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40.事後処理

「「ふぅ……」」


 ゴブリンキングがもう起き上がらない事を確認すると、僕とエルナトは揃って安堵の息を吐いた。


 しかし、同時にルプスが怪我をしている事を思い出す。


「ルプスっ!!」


 遠くに吹き飛ばされて倒れているルプスの元へ駆け寄るエルナト。僕もその後ろを付いて行く。


 ルプスはかなりの出血をしていたが、幸い意識を失っているだけの様だ。

 とはいえ、このまま放っておけば、直に出血死してしまうだろう。


「ああ……どうしましょ、包帯なんて持ってきてないし――」


「はい、ちょっと退いてー」


 自分の懐を探りながらアワアワしているエルナトを押し退け、異空間収納からポーションを取り出す。

 錬金術によって作られた高価な品だ。もしもの時の為に一瓶だけ買っておいたが、それが今なのだろう。


「そっ、それ……」


 流石のエルナトも、ポーションを見て動揺している様だ。無理も無い。これを買う時には、大体五十万前後掛かった。だが、仲間に対して使うのに、惜しむつもりは無い。


 確か、用法は、傷口に振りかけるもしくは飲ませるだったか。

 この感じだったら口に含ませようとしても飲めないだろうし、傷口に直接振りかけるのが良いだろう。


 瓶の蓋を開け、中に入ってる赤っぽい液体をルプスにかける。


「ぐる……」


 気持ち悪いぐらいの速度で傷が塞がっていく。

 流石に流れた血までは回復しない様だが、一先ずこれで死の危険は無くなった。


「よかったぁ……」


 後ろでエルナトが安堵の息を吐くのが聞こえた。


 取り敢えず、ルプスを楽な体勢にさせてやろう。


 そう思って手を動かしていると、後ろから今度は質問が投げ掛けられた。


「でも、本当によかったの?ポーションなんて使って……」


「ん?大丈夫だよ。ルプスは僕にとっても大切な仲間だしね」


 ルプスが狼の魔物で、他の冒険者からは好ましくない目で見られようとも、僕は彼の忠誠心の高さや、気高さを理解しているつもりだ。


「……そっか」


 エルナトも納得してくれたらしく、それ以上何かを言う事は無かった。


「……さて、この分だとルプスもすぐに目を覚ますだろうし、ゴブリンキングの死骸をどうにかしようか」


 僕がこの後の行動を提案すると、エルナトも頷く。


「そうね。……ゴブリンの素材は要らない物だし、魔石とハルバードだけ回収しましょう」


「ハルバード……あんな大きいの、扱う人が居るかなぁ?」


「うーん……体の大きい人なら、ギリギリ使えるんじゃないかしら?それか、亜人とかなら」


「亜人かぁ……なるほど」


 詳しい事は知らないが、巨人族なんかも居るらしいし、ならば買い手は見つかるだろう。


 取り敢えず、魔石の方はエルナトに任せて、僕はハルバードを異空間収納に仕舞う事にした。


「んしょっ……」


 少し重いが、なんとか収める事が出来た。


「……結構容量食うなぁ」


 ハルバードを入れただけで、収納可能量の三割程を持っていかれた気がする。

 質量や体積では無く、何か他の物が基準になっているのだろうか?

 後で要確認かもしれない。


 その事を頭に留めつつ、解体をしているエルナトの元に近寄る。


「どう?」


「んー、魔石は無事だったみたい。ちゃんと回収出来たわ」


 そう言ってニヤリと笑うエルナトの手元には、普通の魔石よりも大きい――例えるなら、新品の消しゴムぐらいだろうか――魔石があった。


「それだけ大きかったら、結構値段が付きそうだね」


「そうね。……さて、やる事も終わったし、ルプスを連れてさっさと部屋を出ましょう。でないと、ボスが復活するわよ」


「え、そんな早くに復活するの?」


「詳しい時間は不明だけど、三十分から一時間ぐらいって話よ」


 ……それはまずい。

 折角頑張って倒したのに、また戦う羽目になったらたまったものじゃない。


「……ってあれ、もしかしなくても、帰りにも戦う事に?」


「いや、流石に今日は帰りましょうよ。もう少し強くなって安定して勝てるようになるまでは、お預けね」


「……そっか」


 先に進んで再び戦う事にならない事への安堵と、頑張って倒したのに……という勿体無さがない交ぜになった感情が、胸中を支配した。


 まあ、安全が第一か。


 そう割り切った僕は、ルプスを起こして部屋の入り口に向かうエルナトを追い掛けた。

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