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17.魔術の適性

 夕食の時間帯には、フルスがやって来た。

 当然最初はリビングに入って来たのだが、寝室にクルレディアが一人で居る事を告げると、料理ごとそちらの方に移動した。

 料理人と農民、加工者と生産者という事で、話は盛り上がっていそうではある。


 ともかく、そういう訳でリビング側の料理はアルティーノが召喚した。


「リアちゃん、これ食べる?」


「あ、食べます。代わりにこれ食べますか?」


「食べる食べる~。ありがとー」


 メローナによる質問責めを乗り越えたからか、オフィーリアとメローナの距離感もそこそこ近くなっている。良い事だ。


「そういえば、魔術ってどんなのなんですか?」


 食事をしながら、オフィーリアはメローナに問い掛けた。

 確かにそれは、アルティーノも少し気になる。


「う~ん、まあ見せてあげれるけど……」


 メローナはそう言うと食器を置いて、右掌を天井に向けた。


「こんな感じね」


 メローナの言葉と同時に、メローナの掌から電気の球の様な物が生まれた。

 ビリビリ、と電気を発している。


「わー、すご――」


「――ちょっと!触ると危険よ!」


 オフィーリアが無邪気に突っつこうとすると、メローナが慌てて手を遠ざける。


「あ、ご、ごめんなさい……」


「いえ、いいのよ。ただ、雷魔術は大体危ないから、触らないようにね」


「分かりました」


 しゅん、とした様子で頷くオフィーリア。


「にしても、詠唱とか無いんですね」


「詠唱……?ああ、他の大陸の魔術師は、詠唱をするらしいわね。よく知ってるわね、アル君」


「あ、ええ……」


 異世界の知識を持っているアルティーノとしては、魔法や魔術といえば詠唱をするのが基本なのだが……どうやら、この大陸ではそうでは無いらしい。


「まあこれは初歩中の初歩なんだけどね。一応、攻撃系の魔術とかも使えるけど、ここじゃ危ないから見せられないわね……」


「しょうがないですね。また今度に期待します」


「そうね」


 メローナはそう言うと、雷の球を消した。


 メローナは再び食事を再開した。


「メローナさん、私に魔術を教えてくれませんか?」


「えぇ?うーん、魔術って適性があるし、それに才能があるかどうかで、使えないかもしれないからね……」


 おや?

 アルティーノの時と言っている事が若干違う。


 不思議に思ったアルティーノは、メローナに尋ねてみる。


「メローナさん、僕の時は才能云々とか言ってなかったと思うんですが?」


「ああ、異能持ちは必ず才能があるらしいわよ。ギーアロスが言ってたわ」


「へぇ……」


「まあ、ご飯を食べる時以外は暇だし、後で色々試してみましょうか」


「やった~!」


 ガッツポーズしたオフィーリアを見て、アルティーノとメローナは顔を見合わせて微笑んだ。







 夕食後。

 フルスは軽い挨拶だけして帰って行った。


 メローナとオフィーリアが一緒にお風呂に入り、その後アルティーノもお風呂に入って、アルティーノがお風呂を上がったタイミングで、メローナによる魔術の授業が始まった。


「はーい。メローナ先生の授業のお時間でーす。拍手~」


 パチパチ、とオフィーリアとアルティーノが手を鳴らす。

 それを見てご満悦そうにしたメローナ。


「ふふん。……さて、まず魔術の属性について話しましょうか。魔術の属性は全部で十種類よ」


 曰く。

 火・水・風・土・雷・光・植物・闇・空間・神聖の十種類だそうだ。


「今言った順番が、珍しさに直結してるわね。後に言った方が珍しいんだけど……神聖はちょっと別枠ね。これは基本的には後天的に得られる物だから」


「基本的には……って、先天的な場合もあるんですか?」


「あるにはあるわね。でも、とっても珍しいから、そういう人は『聖人』とか『聖女』って呼ばれて、神聖国に招かれるのよ」


「なるほど……」


 とはいえ、十万とか百万に一人みたいな割合らしいので、同時に二桁以上現れる事は無いそうだ。


 神聖を別枠とすると、メローナの雷は丁度真ん中になる。多くも少なくも無いという事だろう。


「で、適性を見るには、超熟練した魔術師か錬金道具かのどっちかが必要なんだけど……この場にはどっちも無いから、力業でやるしか無いわね」


「「力業?」」


「そ。ここに、植物と空間、神聖以外の属性の初歩の魔術が載ってるわ。今から君達には、これを全部試してもらいまーす」


「「えぇ……」」


 メローナの手に握られている本には、確かに七属性の魔術が載っている。

 それぞれ、火球(ファイアーボール)水球(ウォーターボール)風球(ウィンドボール)土球(アースボール)雷球(サンダーボール)光球(ライトボール)闇球(ダークボール)。属性違いなだけで、全部ボール系の魔術だ。

 雷球(サンダーボール)に関しては、先程メローナが使用した物だろう。


「ちなみに、適性の無い属性を無理に使おうとしたら吐いたり頭痛がしたりするから、少しでも体調不良を感じたら即座に中止する事」


「「はーい」」


 その後、メローナの指導の下、全属性の試射が行われた。射、と言っても飛ばしたりせず、あくまで手元で弄ぶだけだが。



「わぁ!」


 開始直後、オフィーリアから歓声が上がった。

 火属性が適性で、早速発動に成功したのだ。


「おぉ、早速ね。まあ、火属性が一番数が多いらしいし、そういうもんかぁ……」


「やったぁ!」


 属性適性以前に魔術の才能があるかどうかだったオフィーリアは、すぐに発動に成功して喜々としていた。


 対するアルティーノは……。


「ごほっ、ごほっ……」


「うーん、光でも無いかぁ……てことは、闇か他の二つか、かな」


 光球(ライトボール)の発動にチャレンジし、咳が出て中断。

 残るは、闇のみ。


「そういえば、なんで植物と空間の魔術は載ってないんですか?」


「あー、そもそも植物と闇と空間は、珍しさで言うとそんなに大きな差は無いからね。その中でも闇は強い魔術師が多かったから載ってるけど、植物と空間は、前者は強い魔術師が居なかったから、後者は珍しさと難易度から、って感じかなぁ……」


「なるほど」


「もっと詳しく知りたいなら、帝国に行った時に魔術学校でも通った方が良いかもね」


「考えておきます」


 ちなみに、その後の闇魔術のチャレンジも失敗した。


 火球(ファイアーボール)を生成出来てご満悦の様子のオフィーリアと、七つの属性のどれでも無くて落ち込んでいるアルティーノ。

 メローナは、オフィーリアに火事を起こしたりしない様に注意したり、落ち込んでいるアルティーノを慰めたりと、忙しない様子だった。

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