表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/66

37.老人の酒盛り

 もしどこかでアルティーノの年齢を八歳と表記していたら、それは間違いです!すみません!

 トントン、と高級な扉を叩く。

 中から「よいぞ」という声が返って来るので、「失礼しますじゃ」と言いながら中に入る。


「ほれ、まぁ座れ」


 中に入って酒を飲んでいる初老の男性――ハミディムラ・アダルバート・パラルベントは、自分の座っている向かいの席を指しながら言った。

 その家名が示す通り、彼こそが我らが戴く皇帝陛下である。


「おや、今日はブラキウムは居ないのですかな?」


「そうだ。席も二つだけだろう?」


「おお、言われてみれば」


 ブラキウムとは、先代の帝国騎士団長だ。


 ハミディムラ、ブラキウム、そしてわしの三人は、時々こうして個室の店で酒を飲んでいる。

 それは、わしらが昔からの友人であるからだ。

 ハミディムラは彼が生まれた時から知っているし、ブラキウムは彼がまだ見習い騎士の頃からの仲である。


「あやつは、『息子の訓練がまだ足りない』とか言いおって、稽古をしてるらしいぞ」


「……あの子も災難ですな」


「まあ、なんだかんだ言って子の方も楽しそうだ。良いのではないか?」


 ブラキウムの息子は、現在の騎士団長である。

 ちなみに、息子といっても養子である。

 当時年齢が足りず騎士団に入れなかった彼を、ブラキウムが引き取ったのだ。

 その後ブラキウムによって地獄の鍛錬を施された彼は、騎士団長に上り詰めるまでになったのだ。

 騎士団長が変わって五年程、ようやく様になって来たかというぐらいだ。


「……それよりも、二人なのだから、敬語は無しにしてくれ」


「……そう言うなら、仕方が無いな」


「はっは、それで良い。むしろ、こっちが敬語を使いたくなってくるくらいだ」


「それは流石にやめんか、ハミディムラ」


 昔は、ハミディムラがわしに敬語を使う側だった。

 何を隠そう、ハミディムラの名付け親はわしである。

 当時の皇帝の長男であったハミディムラの名付けを、皇帝と仲の良かったわしが行ったのだ。


 ハミディムラが物心ついてからは、わしが教師として魔術を教えた。そのせいか、当時はわしがタメ口で、ハミディムラが敬語を使っていた。

 流石に今ではハミディムラも皇帝陛下なので、わしも敬語を使い、ハミディムラも臣下に対する言葉のかけ方をしている。

 まあ、こういう一対一の場面では、お互い友達言葉である事が多いが。


「それで、ルイの弟子というのは、どんな者なのだ?」


「空間魔術師じゃ。……そして、わしが居た世界の知識を持っておる」


 その言葉に、わしの正体を知っているハミディムラは大きく食い付いた。


「おぉ!もしや、二人目――いや、三人目の異世界人か!?」


「残念ながらそうでは無かった。あやつ――アルの知識は、異能によるものらしい」


「異能によるもの……なるほどな。まあどちらにせよ、異世界の知識は強力……すぐにでも会いに行きたいものだな」


「アルはイェヘラへ行ったぞ」


「そうか、それは残念だ……まあ、帰って来てからだな」


 発展した地球の知識は、色々な所で活用出来る。

 例えば、ラノベでもありがちな活版印刷なんかだ。これをわしが先帝に伝えたお陰で、帝国では識字率が向上した。

 それに、科学知識は魔術に活用出来る。ただ火の魔術を使うよりも、先に酸素を集めてから使うと言った思考をした方が、効果は大きい。


 そういった点から、ハミディムラは異能持ちを集めるのと同じくらい、異世界人を探す事を重要視している。まあ、わしの為という部分もあるだろうが……。

 しかし、異世界人は一向に見つからない。わしの九十年の人生でも、先程ハミディムラが言った様に、わしを含めた二人だけしか発見されていない。

 それだけ異世界人が珍しいという事か、それとも単にこの中央大陸に居ないだけか……。


 まあ、それはいい。


「それで、王国はどうなのじゃ?」


「ふむ。既にロルドを中心とした各都市に諜報拠点を設置しておる。王国は、情報の重要性を理解していないらしい。諜報員が捕まった様子も無い。なので、数年後の国王の代替わりの時期が機じゃな」


「代替わり……もうそんな時期か」


 一国の君主が変わるというのは、国が荒れやすい時期でもある。

 後継者争いに、人事の異動などもあり得るし、新たに王冠を得た王が無能であれば、最悪そのまま国が廃れる可能性もある。


「確か……ルーベットは、第一王子派と第一王女派で揉めておるのじゃったな?」


 ルーベット王国は、男系王族の国では無い。

 その優秀ささえ見せれば、仮に女性でも王位を手に入れる事が出来る。

 優秀で国民の信が厚い者が選ばれる、といえば聞こえは良いかもしれないが、その分王族同士の蹴落とし合い、足の引っ張り合いは増えていく。


 その点、パラルベント帝国は、基本的に長男のみが帝位を継承する。それが伝統なのだ。

 次男や三男、長女や次女は、全て長男を立てる様教育される。幼い頃から洗脳に近い勢いで教育される為、後継者争いはそうそう起きない。


「そうだ。今は第一王子派が優勢だが、第一王女派が逆転の為に打って出ようとする可能性は大きい。その機会を突くのが最も良策だろう」


「なるほどな……わしの引退前の最後の戦かの?」


「そうなるかもしれん。……その空間魔術師を連れて行きたいものだがな……。確か、戦時であれば、十二歳以上であれば、従軍が可能だったよな?」


「そうじゃな。アルは後五年か。……時期は合っておるな」


 将来軍属の予定ならば、今の内から戦を経験しておく事は悪くは無い。

 アルは既に充分実力を持っているし、どこかの部隊に配属されても問題無く立ち回る事が出来るだろう。


「五年、か。対王国戦、現実味を帯びる年数だな」


「宮廷魔術師団も、準備を進めておく事にしよう」


 そこで話を打ち切ると、わしとハミディムラは酒瓶を傾け始めた。

 少しでも面白いな、と思って頂けたら、感想・評価・ブックマーク等して下さると非常に嬉しいです!今後の活動のモチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