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閑話3.ラノベ召喚

「その……な、アルティーノや」


「はい?なんでしょう?」


 ルイは凄く言いにくそうにしながら、アルティーノに向けて話し掛けた。


「お主の召喚出来る物に条件はあるかの?」


「そうですねぇ……質量の大きすぎる物や、複雑な構造をしている物は無理ですね。コンピューターとかスマートフォンは無理です」


(あ、でも、一度だけコンピューターを召喚した事があったような……あれは何だったんだろ?)


 そう。アルティーノが異能に目覚めた最初の日、無意識の内にコンピューターを召喚していた。

 その後は同じ事をしようとしても出来なかったのだが……まあ、それは一旦置いておこう。


 ルイはアルティーノの答えを聞くと、妙にもじもじしながら頼み込んだ。


「アルティーノや。……頼む、ラノベを召喚してはくれんか!」


「……は?ラノベ?」


「そうじゃラノベじゃ。転生前に続きが気になっとったヤツがあっての……どうしても読みたいんじゃ!」


「は、はぁ、別にいいですけど……」


「本当か!よっしゃー!!ありがとう、アルティーノ!」


 アルティーノが呆れながら頷くと、ルイは幼子の様に喜んだ。大きくガッツポーズしてまで喜んだ。


 その後、アルティーノはルイから件のラノベのタイトルを聞き、次々と召喚していった。


「おお、おお、まさか続きが見れるとは……!勝った、これで勝ったぞ!」


 何に勝ったのか、それを知る者はこの場には居ない。

 アルティーノは賢くも沈黙を保った。


 ふと、年甲斐も無くはしゃいでいたルイは、アルティーノに向けて落ち着いた様子で言った。


「あ、そうじゃ、これ、それぞれもう一つずつ出してもらえるかの?」


「え?分かりました……」


 アルティーノは困惑しながらも、言われた通りの事をした。

 ルイの執務用の机の上には、大量のラノベが積み上げられた。


「うむ……これはこうして……」


 ルイはそのラノベの半分を、魔術で作った箱の中に収めていった。

 その様子に更に困惑したアルティーノは、堪らず質問した。


「あの……それ、どうするんですか?」


「ん?供え物じゃよ、供え物」


「供え物……はぁ」


 帝都にあるルイの屋敷の庭には、かつてルイと共に冒険者をしていた者の墓がある。

 ルイはこれらのラノベを、そこへの供物として選んだのだ。


「もしかして……」


「うむ。あやつは転移者じゃった」


「そうですか……」


 ルイはしみじみとした様子で言った。

 しばらく懐かしむ様に空を仰いだルイは、やがてラノベに視線を落とした。


「あやつとは好みが似ておったからな。喜ぶに違いないと思うての」


 ラノベの表紙を優しく撫でながらそう言った。


 最初は呆れていたアルティーノだったが、その裏にあった理由を聞いて、呆れた事を後悔し――。


「ま、これでわしの退屈な執務時間にも華が生まれるというものよ!」


「…………」


 やっぱり、呆れて正解だったのかもしれない。


 アルティーノは、はぁ……と溜め息を吐いた。

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