19.帝都、模擬戦
アルティーノ達が王国を出てから、およそ二日後。
一行は、何の問題も無く帝都に辿り着いた。
帝都に入る際に検問はあったが、ギーアロスが居るお陰か、大した時間は取られずに帝都入りする事が出来た。
「「おぉ~……」」
帝都の熱気を見て、アルティーノとオフィーリアは感嘆の息を漏らした。
明らかに人の数が多い。
「……こりゃすげぇな」
クルレディアも、人の数を見て思わず呟いた。
村と比べてもロルドと比べても、明らかに大規模だ。
「このまま帝城に直行するぞ」
今にも馬車を降りて城下町に繰り出しそうなアルティーノ達を見て、ギーアロスは釘を刺した。
「……はぁーい」
オフィーリアだけが、残念そうに窓を見詰めて返事をした。
そのまましばらく走り、城の門前で馬車は止まった。
「行くぞ」
馬車が止まってすぐ、ギーアロスは扉を開いて外に出た。
それにアルティーノ達も続く。
ギーアロスはそのままスタスタと門に向かって歩いて行き、門衛に身分証を見せた。
「ふむ、問題ありませんね。どうぞ」
「後ろの奴らは俺の連れだ。あのガキは例のだ」
「分かりました。後ろの方々も、どうぞ」
貴族の身分証が効いたのか、はたまた事前に話を通されていたのか知らないが、とにかくアルティーノ達の通行も許可された。
ギーアロス以外の三人は、門衛に頭を下げつつ城内に入る。
「さて。これから、アルティーノの未来の所属先を仮に決める為の試験を行う。こっちの第二訓練場で行う」
第二訓練場は、宮廷魔術師団が演習を行う為の施設である。
当然、ギーアロスはそんな説明はしないが……。
ギーアロスは複雑な城内を、迷う様子も無くスタスタ歩いて行く。
アルティーノ達は迷子にならない様、必死にギーアロスに付いて行きつつ、すれ違う人々に会釈をしていった。騎士や貴族はそれを見て気分を良くし、使用人達は微笑まし気にアルティーノとオフィーリアを見ていた。
数分歩くと、目的の第二訓練場に辿り着いた。
「さあ、ここでお前の戦闘力がどのくらいのもんか見せてもらう。ある程度戦えるのであれば、仮所属先は宮廷魔術師団もしくは異能部隊、戦えないのであれば補給部隊に入ってもらう」
「補給部隊……?戦えなかったら、文官になるって話じゃ……?」
「いや、お前さんの場合は特例だ。ま、詳しい話は後で訊け。とにかく、今からお前には、宮廷魔術師の一人と模擬戦をしてもらう」
「……分かりました」
ギーアロスが質問を受け付けないのはいつもの事なので、アルティーノは溜め息を飲み込んで頷いた。
ギーアロスに背中を押され、アルティーノは訓練場の中央に躍り出る。
訓練場の二階席には、宮廷魔術師団の団員と思しき人々が詰め掛けている。
「審判は俺がやろう」
ギーアロスが審判までやってくれるらしく、向かい合うアルティーノと宮廷魔術師に近付いてきた。
「ん゛ん゛……では、これより闇魔術師サーズン対、えー……異能持ちアルティーノの模擬戦を始める」
その言葉に合わせて、闇魔術師サーズンは杖を構えた。それなりに大きな杖だ。
アルティーノも、普段使いの拳銃を召喚して構える。
アルティーノの拳銃を見て、「「「「「おぉ……?」」」」」という訝し気な声が上がった。
「……試合、開始!」
ギーアロスが開始を宣言するなり、サーズンは構えた杖から、黒い何かを生成し始める。
「ッ!」
しかしアルティーノはそれに先んじて、拳銃の引き金を引いた。
パン、パンと二連射。
攻撃魔術の生成途中だったサーズンは、高速で迫り来る弾丸に対応出来ず、一発目を左腕に、二発目を脇腹に被弾した。
アルティーノは、チラリ、とギーアロスを見る。
(終了宣言はしなさそう……宮廷魔術師団だし、治癒魔術も使えるから、って事かな?)
