16.再びロルドへ
準備を終えたクルレディアとオフィーリアは、再びギーアロス達の元に戻って来た。
「村の奴らに何も言ってねえけど、いいのかな……」
「それで説明を求められても面倒だ。捨て置け」
誰にも話さず村を出る事に抵抗がある様子のクルレディアに、ギーアロスは冷たい一言を浴びせた。
唖然とするクルレディアとオフィーリア。
「ま、まあ、なんだかんだ言って良い人ではあるから……」
そんな二人に、アルティーノはフォローを入れておく。
口も態度も悪い男ではあるが、一応懐に入れた相手には優しくしている……筈だ。多分。
「それじゃ、お前ら全員に俺の異能を掛けるから、それでロルドまで行くぞ」
「ろ、ロルド、って何処だ?」
「俺はお前らの質問には面倒だから答えん。何か訊きたいならアルティーノに訊け。アルティーノの知らねえ事は自分で調べろ」
実にギーアロスらしい回答に、アルティーノは苦笑いした。
その後、ギーアロスがそれぞれの頭に順々に手を置いていく。恐らく、異能の使用に接触が必要なのだろう。
「な、なあ、ロルドって何処だ?」
その間に、クルレディアは訊きたかった事をアルティーノに尋ねた。
「ここからの最寄り町です。帝国にも近いらしいですよ」
「そ、そうか……」
子供が自分の知らない知識を持っている事に、なんだか情けなくなるクルレディアであった。
ギーアロスが全員に異能を掛け終えると、ギーアロスとアルティーノはさも当然の様に木柵を飛び越えた。
「……は?」「……え?」
同時に口をあんぐりと開けて絶句する、クルレディアとオフィーリア。
「何してんだ?さっさと来い」
アルティーノはその様子を見ながら、自分も最初こんな感じだったなぁ……と感慨に打たれた。
数時間後。
一行は、ギーアロスの異能によって常人では有り得ないスピードで、ロルドの町に辿り着いた。
「ほれ、さっさと行くぞ。お前らの身分証も作らなきゃいかん」
「あ、ああ……」
驚きで頷く事しか出来ないクルレディア。
オフィーリアの方は、もう絶句する事しか出来なかった。
ギーアロスはそんな二人を放置して、スタスタと歩いていく。
「な、なぁ、さっきのアレは何なんだ……?」
クルレディアは何とか歩き出しながらも、先程の現象についてアルティーノに訊かない訳にはいかなかった。
「ギーアロスさんの異能らしいですよ」
「そ、そうか……」
異能は不思議。
クルレディアは、一先ずそう思う事にしておいた。
身分証の発行代金は、ギーアロスが肩代わりしてくれた。
「お前らが稼いだら返せよ」という、ありがたいお言葉付きで。
「アルティーノ。お前、こっからアジトまでの道分かるよな?」
「ええ、まあ」
「なら、後はお前が案内しろ。俺は忙しいんだ」
「分かりました」
ギーアロスは残りを全てアルティーノに押し付けると、足早に去って行った。
案内を変わったアルティーノは、二人を連れてロルドの町を歩く。
「ねえねえ、あの建物は何?」
「あれは……アクセサリーショップかな?」
「アクセサリー!?見てみたい!」
「また後でね」
オフィーリアは初めて来る町に興奮している様子だが、クルレディアはひたすら圧巻されるのみだった。
「すげえな、こりゃ……」
人の数、建物の高さ、熱気。
その全てが村では感じられない物で、クルレディアは驚いていた。
とはいえ、子供二人組はスタスタと歩いて行くので、呑気に止まって圧巻されている場合では無い。
クルレディアは感嘆の息を漏らしながら、二人の後を追った。
「ここです」
裏路地の奥、異能持ち保護会の拠点に、三人は辿り着いた。
アルティーノはギーアロスから受け取った鍵を使い、拠点の扉を開ける。
「あ……」
ここに来て、アルティーノはある事に気が付いた。
三番の部屋の中には、メローナが居る。
そして、自分の後ろには、クルレディアが居る。
「どうしたの?」
突然アルティーノが止まった事で、オフィーリアは心配して問い掛ける。
「ああ……えと、その……おじさん、大変申し訳無いんですが、この部屋に入っていてもらえますか……?」
アルティーノがそう言って叩いたのは、一番目の部屋の扉、つまり男用の寝室の扉だ。
「あ?別に良いが……坊主達は?」
「僕達はそこの部屋に入るので……」
「なんで俺だけ別なんだ……まぁいいが。ここに数日泊まるんだったよな?」
「ええ。中に布団とかはあると思います」
「そうか。なら部屋の中を色々見ておくとしよう」
「そうして頂けると助かります」
クルレディアが納得してくれた事に安堵しつつ、アルティーノはオフィーリアを連れて三番目の部屋の扉を開ける。
クルレディアだけは一番目の部屋に入って行った。
やはりというか、三番目の部屋の中では、桃髪の女性――メローナが本を読んでいた。
「あら?もう戻ってきたの?」
「もう、って言っても今夕方ですけどね……」
「そう?窓が無いと時間感覚が狂うわね」
メローナはそう言って本をバタンと閉じ、視線をアルティーノの背後のオフィーリアに向けた。
「で、そっちの子が、例の?」
「はい」
アルティーノが頷くと、メローナは扉の側まで移動して来る。
「私はメローナよ。短い間だと思うけど、よろしくね」
「え、えと、オフィーリアです。よろしくお願いします」
フランクに握手を求めるメローナに少し緊張しつつ、オフィーリアは挨拶を返して、メローナの手をしっかりと握った。
「あれ、ていうかもしかして、この子が来たって事は……?」
「大丈夫ですよ、男性用の寝室の方で待ってもらってるので」
「ああ、ありがとう、悪いわね」
「いえ」
オフィーリアの父親――クルレディアがこの場に来る事を心配していたメローナに、アルティーノは男用寝室に押し込んできた事を説明した。
メローナは心底安堵した様子で、椅子に座り直す。
「とはいえ、申し訳無いわね……いっそこの機会に話す練習でもしてみようかしら」
「無理はしない方が……」
「分かってるわよ」
オフィーリアはどういう事か分からないのか、キョトンとした顔をしている。
メローナはそんなオフィーリアを蚊帳の外にするのを申し訳無く思ったのか、会話を切り上げた。
「ねぇねぇ、リアちゃんって呼んでいい?」
「は、はい、大丈夫です」
「リアちゃんはアル君のどんなところが好きなの?それと、どっちから告白したの?」
「え、えと――」
メローナの無遠慮な質問に、顔を赤くしてたじろぐオフィーリア。
アルティーノも居心地が悪くなってしまい、更に顔を赤くする。
その後しばらく、メローナによる質問責めが行われた。
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