38.下へ下へ
数週間がして、僕もDランクに上がる事が出来た。
エルナト曰く、「Dランクに上がるのはそう難しくない」そうだ。彼女自身も、冒険者になって一、二か月で昇格したらしい。
そしてDランクに上がった僕達は、第三階層まで降りて来た。
迷宮の三の倍数階層の最奥には、ボスと呼ばれる守護者が居る。彼らを倒さなければ、それより下の階層に潜る事は出来ない。
「今までは一人だったから無理だったけど、今は行けると思うのよね」
エルナトはそう言った。
一度だけ彼女とルプスだけでボスに挑んだそうだが、返り討ちに遭ったそうだ。
最初のボスに勝つにはDからCランクのパーティーが必要らしいので、仕方無い事だと言える。
「じゃあ、これから挑みに行くの?」
「当然よ。その為に駆け足でここまで来たんだから」
何を言っているの、とばかりに首を振るエルナト。
そんな風な会話をしながら歩いている内に、エルナトのお目当ての場所に辿り着いた様だ。
「あれよ」
エルナトの指差す先には、迷宮の入り口と似て非なる扉があった。
どうやらあれが、ボスの住まう部屋らしい。
「ここで一泊していくわよ。流石にもう疲れたわ」
「ん、了解」
「がうっ」
エルナトの言葉にルプスと同時に頷きを返す。
エルナトは扉の右側に歩んでいく。それに付いていくと、そこには、他より少しひらけた場所があった。
他の場所よりも小石や草が少なく、整っている感じがする。
「凄いね、これ。自然に出来た物?」
「まさか。冒険者達が作った物よ」
エルナトはそう言うと、壁際に座り込んだ。ルプスもその傍に座る。
「大抵の場合は、ボスに挑む前に休憩なり睡眠なり、まあ休息をするのよ。だから、休息用の場所を作ったっていう訳。ボスの部屋の周りには、魔物も近付きにくいしね」
「へぇ、そうなんだ」
初耳の情報だ。
ボスから漏れ出る魔力が、魔物を近付けないのだろうか?
ともかく、これぐらいのスペースがあれば、いつものテントを広げられる。
地面に手を突き、久々に異能を使い、テントを召喚する。
「わ、これも空間魔術?凄いわね」
傍目から見れば空間魔術に見える様だ。
テントに合わせて、椅子や机、焚き火なども召喚していく。
これらは村から出た日の野営に使った物と同じ物だ。
「う~ん、よし、こんなとこかな」
「――え、うそ、これ、いいの!?」
『これ』とは、机の上に乗せられた料理の事だ。
どうやらエルナトは、今日は保存食で済ませるつもりだったらしい。
「うん、勿論」
「うわぁ~!」
一つ頷いてみせると、エルナトは目を輝かせて椅子に飛びついた。
ルプスも興奮気味にエルナトの足元に飛びつく。
「さ~て、僕も食べよっと」
その様子を見て苦笑いしながら、僕も席に着いた。
翌日。
充分な休息を取った僕達は、目が覚めて準備を終えると、ボスの部屋の扉の前に立った。
「他の冒険者、来なかったね」
「まあ、そもそもCランク以上のパーティーはイェヘラにはあんまり居ないからね。ここに挑むパーティーも限られてくるわよ」
「がうっ」
話を理解しているのかしていないのか、ルプスはエルナトの言葉に頷いた。
「ま、邪魔が来なくてよかったじゃない」
「それもそっか……」
「……よし、じゃ、行きましょ!」
「うん!」「がうっ!」
エルナトの言葉に勢い良く返事を返し、エルナトが扉に手を掛ける。
かくして、僕達は、第三階層のボスとの戦いを始めた。
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