「――うおわっ!?」
その行動を隙と見たか、サーズンは闇魔術で矢の様な物を放ってきた。
慌ててアルティーノは飛び退き、その矢を避ける。
「反応速度も中々だな……」
「あの武器は何だ?見た事が無いが……」
「しかし、あの歳でもう二発も入れるとは、中々やるな」
観客たる宮廷魔術師達は、好き放題に感想を述べ合っている。
その最中にも、戦闘は続く。
「ッ!!」
アルティーノが連射した弾丸を、サーズンは闇魔術にて飲み込んで防ぐ。
(防御の魔術か……ただ闇雲に撃つだけじゃ、押し切れ無さそう)
アルティーノは胸中で少しずつ焦っていた。
一応、弾丸は懐に入っているが、リロードの隙は致命的。マガジンの中の弾は残り少ない。
対するサーズンも、それなりに焦っている。
(この攻撃は何だ?魔術なら吸収して反撃に用いれるのに、防ぐ事しか出来ない……)
サーズンの使っている闇魔術、吸収盾は、敵の攻撃を吸収する防御魔術だ。その攻撃が魔術であれば、それを魔力に変換して攻撃に転用する事も出来る。
しかし、アルティーノの放つ弾丸は、魔術では無いただの金属。当然、金属を魔力に変換出来る訳が無い。
サーズンが攻撃魔術を放とうにも、その隙に弾丸が飛んでくるのは、最初の攻防で分かり切っている。
サーズンが魔術を放つ準備をする間に、アルティーノは一瞬で引き金を引けるのだから。
(魔術なら魔力切れが見込めるが、この攻撃にはそんな概念はあるのか……?)
現在、アルティーノは弾切れを懸念して、サーズンが攻撃魔術を使えないギリギリのテンポで連射している。
マガジンの最大弾数は32発。残り8発。
その後数分もせず弾切れになるのは、明らかだった。
カチッ、という空撃ちの音が、訓練場に響き渡った。
「まずッ……!」
慌てて弾倉を抜き、リロードを始めるアルティーノ。
村に居た頃にそれなりに練習したが、実戦でのリロードは初めて。焦って手元が覚束無くなるのは自明。
サーズンは弾丸の猛撃が止んだのを察し、リロード中のアルティーノに向けて、闇の槍を放つ。
「わっ……!?」
リロードに夢中だったアルティーノは闇の槍に気付くのが遅れ、焦って避けようとしたものの、脇腹を貫かれた。
「うぐっ……」
こんなに大きな傷を負うのは初めてのアルティーノ。
そこそこ慣れているサーズンは同じ様な傷でも普通に動けるが、アルティーノは痛みに呻き、拳銃を落としてしまった。
カラカラン、と乾いた音が響く。
武器を手放してしまったアルティーノに向けて、次撃の闇の矢が放たれた。
「――ッ!」
「そこまで!!」
闇の矢がアルティーノの眼前まで迫ったところで、ギーアロスが終了宣言をした。
その瞬間、フッとサーズンの放った矢が霧散する。
「この試合、闇魔術師サーズンの勝利とする!」
うおおおおおおお、と大歓声が上がった。
その後すぐさま、魔術師が二人近付いて来て、それぞれアルティーノとサーズンの治療を行った。
「……凄い、痛みが引いていく……」
「ふふ、凄いでしょ?」
アルティーノが治癒魔術に感心していると、治療に携わった女性の魔術師はドヤ顔で帰って行った。
「ふぅ……」
ともかく模擬戦は終了し、これからアルティーノの仮の所属が決まる。
アルティーノは胸をドキドキさせながら、その時を待った。
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