31.冒険者ギルド
アルティーノが辿り着いた町は、イェヘラの町だ。
迷宮を有する都市であり、また帝都に次いで人口の多い都市でもある。
ルイの養子になった時に貰った貴族用の身分証を使い、町の中に入る。
「う~ん……取り敢えず、宿かな」
行き先を決めたアルティーノは、『INN』の看板を探して歩く。
数分歩いて目的の看板を見つけたアルティーノは、宿屋の中に入る。
カウンターでグラスを拭いていた店主を見つけ、そちらに歩み寄る。
「いらっしゃい。飯か、宿か?」
どうやらここは、飲食店も兼ねているらしい。
「宿をお願いします。一週間分先払いでお願い出来ますか?」
「あいよ。端数を引いて四万アロードにしてやる」
「ありがとうございます」
端数を割り引いてくれた店主に感謝したアルティーノは、懐からお金を取り出す。
事前にルイに貰った分がそこそこあるので、まだまだ心配する段階では無い。
「二階の四番目の部屋だ」
「ありがとうございます」
店主は鍵を机の上に置いて部屋の場所を告げると、またグラスを拭く作業に戻った。
アルティーノは礼を言いながら鍵を受け取り、一度宿屋を出る。
必要な荷物は一通り異空間収納に入っているので、アルティーノにとっては、宿屋はただの寝泊まりする場所でしかない。荷物を置いておく必要が無いのだ。
「さて、と……」
見覚えの無い町を歩き回り、冒険者ギルドを探す。
この町の迷宮――というか帝国の迷宮は、冒険者ギルドの傍にある。冒険者ギルドで手続きをした冒険者しか、迷宮に入る事が出来ないのだ。
(あの人、冒険者っぽいな……)
たまたま見かけた、魔物の素材らしき物で身を包んだ男の歩いてきた方向を辿ってみる事にする。
すると、アルティーノの狙い通り、冒険者ギルドに辿り着く事が出来た。
(おお、作戦成功)
内心で目論見が成功した事を喜びつつ、ギルドの内部に入る。
アルティーノの勝手な偏見では、ギルドはガヤガヤとして騒がしい感じの所だったのだが、その内部は意外と静かだ。
酒場の席に座っている人は少なく、カウンターに並ぶ列もほぼ無い。
(……ああ、なるほど)
アルティーノはその理由を理解した。
視線の先でご飯を食べていた男達が、立ち上がって奥の方にある分厚い扉の中に入って行ったからだ。恐らくあれが、迷宮。
つまり、このギルドに所属する冒険者のほとんどが、今現在迷宮を探索中なのだろう。
アルティーノは一つ頷いた後、がら空きのカウンターに向けて歩む。
「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」
笑顔で用件を尋ねる受付嬢に笑顔を返しながら、アルティーノは用件を伝える。
「冒険者登録をしたいのですが」
「……はい、承りました。では、必要事項の記入をして頂きます。代筆も可能ですが?」
「いえ、自筆で大丈夫です」
冒険者登録、という単語を聞いて、受付嬢は僅かに眉をひそめたが、すぐに笑顔を作り、記入用紙を差し出した。
アルティーノは差し出された用紙とペンを受け取り、サラサラと書いていく。
必要事項といっても、書く内容は登録名や年齢、職業の三つだけだ。
特に偽名で登録する理由も無いので、アルティーノは本名を書き、年齢に八、クラスは魔術師と記述した。
「八歳……」
用紙を受け取った受付嬢は、小声で呟いた後、用紙を握り締めて奥の方に消えて行く。
「少々お待ち下さい」
その言葉に従い少し待つと、しばらくして身分証の様な物を持った受付嬢が戻って来た。
「こちらが冒険者カードとなります。先程記述して頂いた登録名の他に、冒険者ランク、貢献度が確認出来ます。ランクについての説明は必要ですか?」
「お願いします」
冒険者カードを受け取り、受付嬢の説明に耳を傾ける。
「ランクは上から順に、S、A、B、C、D、E、Fの七つです。依頼を達成するか、迷宮から素材などを採取してくると貢献度が溜まり、貢献度が一定まで到達するとランクが上昇します。パーティーを結成したり迷宮に潜ったりする事が出来るのはDランクからなので、ご注意下さい。また、Cランクに上がる為には、一定以上の在籍期間が必要なので、そちらもご注意下さい。以上です」
「ご丁寧にありがとうございます」
どうやら、迷宮に潜るまでの間に依頼を幾つか達成しなければならない様だ。
カウンターから離れながら、どうしたものかとアルティーノは首を捻らせるのだった。
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