28.アルティーノの一日
アルティーノは、朝七時過ぎ頃に起きる。
まずベッドから体を起こすと、備え付けの洗面台で顔を洗う。
この洗面台はルイの開発した物で、蛇口の様な見た目の水を出す錬金道具が付属している。これを捻ると、魔力を消費する代わりに水が湧き出てくるのだ。
顔を洗って寝間着から着替えると、姿見で見た目が問題無い事を確認してから部屋を出る。
「おはよう、アル」
「おはよう、リア」
大体部屋を出るタイミングはオフィーリアと被る。
オフィーリアの方が早起きではあるのだが、まだ一桁歳とはいえ、女子なのだから身支度に時間が掛かるのだろう。
他愛無い話をしながら、廊下を歩いて食堂に向かう。
時折すれ違う使用人には、必ず会釈をして挨拶をする。
ルイには使用人相手には労いの言葉だけで良いと言われたのだが、村育ちの二人には、まだまだ慣れない様だ。
食堂に入ると、丁度使用人達によって食事が用意されているところだった。
ちなみに、ルイはこの場には居ない。
ルイはアルティーノ達よりも早起きして、早い時間から城に向かうのだ。宮廷魔術師としての仕事がある以上、仕方無い事である。
「アルティーノ様、オフィーリア様、お食事のご用意が出来ております」
「「ありがとうございます」」
「いえ」
教えてくれた使用人に感謝の言葉を言いつつ、二人は並んで席に座る。
席に座ると、「いただきます」をしてから食事を始める。
帝国にはそんな文化は無いが、ルイが毎回そうしているので、アルティーノとオフィーリアもそうするようにしている。
ちなみに、食事に使う食器は、ナイフとフォークだ。
前まではアルティーノは箸を使っていたのだが、礼儀作法の授業を受けるようになってからは、慣れる為にも普段からナイフとフォークを使うようにしている。
普段からやっている事が、大事な場面でも表に出てくるのだ。
これが美味しい、あれが美味しい、なんて話をしつつ、食事を楽しんだ後は、勉強の時間だ。
二人は約一年後魔術学校に通う予定だ。魔術学校と名は付いているが、魔術以外の一般教養もある程度学ぶので、歴史や地理なども欠かせない。
それに、知識はあるに越した事は無いのだ。
「それでは、まず前回の復習をしましょう。冒険者ギルドや傭兵ギルドなどの、各ギルド本部が位置する場所はどこでしょう?」
「「自由都市サーカットです」」
「よろしい。サーカットは――」
自由都市サーカットとは、何処の国にも属さない中立の都市だ。
冒険者ギルド・傭兵ギルド・商業者ギルド・工業者ギルド・農業者ギルドの五大ギルドの本部がある都市で、人種を問わず様々な人々が集まる。
都市運営は五大ギルドのグランドマスターが合同で行っており、グランドマスターはギルド本部に所属するメンバーの投票によって選出されるので、民主制と呼んでも良いだろう。
ちなみに、付近の国家がサーカットに手を出そうとする事は、ほとんど無い。
商業・工業・農業全てが盛んで、歴史上攻め込まれた事は幾度かあるが、その度に冒険者や傭兵からの手痛い反撃を喰らわせている。
戦いが始まると本部以外のギルドに所属する冒険者や傭兵達も参戦するケースが多いので、大抵の国はそれが内乱に発展する事を恐れ、攻撃する事はしない。
手を出さなければ貿易の相手としてかなり良い相手なので、ここ百年近くは平和な状態を保っているそうだ。
四時間程の勉強が終わると、昼食と共に礼儀作法の時間が始まる。
昼食のマナーを厳しく見られたりするのだ。
ここでの点数は、オフィーリアよりもアルティーノの方が高い。
マナーの良さで名高い日本の知識を持っているので、その辺りが影響しているのだろう。
日本のマナーとは違う部分も多いが、そこにも順応する事が出来ていた。
一、二時間程して礼儀作法の授業が終わると、そこからは夕食まで自由時間だ。
自由時間は二人一緒に魔術の自主練をするか、それぞれで別れるかだ。
別れて行動する場合、アルティーノは本を読むか、銃の練習をする。
オフィーリアの方は、執事見習いとして勉強をしているクルレディアと話したり、外出してショッピングを楽しんだりしている。
なので、帝都にはオフィーリアの方が詳しい。
夕食の時間になると、ルイが帰ってくる。
三人で楽しく夕食を摂った後、一時間から二時間程魔術の勉強をする。
「二人共、よく成長しておるな。アル、異空間収納は出来る様になったか?」
「まあ、ある程度は。色々と出来そうな事も多いので、今は試行錯誤中です」
「うむうむ。リア、宮廷魔術師達との戦いで見つけた反省点について、改善出来そうかの?」
「はい!今はとにかく手札を増やそうと頑張ってます!」
「うむ、良いな。バリエーションの豊かさは、魔術戦においては大事じゃからな」
魔術の進捗を訊かれたり、時折アドバイスを貰ったり。
そんな風にして魔術の勉強をした後、順番にお風呂に入り、その後は就寝。
たまに就寝の前にオフィーリアがアルティーノの部屋にやって来て、少し話をする事もある。
大抵は、オフィーリアが外出した日に来る事が多い。
こんな物を売っていた、あの食べ物が美味しそうだった、とかそんな会話だ。
それが終わると、おやすみの挨拶をして眠る。
これがアルティーノの日常であった。
少しでも面白いな、と思って頂けたら、感想・評価・ブックマーク等して下さると非常に嬉しいです!今後の活動のモチベーションになります!




