35.魔力結晶発見!
「……ふぅ」
初めての迷宮での戦闘が終了した事を確認した僕は、安堵の溜め息を吐いた。
結界を張るだけで勝つ事が出来る簡単な仕事だったが、それは単にエルナトとルプスのお陰だ。慢心してはいけない。
「お疲れ様。凄い防御魔術だったわね」
「……そう?」
褒められると照れてしまうので、そんな返ししか出来なかった。
正面では、ルプスが倒したスケルトンの骨を齧って遊んでいる。
「あれ、素材回収しなくていいの?」
「あ~、そうね、スケルトンの骨は優先度が低いけど、今日はそんなに長く潜らないし回収しましょうか。……ルプス!齧っていいのは傷が付いてるやつだけよ!」
「がうっ!」
エルナトがルプスに向かって叫ぶと、ルプスは元気良く叫び、傷が付いた物とそうでない物を選別し始めた。頭の良い狼である。
ちなみに、スケルトンは魔石を落とさない魔物だ。
魔石を落とさない魔物は、とても珍しい。スケルトン以外で言えば、レイスなどの幽霊の類辺りしか居ないのだ。
エルナトはルプスを見て呆れた様に溜め息を吐くと、今度は僕に顔を向ける。
「今更だけど、貴方の魔術属性って何なの?」
「あー……空間だよ」
嘘を吐いた所で意味が無いしすぐにバレる事なので、素直に言う事にした。
エルナトは僕の属性を聞くと、非常に驚いた様だ。
「空間、ね……珍しいわね。聞いた事が無いわ」
「十属性の中で一番珍しいらしいよー」
数か月前にメローナさんに教えてもらった知識の受け売りである。
エルナトは「へぇ、博識ね」と呟いた後、スケルトンの死骸を回収しにルプスの方へと向かった。僕もそれに続く。
エルナトはルプスによって積み上げられた骨の山を見ると、「う~ん」と可愛らしく唸った。
「どうしましょ。割と長いから、持ってきた鞄に入らないわね……」
「あ、僕が運ぶよ?」
「あら、いいの?……って、貴方、何も鞄持ってないじゃない」
「いや、僕にはこれがあるから」
そう言いながら異空間収納を開いてみせる。
何も知らない人から見れば、目がぼやけた様にしか感じれない空間の歪みが生まれた。
「それが空間魔術ってやつ?」
「そうそう。その骨を入れてみてよ」
僕がそう言うと、エルナトは半信半疑といった様子で、異空間収納に骨を突っ込んだ。
すると、先端から徐々に骨が消えて行く。その様子に、エルナトは驚愕していた。
「うわー、凄いわね……これ、いくらでも入るの?」
「ん?いやぁ、まさか。色々制限はあるよ。まあ、この骨の山が2.5個分ぐらいは入るかな?」
「意外と結構入るのね……」
エルナトの言葉に答えながら、スッと拳銃を仕舞う。
その後は二人で手分けして山を処理した。
「四体分、意外と多かったわね」
「そうだね……ん、何か光ってるのがあるよ?」
作業が終わって辺りを見回してみると、隅の方の壁が光っているのが見えた。
僕が指を指してそれを伝えると、エルナトはそちらの方に視線を向ける。
「ん……?あ、魔力結晶じゃない!この階層で見つかるなんてラッキーね!」
「へぇ、あれが魔力結晶……」
「何よ、反応薄いわね!あれ、掌サイズもあれば二五万ぐらいになるのよ!」
「へぇ……って、え、そんな貴重なの!?」
エルナトに価値を伝えられて驚愕する。
ちょっとレアな鉱石ぐらいに考えていたが、かなり希少な鉱石の様だ。
目を凝らしてみると、掌サイズの二倍程はありそうだ。
二人して興奮しながら近寄り、採掘方法を考える。
「流石にツルハシを持ってきたりは……」
「してないよね……」
鉱石の採掘といえばツルハシだが、生憎と持っていない。
そもそも、こんなに早く魔力結晶と遭遇すると想定していなかったのだ。
それはエルナトも同じの様で、顎に手を当ててうんうん唸っている。
「仕方ない、魔術で頑張って削り取るわ」
「え、出来るの?」
「出来るけど、あんまり魔術に慣れてないから魔力切れするかもしれないし、制御を間違えてちょっと削っちゃうかもしれないけど……その時はごめんね?」
「いや、何も取れないよりマシだよ。お願い」
「分かった。やるわ」
エルナトは覚悟を決めた様な声で頷くと、人差し指の先を魔力結晶の周りに当てた。
エルナトが目を瞑ると、人差し指の先から闇色の光が漏れ出る。
数秒すると、エルナトはゆっくりと目を開け、魔力結晶の周辺を削り取る様に指を動かす。
僕は慌てて、いつ落ちてきても良い様に手を置いた。
ゆっくり、慎重に削り取る作業が終了すると、真下にあった僕の手元に魔力結晶が転がり込んでくる。
僕は素早く異空間収納を開き、魔力結晶を仕舞った。
「ふぅ……」
エルナトはそれを見届けると、安心し切ったのか電池切れの様に意識を失い、体がゆっくりと倒れる。
「あぶなっ!」
僕は慌てて腕を差し込み、エルナトの体を支える。
「魔力切れかな……?確か、無理に起こさずに寝かせとくのがいいんだよね」
師匠に貰った本で学んだ事を思い返しつつ、離れた所で骨を弄っているルプスを呼ぶ。
「ルプス、エルナトを乗せてあげられるかな?」
「がうっ!!」
良かった、主じゃなくてもある程度の指示は聞いてくれるみたいだ。
ルプスが「任せろ」と言わんばかりに鳴き声を上げたので、その背中にエルナトを優しく寝かせる。
「落としたり起こさない様に、ゆっくり動いてね」
「がうっ」
「敵は僕が倒すから、ルプスはエルナトを守っててくれる?」
「がうっ!」
魔物と言えど、忠誠心があると可愛いものだ。
僕は頼もしく鳴き声を上げるルプスにそう感じながら、先程来た方の通路に向かって歩みを進めた。
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