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24.魔術を学ぼう

 アルティーノとオフィーリアは各々の部屋に案内された後、ルイと共に体育館の様な場所に連れて来られた。


「ここな、わしが暇な時に魔術を練習する場所じゃ。お主らも暇な時に使ってよいぞ」


「「はい」」


 二人仲良く返事をすると、ルイは満足そうに頷いた。


 ルイは土魔術で机を作り出すと、その上に火の魔術書を置いた。


「さて……オフィーリア嬢は、字は読めるかな?」


「……読めません」


「ま、そうじゃろうな。そう思うて、読み書きの出来るメイドを一人連れて来た。今は彼女に頼って魔術書を読むといい。読み書きを学ぶのはまた今度、じゃな」


「はい。分かりました」


「返事が良くて大変よろしい。分からない所があれば存分に訊いてくれて構わん。では、励んでくれ」


「はい!」


 オフィーリアは元気に返事をすると、机の上から魔術書を持って行き、体育館の端っこの方に立っているメイドの元へと向かった。


 ルイは今度は二人分の椅子を作り、その片方に座った。

 アルティーノも座るよう促されたので、ルイの反対側の椅子に腰掛ける。


「さて。空間魔術の魔術書なんて物は市場に出回らんのでな。学校から呼び寄せる訳にもいかんので、わしと共に使い方を模索していこうぞ」


「お願いします」


「うむ。……さて、アルティーノよ。お主は普段、異能をどの様に使う?」


「異能、ですか」


 空間魔術の話から一転、異能の話に。

 恐らく、ある程度関係があるからルイは話題を変えたのだろうと思い、アルティーノは訊かれた通りに答えた。


「そうですね、召喚と送還が主でしょうか。ご飯や武器を召喚したり、一度召喚した物を送還したり。他は……特に何もしてないと思います」


「そうか、召喚に送還……なるほど、なるほど。……まあ、それらは一旦置いておくとして。わしが直接魔術を教える相手には、ほぼ必ず、ある一つの質問をする事にしておる。お主の属性……『空間』と聞いて、何を思い浮かべる?」


「何を……」


「例えば火であれば、炎、物を燃やす、水素と酸素を取り込んで爆発させる、高温で物を溶かす、などなど……。その属性がどんな事を出来るか、それを思い付くだけ考える事が大切じゃ。特に植物や空間の様な既存の魔術が少ない属性は、それをどれだけ思い付けるかで引き出しの奥行が決まってくる。魔術戦において、魔術の引き出しは多い方が有利じゃからな」


「…………」


 そう言われ、アルティーノは空間について考えた。


(『空間』……空間を操るとか、そういう事かな……?空間を繋げる、とか。そうすると、転移とかも出来るのか……あとは、空間を圧縮するとかかな?)


「空間を繋げる、圧縮する、あとは……削る、とかですかね?」


「良い答えじゃな。付け加えるならば、広げるなどもあってもよいじゃろう」


「広げる……」


 アルティーノの答えに対して、ルイは更に付け足しをした。


「もっとも、どの概念が正解として魔術に昇華出来るのか、それは誰にも分からん。やってみなければな。じゃが、有名な空間魔術としては、そうじゃな……『転移(テレポート)』や『異空間収納(ストレージ)』などが挙げられる。先程のお主の回答に当てはめるならば、どちらも『空間を繋げる』に該当するじゃろうな」


 ラノベなどでもありがちな魔術だ。

 ルイが果たして実在の魔術を言っているのか、それともラノベ知識から繰り出される魔術を言っているのかは分からないが、どちらにせよ理論的には可能な筈だ。


「つまるところ、魔術とは想像力の結晶じゃ。どれだけ想像出来るか、それがどんな魔術を使えるかに繋がってくる。まあ、魔力量という問題もあるにはあるがな。……オフィーリア嬢に呼ばれておるから、わしはあっちに行ってくる」


「あ、はい」


 魔術とは、想像力の結晶。

 アルティーノは、今ルイに言われた言葉を頭の中で反芻した。



 一方、オフィーリアの方は。

 保護会の拠点でも発動に成功した火球(ファイアボール)を、狙った的に当てる事が出来るようになっていた。


「ほうほう、初めてすぐにこれとは、オフィーリア嬢は才能があるやもしれんな」


「ありがとうございます!それで……このまま次の魔術に進んで良いのかな、って思って」


「ふむ……」


 呼び付けられた理由を聞いたルイは、床から机を生やして、床に置いてあった魔術書を持ち上げた。

 持ち上げた魔術書を開き、火球(ファイアボール)の次の魔術を見る。火矢(ファイアアロー)という魔術の様だ。


「このまま火矢(ファイアアロー)に進むか、それとも進まず火球(ファイアボール)を極めるか。それはお主が決める事じゃ」


「え……?」


「例えばじゃ」


 ルイはそう言うと、魔術書を閉じて掌を天井に向けた。

 やがてルイの掌から水の球が浮き上がっていく。


「これがオーソドックスな水球(ウォーターボール)じゃ。ハンドボールぐらいのサイズをしておるな」


 ルイの言葉が終わると、今度は掌から先程の水球(ウォーターボール)より一回り大きい物が浮き上がってくる。


「これが大きさを変えたバージョン。こういう風に大きさを変える練習をしても良いし――」


 次は赤色の水球(ウォーターボール)が浮き上がってくる。


「色を変えたって良い。それ以外にも、形を球から崩したって良いし、中を空洞にしてみても良いかもしれん」


 ルイは説明を終えると、三つの水球(ウォーターボール)を全て霧散させた。


「要は、一口に火球(ファイアボール)水球(ウォーターボール)と呼んでも、その際に思い描く物によって大きく結果が変わるという事じゃ。そのレパートリーを増やしていくか、それとも他の魔術を学んでいって魔術自体のレパートリーを増やすか。そのどちらを選びたいか、という事じゃ」


「なるほど……」


 同じ魔術でも、使い手や使う時の状況によって、その効力は大きく変動する。

 その種類を増やしていくか、それとも今出来る事だけで満足して他の魔術に進むか。


(優れた魔術師は、両方を選び取る……果たして、オフィーリア嬢はどうじゃろうな……)


 一つの魔術のレパートリーを増やしつつ、他の魔術にも手を出していく。

 どちらか片方に集中するのではなく、両方を。

 歴史上の偉大な魔術師はそうやって学んできたし、ルイ自身もそうやって魔術を極めてきた。


「頑張ってみます!」


「うむ。そうするがよいぞ」


 笑顔で右腕を突き上げるオフィーリアを見て、ルイは表情を緩めた。


(やはり子供は良いものじゃな。……さて、これからどう成長していくのか、楽しみじゃの)


 アルティーノと、オフィーリア。

 正式に師弟関係を結んだのはアルティーノだけだが、ルイはオフィーリアの方も教え子として成長を期待していた。


 ルイは土魔術で作った椅子に座りながら、子供達の未来に心を躍らせていた。

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