへ向かおうとしているらしい。各ギルドのトップが集まる都市という事もあり、レベルの高い迷宮が幾つもあるそうだ。


 『清き乙女』は、元々の目標であったBランクに到達したので、アメリアさんの父親であるシーカ伯爵の領地、サヘラに戻る事になったらしい。セーアさんとはイェヘラで仲間になったそうだが、セーアさんも冒険者を辞め、アメリアさんと共に行く事にしたらしい。


 『ハンサムズ』はイェヘラに残るそうだ。彼らはそもそも日々の生活費を稼ぐ為に集まったそうなので、野望とかそういうのは無いらしく、イェヘラで気ままに過ごすと言っていた。



「――ねぇアルティーノ。この後、宿の私の部屋に来てくれないかしら?」


 どうやら僕達『空狼』も、また別の道に進む事になる、のかもしれない。

 僕は若干の緊張を感じつつ、エルナトの誘いに頷いた。

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