30.出立
そして、三日後。
アルティーノとオフィーリアは、帝都を発つ事になった。
二人共、二日の間にそれぞれの準備を終えている。
アルティーノは、ルイから貰った魔術師用のローブを着込み、異空間収納には拳銃や食料などを入れれるだけ詰め込んでいる。
人前ではあまり異能は使わない方が良いだろうとの判断だ。
オフィーリアは、同じくルイから貰ったローブを着て、それなりに高級な杖を腰に差している。火属性の魔石が使われており、オフィーリアにぴったりの杖だ。
「では二人共、五か月後に無事に会える事を楽しみにしておるぞ」
「「はい!」」
ルイは二人の手を握りながら言う。
二人は元気良く頷き、ルイは頷き返すと手を離した。
「「行ってきます!!」」
二人は声高に宣言すると、トマス邸に背を向けて並んで歩き始めた。
二人はしばらく一緒に無言で歩き、ある所でどちらからともなく立ち止まった。
二人の行き先は違う。アルティーノは北西部にある迷宮、オフィーリアは南西部にある迷宮だ。
ここで一度別れなければならない。
「アル、無茶しないでね」
オフィーリアは半ば涙声になりながらそう言うと、アルティーノに抱き着いた。
アルティーノは苦笑いしながら、オフィーリアを抱き締め返す。
「もちろん。リアこそ、怪我しない様にね」
「……うん」
十秒か、二十秒か。
しばらく無言で抱き合った二人は、そのまま無言で抱擁を解いた。
「「……またね」」
同時にそう言うと、二人はそれぞれ違う方向に向けて歩き出した。
オフィーリアと別れたアルティーノは、早々に帝都を出て、木にもたれかかりながら、ルイが魔術で作った地図を眺めていた。
「……よし」
地形や方角を確認し終えたので、異空間収納に地図を仕舞い込む。
立ち上がって伸びをした後、迷宮のある町の方角に向けて手を伸ばす。
「転移」
アルティーノの姿が掻き消え、視線の先にあった丘に出現する。
アルティーノの使う転移で転移先として指定出来る場所は、大まかに分けて三つ。
一つ目、視界の範囲内。見える所であれば、大抵どこにでも転移出来る。
二つ目、一時間以内に訪れた場所。例えば、今なら帝都なんかに転移出来る。
三つ目、慣れ親しんだ場所。村やトマス邸などが挙げられる。
アルティーノは旅の移動手段として、一般的に使われる馬車では無く、目視による転移を選択した。
「転移」
魔力の消費量はそれなりに多いが、数か月間の訓練でそれなりに魔力量は伸びているのだ。
アルティーノは繰り返し転移を使い、どんどん移動していく。
(う~ん……まあ、二日か三日で辿り着ければいい方かな?)
一方、オフィーリア。
オフィーリアはアルティーノと別れた後、事前に時刻を調べていた目的地行きの馬車に乗った。
貴族らしい身なりをした少女が一人で馬車に乗っていれば、人攫いに絡まれそうなものだが……その腰に差した杖の威圧感が、オフィーリアの周りに人攫いを寄せ付けなかった。
この杖はルイが奮発して買った物である。
柄は小柄なオフィーリアが持ちやすいようなサイズをしているが、魔石のサイズはそれなりに大きい。
一般的な冒険者が使う杖の魔石に比べて、二倍程のサイズがある。
あまり学の無い者でも、大きい魔石を嵌めた杖を持っている魔術師が危険である事は、当然理解出来る。
オフィーリアと共に乗った乗客は、オフィーリアの腰に差さる杖を見て、彼女の機嫌を損ねない様にしよう……と思い、僅かに距離を取っていた。
(避けられてるのかしら……なんでだろう?)
当のオフィーリアは、その理由が分からず首を傾げていた……。
三日後。
アルティーノとオフィーリアは、それぞれの目的地に無事辿り着いた。
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