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32.人攫いか盗賊か

「さて……」


 どうしようかと首を捻りながら、アルティーノは冒険者ギルドを出た。


 当初の目的である迷宮探索をする為には、ランクをDに上げる必要がある。

 しかし、その為にはそれ以外の依頼を受けねばならない。それも、そこそこの数。

 この町の冒険者で地上依頼を受ける者は稀な筈だ。供給が少ない事が当然になっていると、依頼者側も依頼をあまり出さなくなってしまうだろう。

 現に、先程チラッと見たクエストボードに貼られていた依頼の数は、あまり多くなかった。


「全く、その辺りも教えてくれていいよね……」


 遠く離れた帝都に居るルイに向けて、文句を言うアルティーノ。

 先にその辺りの事情を教えてくれれば、事前に他の町でランクを上げてからここに来ただろうに。


 天を仰ぐアルティーノに、近付く三人の男達が居た。

 腰に短剣や直剣を差した、冒険者風の男達だ。


「よう坊ちゃん、なんか困ってんのか?」


 不意に話しかけられて驚くアルティーノだったが、礼を失しない様にしっかり受け答えする。


「ああ、えと、その……迷宮に潜ろうと冒険者になったは良いものの、ランクが足りなくて」


「そうか?なら、俺らのパーティーに入れてやろうか?俺らはCランクだぜ」


「えっ、いいんですか?じゃあお願いします!」


「おうよ。じゃあ付いてきな」


 リーダーらしき男はそう言うと、少し歩いて路地の方に消えて行く。

 アルティーノは慌てて男達を追い掛けた。


「ど、どこに行くんですか?」


「ん?ああ、えーっと……お前、武器持ってねえだろ?買ってやろうと思ってな」


「なるほど!」


 道理でギルドの反対側に向かう訳だ。

 納得したアルティーノは、しばらく黙って歩いたが……路地はどんどん薄暗くなっていく。

 異能持ち保護会の拠点の様に、裏路地の奥地にある武器屋なのだろうか?


「あの、武器屋はどこに――」


「チッ、もう面倒だ。ここらでよくねぇか?」


 アルティーノが質問しようとすると、リーダーでは無い一人の男が、じれったそうにリーダーに向けて言った。

 問われたリーダーは、溜め息を吐いた後、男の言葉に頷いた。


「まぁいいか。とっととやっちまおうぜ」


 リーダーがそう言うなり、男達はそれぞれの得物を抜いて、アルティーノとの間合いを計り始めた。


「……どうして?」


「ああ?そりゃ、そんな高級なローブ身に着けた貴族の坊ちゃんが一人で溜め息吐いてたら、こうなるに決まってんだろ?護衛の一人でも付けとくべきだったな」


「……なるほど。納得しました」


 男達は恐らく盗賊や人攫いの類だろう。

 明らかに貴族っぽい見た目をした少年が、たった一人でその辺に突っ立っていれば、そりゃあ狙うというものだ。


「納得したんなら、そのまま無抵抗に捕まってくれるとありがてえな」


「いえ、それは出来ませんね」


「そうかい。……ッ!」


 リーダーはそう言うと、直剣を構えて突進を始めた。

 左右に立つ二人の男も、リーダーに合わせて動こうと少しずつアルティーノに近付いて来る。


「……異空間収納」


「魔術師かっ!」


 アルティーノが異空間収納の中から拳銃を取り出すと、リーダーは吐き捨てる様にそう叫んだ。

 アルティーノの攻撃魔術に備えて、リーダーは剣を縦に構えようとした。

 しかし、その行動は遅かった。


「ッ!」


 パァン、と乾いた音が響き、リーダーの首元に穴が開いた。


「……ア?――ごほっ、ごっ……!」


「「リーダー!!?」」


 次の瞬間、リーダーの首から血が噴き出し、二人の男は心配の声を上げる。


「さっきの言葉、そっくりそのまま返すよ。これで納得してくれたなら、無抵抗に捕まってくれるとありがたいんだけど?」


 アルティーノの煽る様な発言に、男達は激昂した。


「なんだとぉ!貴族のガキぁ!」


「舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」


「……ッ!!」


 喉を穿たれて喋れないリーダー以外の男は、アルティーノに向けて得物を振り回しながら叫んだ。

 怒り心頭で、会話が通じ無さそうだ。


「そっか……じゃあ、痛い目見てもらってから、衛兵に突き出すね」


「ンだとォ!?」


 アルティーノのその言葉で、男達は更に怒る。


 怒った男達は、短剣を腰に構え、アルティーノに向けて疾駆した。


 中々の速度ではあるが、対応出来ない程では無い。

 ルイに頼んで弾丸を当てる練習をさせてもらった時は、もっと速い速度だった筈だ。

 ならば、どうという事は無い。


「ッ!」


 素早く左右に二連射。的確に右肩を狙った。


 男達の短剣は宙を舞い、カラカランと地面に落ちて音を立てる。


「「グアアアアアッ!!」」


 男達は右肩を押さえてうずくまる。


「えーっと……こういう場合ってどうするのが良いのかなぁ……まあ、結界で捕まえといて、衛兵の人を呼んでくればいいか。……結界」


 アルティーノが掌を向けて唱えると、男達の周囲に不可視の壁が生まれる。


 きちんと結界が展開された事を確認すると、アルティーノは拳銃を異空間収納に収め、衛兵を呼ぶべく歩き始めた。







 次の日もその次の日も、そしてその次の日も、同様にして男達が衛兵に捕らえられたという。

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