18.帝国に行こう
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なんやかんやあって。
数日後、アルティーノ達の帝国行きが決定した。
「おいアルティーノ、十分以内に準備しろ。帝国に行くぞ」
突然保護会の拠点に戻って来たギーアロスの、この一言をきっかけに。
「いくらなんでも突然過ぎるでしょ……」
というメローナのツッコミは、誰にも反応される事は無かった。
準備と言っても、アルティーノ達にする事は大して多くない。
男性用の寝室で眠りこけるクルレディアを起こす事、それぐらいだ。
「アル君、リアちゃ~ん!いつでも戻って来ていいからね~!」
「は、はい、分かりましたから、離して下さい……」
アルティーノとオフィーリアが、行ってきます、とメローナに告げたところ、二人まとめて抱擁されてしまった。
「寂しいよ~……!」
「むぐ、あ、あの、離して……」
アルティーノはまだ大丈夫だが、オフィーリアは限界そうだ。
しかし、メローナはそれに気付く様子は無く、なんならどんどん抱擁を強めていく。
「うっ、助け……」
「――何やってんだ。さっさと行くぞ」
死にかけていたオフィーリアだったが、部屋に入って来たギーアロスのお陰で、何とか一命を取り留めた。
「ごほっ、ごほっ……ギーアロスさん、貴方は命の恩人です……」
「あ?何寝惚けた事言ってんだ?ねみぃなら馬車で寝とけ」
ギーアロスはそう言うと、再び部屋を出て行った。
アルティーノとオフィーリアは、メローナに向けて頭を下げて、部屋を出る。
「「ありがとうございました」」
「うん!またね!」
メローナは陽気に手を振って、二人と別れを告げた。
部屋の扉を閉めると、廊下にクルレディアが立っていた。
「メローナさん……だったか?俺も何か一言ぐらい――」
「――やめて下さい」
クルレディアがそう言いながらドアノブに手を掛けようとするので、アルティーノはその手を押さえる。
「なんでだよ……」
理由を知らないクルレディアは、何もしていないのに嫌われているのかと思い、肩を落とした。
この数日の間に本人から理由を聞いたオフィーリアは、あはは……と苦笑する事しか出来なかった。
ギーアロスに付いてロルドの町を出ると、そこには馬車が待っていた。
それも、貴族が使う様な、高級そうな箱馬車だ。
「こ、これに……?」
「黙って乗れ。質問は受け付けんぞ」
ギーアロスはいつも通りの様子で、箱馬車の中に入って行った。
アルティーノ達も、緊張しつつ箱馬車に乗る。
全員が馬車に乗り終えると、馬車は発進した。
「うわ、これ、乗り心地が凄く良い……」
アルティーノは呟く。
「え?これって良い方なの?」
オフィーリアは、僅かな揺れに不快そうにしながら訊いた。
「なんだ?坊主は馬車に乗った事があるのか?」
「いえ、無いですけど……普通の馬車は、もっと揺れるものらしいですよ」
同じく不快そうにしているクルレディアも問い掛けてくる。
アルティーノは直接馬車に乗った事は無いが、知識的に、こういう馬車は揺れるものだと知っているのだ。
「錬金術が使われてるらしいぞ。詳しい事は知らんがな」
機嫌が良いのか気まぐれか、ギーアロスがアルティーノの疑問に答えてくれた。
「へぇ~、凄いですね、錬金術!」
アルティーノは、拳を握り締めながら興奮した様子で言った。
その言葉に反応してくれる人は、残念ながらこの馬車には居なかった……。
しばらく馬車に揺られると、見覚えのある分かれ道を通った後、国境の検問所に辿り着いた。
検問所で馬車は数十秒止まったが、その後何も無かったかの様に通り過ぎて行く。
「え、馬車の中とか見たりしなくて大丈夫なんですか?」
「一応、俺も貴族の一員ではあるからな」
「え……」
むしろそちらの方に驚きである。
この、ガサツそうな男が、口の悪い男が貴族?
アルティーノの表情は驚愕で満たされた。
「おい、てめぇ今失礼な事考えやしてねえか?」
「い、いえ、そんな事は……」
アルティーノの表情から何かを読み取ったか、ギーアロスは瞑目を止めてアルティーノを問い詰める。
「チッ……まあいい」
ギーアロスは訝し気に舌打ちしたが、幸い更に問い詰める事は無く、瞑目に戻った。
「これが……」
更に馬車に揺られ、町が見えてきた。
「何驚いてんだ?こっから帝都まで、まだ二日はあるぞ」
「え、そうなんですか……」
町を見て感嘆の息を漏らしたオフィーリアに、ギーアロスは補足を入れる。
「ここは王国国境に最も近い町、ルェーンだ。ちょっと発音しにくい名前だが、まあそれなりに発展している」
名前に文句を入れつつ、ギーアロスは窓枠に肘を突いた。
「ま、まだ昼だ。今日はここでは泊まらん」
「二日間ずっとこの馬車なんですか?」
「ああ。飯はお前に頼むぞ」
「分かりました」
なんだかんだ言って、この男はアルティーノの召喚するご飯を好んでいるのでは……?と感じるアルティーノであった。
一方その頃、アルティーノ達の居なくなった村では。
「おい、聞いたか?」
農作業の休憩中の男が、他の農民に話し掛けた。
「何をだ?」
「今朝、クルレディアんとこの畑が誰も居なくてよ。不審に思った奴が見に行ったら、家に誰も居なかったんだと」
「なんだ、また魔物か?」
「それがよ、魔物の足跡もなんもねえし、農具も家に残ってたっつう話だ」
「ハッ……ま、クルレディアはあの悪魔憑きのガキと付き合いあったし、案外悪魔に連れ去られでもしたんじゃねえか?」
「ははっ、有り得るな」
そんな風な噂が、村中に広がっていた。
今現在彼らが帝国に居る事を知っている者は、当然この村には居なかった。
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