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27.ギーアロスの話

「おい、ちょっと来い」


 ルイと宮廷魔術師達が勝負をしている最中、隅っこの方で観戦していたアルティーノの元に、審判から解放されたギーアロスがやって来た。


 用件が気になったが、時間が掛かる話であれば事前にアルティーノかルイに言うだろう、と思ったので、アルティーノは反論する事無く素直に付いて行く事にした。

 傍に居たオフィーリアも付いて来ようとしたが、ギーアロスに退けられてしまった。


「それで、何の用です?」


 ギーアロスが適当な所で止まり、壁に寄り掛かり始めたので、アルティーノは話を促した。


「……お前、異能で人を一人()ったんだってな?」


「…………」


「いや、責めてるわけじゃねえぞ。ただの確認だ。まあ、その反応で分かったがな」


 ギーアロスの単刀直入な質問に俯いたアルティーノに、ギーアロスは宥める様に言った。


「それが……どうしたんですか?」


「その時、不思議に思わなかったか?異能が普段より強力だったとか」


「……確かに」


 普段は小動物すら召喚・送還が出来ないのに、あの時だけは人間の送還が出来た。

 後日猫や犬を召喚出来ないかルイと共に色々検証してみたが、結局叶わなかった覚えがある。


「異能持ちには、三つ異能が強力になる時がある」


 ギーアロスは、指を三つ立てて言った。


「一つ目、異能が目覚めたばかりの時期。これはずっと強力というよりかは、瞬間的に出力が上がると言った方が良いか。覚えはある筈だ。例外無く異能持ちは経験する事だからな」


 これは恐らく、異能に目覚めた日の睡眠中、そして異能の特訓をしようとした日の、記憶の流入。

 覚えしかないアルティーノは、素直に頷いた。


 それを確認したギーアロスは、話を続ける。


「二つ目、心底怒った時。怒りに我を忘れ、異能が強力になる。より酷い怒りの場合、本人の意思関係無しに異能が暴走する。お前の場合は、暴走する程じゃ無かった様だな」


「…………」


 振り返ってみると、最低限の思考をするぐらいの冷静さは残っていたし、ルイとオフィーリアの声で落ち着くぐらいではあった。


「ちなみに、これが異能が迫害される理由の内の一つでもある」


 怒ると災害レベルの事象が発生する人間。

 確かに、何も知らない人からすれば恐怖以外の何物でも無いだろう。


「三つ目、闇魔術もしくは過度な絶望などで精神が崩壊した時。この場合は、過度な怒りの場合と同様に、異能が暴走する。揉み消されたそうだが、反抗的な態度を取った異能持ちを闇魔術で処理した際に判明したらしい」


「……揉み消された事、言って大丈夫なんですか?」


「異能持ちには共有しても良い事になってるからな。……ともかく、あの日伝えるつもりで忘れていた事を伝えに来たって訳だ。お前に言いてえ事は三つ、怒ってもいいが、我を忘れない冷静な怒りにしろ。そして、何があっても絶望するな。闇魔術師と戦闘する時には気を付けろ。いいな?」


 ギーアロスの言った事項を頭に刻み込んだ後、アルティーノは頷いた。


「よし。肝に銘じとけ。俺が来た理由はこれだけだ。何か言いてえ事は?」


「いえ、特にありません」


「そうか。じゃあまたな」


 アルティーノがふるふると首を横に振ると、ギーアロスは壁から体を離して去って行った。







 アルティーノがギーアロスに連れていかれ、残されたオフィーリアは、宮廷魔術師達の試合を観戦していた。


(あの人、ちょっと怖い感じの見た目だけど……アル、大丈夫かな?)


 話した感じ、悪い様な感じはしないのは、オフィーリアも分かっている。

 しかし、その態度や見た目は相変わらず少し怖い。


(何も無いといいけど……)


 何故かオフィーリアに恐れられるギーアロスであった。

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