42.売却
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「――で、結局あの武器は何なの?」
ボス部屋を抜け出した後、周囲に敵が居ない事を確認すると、エルナトはそう問い掛けて来た。
そういえば、一旦ボスを倒してからみたいな事言ったっけ。
「銃っていう武器なんだけど、えーと……説明が難しいなぁ。実演しようか」
火薬を知らない人に銃の説明をするのは、少し面倒だ。
なので、拳銃を取り出して、実際に使ってみせる事にする。
「ここに弾丸が入ってて……まあ、弓矢で言う矢みたいな物」
「なるほど」
「で、ここの引き金を引くと――」
右手で銃の引き金を引く。
「――こんな風に、弾が発射されるっていう訳」
弾丸は、見えなくなるまで通路の奥に飛んでいった。
「へえ……どういう仕組みなの?錬金道具みたいな物?」
「あー……うん、まあ、そんな感じ」
説明が面倒だったので、そういう事にしておいた。
火薬はこちらの世界にもあるのだろうか?
僕の知識では、最初に火薬が発明されたのは、六世紀頃の中国だ。不老不死の薬を求めた錬丹術師達が様々な物質を実験する中で、偶然発見された産物。
偶然の発明なので、こちらの世界でも起こり得るかもしれないが……こちらの世界では、薬があまり発展しないという事が問題だ。
何故なら、病気になれば魔術を使えばいいから。
ならば、火薬も発明されていないかもしれない……。
「ねえ、それって私でも使える?」
「え?ああ……」
横に逸れた思考を元に戻し、エルナトの質問に答える。
「まあ、使えるけど、反動とかあるから、慣れないとちょっと難しいかも?」
「ふ~ん?じゃあ、実戦でいきなり使うのはやめといた方がよさそうね」
「そうだね」
そんな風な会話をしながら、どんどん帰り道を進んで行った。
途中でルプスが完全回復した事もあって、僕らは順調に階層を上り、ギルドに戻って来た。
ゴブリンキングの魔石はエルナトが持ち、ハルバードは僕が持って、カウンターに向かう。
「すみませーん。買い取りをお願いしまーす!」
「はーい……って、凄い物持ってますね……重そうなので、そちらからにしましょうか」
「た、助かります……」
かなりのサイズだったので、一旦一番近い机に置き、買取はカウンターでは無くそちらで行う事になった。
「これは……含まれている魔力が多いですね。何かしら能力がありそうなので、目利きが出来る人を連れてきますね」
「は、はい」
受付嬢はそう言ってハルバードから手を離すと、カウンターの奥に消えて行った。
「もしかしたら、魔剣かもね!」
「ま、魔剣?ハルバードなのに魔剣って呼ぶの?」
「そういう物なのよ」
「へぇ……」
魔剣。
聖剣と対を成す、強力な武器の事だ。
魔剣や聖剣は、全て何かしら特殊な能力を持っている。例えば、一度斬った傷は数時間癒えなくなるとか、斬った相手から魔力を吸収するとか、そういった能力だ。
魔剣と聖剣の違いは、主に三つ。
一つ目、聖剣はアンデッドなどの穢れた存在に対して、特攻を持つ事。
普通は斬れないレイスなども斬る事が出来るし、神聖魔術でしか殺せない高位のアンデッドを殺す事も出来る。
二つ目、聖剣は所有者を選ぶが、魔剣は誰にでも扱える。
魔剣は誰が手に取っても武器として扱う事が出来るが、聖剣は所有者と認めた者以外が触れると、反発を起こして握った者から魔力を吸収する。これがあるから、聖剣の持ち主は勇者と呼ばれる事がある。
三つ目、魔剣は人工で作る事が出来る。
数は非常に少ないが、熟練の鍛冶師ならば魔剣を打てるのだ。
とはいえ、どんなに熟練の鍛冶師でも、必ず打てるという訳では無い。数百年の天才が最高の設備を整えても、成功率は二、三割といったものらしい。
なので、魔剣は非常に貴重だ。貴重ゆえに、買おうとすれば値も張る。
だからエルナトは興奮しているのだ。
果たして、結果は……。
受付嬢が連れて来た、髭を蓄えた男性の鑑定の様子を見守る。
「ふむ……」
ごくり。
僕とエルナトは、同時に生唾を飲み込んだ。
「ギリギリ魔剣の域には届きませんが、かなりの業物ですな。少しくらいの欠けや刃毀れならば、自動で修復する力を持っております」
「ほ、ほう……」
「とはいえ、大きさや重さからして、かなり使い手を選ぶでしょう。なので、まあ四十万から五十万アロードといったところでしょうか……」
「「おお……!」」
魔剣では無いという話だったが、前回魔力結晶を売却した時以上の金額。
このハルバードだけでもその金額なのに、それに魔石まで加えれば――。
「はーい、全部で七十万アロードです!」
金額査定を終えた受付嬢がそう告げると、僕とエルナトは顔を見合わせ、グータッチをした。
「「んー、やったぁ!!」」
「あおおおおおおん!」
僕達の興奮を感じたルプスが、遠吠えを上げる。
その様子を見て、受付嬢が微笑みを浮かべていた。
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