47.作戦会議(3) 顔合わせ
「「失礼します」」
エルナトの背後に付いて、『会議室』というプレートが提げられた部屋に入る。
部屋の中には大きな机と、それを囲むように設置された椅子があった。
「おう、よく来たな。まあ他の奴らが来るまで座って待っててくれ」
「「はい」」
部屋にはまだサールデしか居ないらしく、座るよう促された僕達は、『空狼』というプレートが置いてある席に座る。
待ってる間座っているだけというのもあれなので、茶を楽しもうと、机に手を突き異能でお茶を召喚する。最近は空間魔術ばかりだったので、少し新鮮だ。
「おぉ?これが空間魔術か?」
「ええ、そうです。遠慮せずどうぞ」
「そういう事なら頂くぜ」
やはり、初見だと異能よりも空間魔術に見えてくれるらしい。
その事を再確認しながら、召喚したお茶を啜る。
ほどなくして、部屋に三人組の女性が入って来た。
パーティー名と人数からして、『清き乙女』の面々で間違い無いだろう。
「あら、お茶がありますのね。気が利きますわね」
「俺が用意したもんじゃねえぞ。そこのアルティーノのだ」
「そうですか。ありがとうございますわ」
「いえ」
リーダーの金髪の女性――アメリア・シーカさんは僕に礼を述べると、優雅な動作で席に座り茶を飲み始めた。
その所作や家名がある事からも、彼女が貴族である事が窺える。ただ、僕は貴族の家に関してはまだ勉強途中なので、彼女の家の爵位なんかは分からないが……。
「ああ、そうだアメリア。悪いんだが、やっぱり領主関係の話を頼んでもいいか?」
「ええ、勿論ですわよ」
「そうか、助かる。魔通装置での内容が芳しくなくてな……」
知らない単語も出て来たが、それよりも気になる事がある。
「領主関係の話ってなんですか?」
「ん?ああ、住民の避難関連は領主に頼まなくちゃいけないんだが、領主が代替わりしたばっかりの若造でな……。避難要請を出してくれと言っても聞いちゃくれねえんだ」
「なるほど……その領主様って、ちなみに爵位は?」
「子爵らしい。まあ、俺は貴族の爵位の詳しい事は知らんがな」
子爵に迷宮のある割と重大な町を任せるのはどうなのだろうか……と思ったが、口には出さない。
案外帝国は人手不足なのかもしれないし。うん。
「貴方、貴族なんですの?」
茶を啜っていると、アメリアさんから話し掛けられた。
「ええ、まあ、一応……。子爵家の長男です」
「あら、これは申し遅れましたわね。わたくしはシーカ伯爵家が次女、アメリア・シーカですわ」
「こ、これは失礼を。トマス子爵家長男、アルティーノ・トマスと申します」
アメリアさんが椅子から立ち上がってカーテシーを取ったので、慌てて貴族の礼を取る。
「トマス子爵というと……ああ、宮廷魔術師長の……」
「すみませんが、僕はシーカ伯爵に関して寡聞にして存じ上げないのですが……」
「その年齢なら仕方の無い事だと思いますわよ。シーカ伯爵……私の父上は、サヘラ一帯の領主を務めておりますわ」
サヘラというと……確か、リアが行った方の迷宮がある町だったか。
なるほど、という事は、他の迷宮がどんな感じなのかを学ぶ為にやって来た、みたいな感じだろうか?
僕がそんな事を考えたその時、部屋に八人組が入って来た。
先頭に居る二人は、茶髪の美形男と、黒髪を伸ばして片目を隠した男だ。
「ごきげんよう諸君!我こそが『闇の力』を率いる――」
「やかましい」「騒がしいですわよ」「うるせえ、さっさと座れ」
「あっ、ハイ……」
サールデさん、アメリアさん、そして隣に立つ男性のそれぞれから窘められた男は、俯きながら席に座っていった。ちょっと可哀想だ。
サールデさんは全員が座った事を確認すると、立ち上がって喋り始める。
「よし、全員揃ったな。会議を始める前に、全員自己紹介といこう。……俺は冒険者ギルドイェヘラ支部ギルドマスター、『炎剣』のサールデだ」
サールデさんがそう言ったのを皮切りに、時計回りに自己紹介が始まる。
「Cランクパーティー『ハンサムズ』リーダー、ディッシュだ。クラスは剣士だ」
「同じく『ハンサムズ』メンバー、ラマイだ。クラスは風魔術師だ」
「同じくメンバー、ローマン。クラスは弓士」
「同じくメンバーでDランクのレイです。クラスは斥候です」
「C級冒険者パーティー『闇の力』の牽引者、魔剣士のファイスだ」
「『闇の力』が一人、闇魔術師ギデンス」
「『闇の力』の一員、Dランクの斥候ルーミス」
「……えー、『闇の力』のメンバーでDランクの戦士、サミナです」
「Cランクパーティー『清き乙女』のリーダー、火魔術師のアメリア・シーカですわ」
「同じく『清き乙女』のメンバー、剣士のリンです」
「同じく『清き乙女』のメンバー、暗殺者のセーア」
「Dランクパーティー『空狼』のリーダーで、魔物使いのエルナトです。こちらが狼の魔物のルプス」
「同じく『空狼』のメンバー、空間魔術師のアルティーノ・トマスです」
全員が順番に立ち上がって自己紹介を終えた。
……厨二病っぽいポーズを取った『闇の力』の三人にサミナさんがジト目を送っていたのは、気のせいだろうか。うん、きっと気のせいだろう。
サールデさんは再び全員を見回すと、咳払いをして宣言した。
「よし、それじゃあ会議と行こうか。議題は、『肥大化する巨人の討伐戦について』だ」
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