51.ギルドへ帰還
「……ふぅ」
領主執務室を出て、守衛さんが見えなくなった頃、僕は小さく溜め息を吐いた。
アメリアさんが手詰まり感を出していたので思わず出て行ってしまったけど、大丈夫だっただろうか……?色々独断で動いてしまった面もあるし……。
そう思って横を歩くアメリアさんを見てみると、アメリアさんは足を止めてポツリと呟いた。
「……アルティーノは、歳の割にしっかりしていますのね」
「……はい?」
先程の件に関して何か言われるとは思っていたが、褒められるとは。
「わたくしでは、リエント子爵を納得させて、マスターの指示を達成する事は出来ませんでしたわ」
アメリアさんは悔しそうにそう言った。
……うーん、僕は大分独断で動いた所が大きいし、ショートケーキって言う盤外のカードを切ったからなぁ……。
「勝手に『協力を惜しまない』とか言って、独断行動しちゃいましたけどね」
「それは、ギルドマスターの名代として来たのですから、ある程度許容範囲内の筈ですわ。マスターに責められる事も無いと思いますわ」
「そうですかねぇ……そうだといいですけど」
多少なりとも愚痴を言われる覚悟はしておいた方がよさそうだ。
「まあともかく、今は無事避難勧告を出す事に成功した事を喜びましょうよ」
「……そうですわね。そうするとしましょう」
慰める様に言った僕の言葉に、アメリアさんは頷いてくれた。
無事に領主館を出て、冒険者ギルドに戻って来た。
中は騒がしいかと思っていたのだが、人っ子一人居ない。
ギルド職員だけが、いつもの様に受付のカウンターに立っていた。
アメリアさんはサールデさんを呼んでもらおうと、受付嬢に近付いた。
「マスターにお取次ぎを」
アメリアさんはそう言いながら、冒険者カードを提示した。
受付嬢はそれを見ると一つ頷き、カウンターの奥に引っ込んで行った。
「少々お待ち下さい」
受付嬢が走り去っていくのを見送り、しばらくすると、サールデさんが直々にやって来た。
てっきりこっちから行くものと思っていたから、少し驚いた。
アメリアさんはサールデさんがやって来るのを見ると、上位の貴族に対してする様な、臣下の礼を取った。
慌てて僕も見倣う。
「マスター、名代の役目、果たして参りました」
「おう、よくやった。詳細な報告は、後で報告書としてまとめておいてくれ」
「承知致しましたわ」
アメリアさんはサールデさんの言葉に返事を返すと、臣下の礼を止めて立ち上がる。
僕もそれに倣って立ち上がった。
「取り敢えず、こっちは冒険者達への通達を済ませて来た」
「なるほど、通りでこんなに閑散としているのですわね」
アメリアさんは一つ頷いた。
もう既に作戦に参加しない冒険者達への避難勧告を済ませておいたから、ここまで静かなのだろう。
「必要な物資の買い出しなんかは、職員に任せてある。俺達は、一先ず連携の練習をしよう。訓練場の方に各班を待機させてある」
「承知致しましたわ。行きましょう、アルティーノ」
「分かりました」
歩き出したサールデさんに付いて行くアメリアさんに、僕は付いて行く。
よく見るとサールデさんは帯剣しているし、アメリアさんも腰に小さな杖を差していて準備万端みたいだ。
案外、冒険者も常在戦場の心構えが必要なのかもしれない。
僕はそう思いつつ、訓練場までの道筋を歩いた。
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