58.事後処理
先行した師匠がアメリアさん達に、アグマ・ネタルは討伐済みという事を告げ、一先ず野営地にある大きなテントを会議室代わりに使う事になった。
そういう訳で今僕達は、会議用のテントの中に集まっている。
全員が着席する中、師匠は起立すると、貴族らしい優雅な一礼をする。
「改めて自己紹介をさせてもらおうかの。Sランク冒険者にして宮廷魔術師長、『独城の魔術師』ルイ・トマスじゃ。よろしく頼むぞ」
師匠の美しい礼に、会議テント内が拍手で包まれる。
その後、ほぼ全員と初対面である師匠の為に、一人一人が自己紹介をした。
師匠は全員の自己紹介を聞き終えると、サールデさんに進行を任せる、と言った。
「やはりここは、ギルドマスターが司会進行をするべきじゃろうて」
「い、いやいや、Sランクですよね!?」
それに猛反対するサールデさん。
まあ確かに、ただ一人のSランク冒険者を差し置いて進行役を務めるのは、いささか荷が重いのかもしれない。
「じゃがしかし、立場的にはギルドマスターの方が上じゃぞ」
「それはそうですが……はぁ。分かりました、やりますよ」
説得は不可能と判断し、サールデさんは諦めた。
「ん゛ん゛……まずル――トマス子爵にお伺いしたいのですが、これは援軍要請を正式に受理されて行った戦闘行為、で間違いありませんよね?」
「ああ、間違い無いぞ。伝令は間違い無く帝都に辿り着き、要請は陛下が直々に受理なさった。わしはその援軍に志願し、陛下がそれを許諾して下さったのじゃ」
「なるほど、了解しました」
皇帝陛下……そういえば、僕は何度か帝城を訪れた事があるけど、一度も会った事が無い。いや、国主だし当然なのか?
「ええと……トマス子爵がイェヘラに滞在する期間の程は?」
「自己判断で問題無いと言われはしたが、そうじゃな……まあ、長くて一週間ぐらいじゃろう」
「なるほど……アグマ・ネタルの素材の扱いはどうなりますか?」
「外皮をいくらか分けてもらえれば、残りはイェヘラギルドの物として構わん」
その後、サールデさんは幾つかの質問を師匠に浴びせ掛けた。
どうやら師匠は、援軍としてだけでなく、陛下からの使いとしての役割も受け持っているらしい。
なので、リエント子爵に対する伝達要項なども幾つかあり、常に行動を共にする事は叶わないそうだ。
サールデさんは師匠に対する質問を一通り終えると、師匠に向かって頭を下げた。
「ありがとうございました。取り敢えず、確認する事は以上です」
次に、サールデさんは僕達の方を向いた。
「では次に、お前らに対する報酬の話をしよう」
その言葉に、主に『ハンサムズ』の面々が湧いた。
『闇の力』や『清き乙女』は金稼ぎが目的じゃないのか、喜んではいるがそれなりだ。
隣のエルナトは歓喜するのが恥ずかしいのか抑えているが、本当は死ぬ程嬉しがっているのが僕には分かる。なんなら、僅かに頬がにやけている。
サールデさんが大きく咳払いをすると、興奮していた面々が一気に静かになる。
「えー、金額についてなんだが……三百万アロード程が後日渡される。命を懸けて町を救った対価にしては安いかもしれんが、ギルドも余裕が無いんだ。理解してくれ。代わりと言っては何だが、リエント子爵から叙勲をしてもらえるそうだ」
サールデさんのその言葉に、一同が「おぉ……」と声を殺して喜んだ。
「そして、作戦に参加したお前らは、全員ランクを一つ昇級する事になった。つまり、『ハンサムズ』、『清き乙女』、『闇の力』はBランクに、『空狼』はCランクに昇級だ」
「「「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」」」
先程の報酬の下り以上の盛り上がりが、テント内を支配した。
流石に女性陣は叫んでいないが、今度は『闇の力』の男性陣も叫んでいる。
サールデさんは気持ちが分かるからか、今度はしばらく止めずにそれを見ていた。
しばらくして盛り上がりが収まると、サールデさんは最後の連絡事項を伝える。
「俺達冒険者ギルドは、町の復興にも協力する事になる。幸い、お前達の奮闘のお陰で建物の被害は然程多くないが、それなりの時間が掛かるだろうな」
「「「「「えぇ……」」」」」
今度は、大きく盛り下がったのであった。
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