閑話1.相談
「ちくしょう……なんで急にこんな話に……」
ギーアロスから距離を取り、クルレディアはブツブツ呟いた。
家で寝ていただけの筈なのに、何故こんな事に……。
(帝国とか……そもそも、俺はほとんどこの村から出た事ねえっつうのに、なんでだよ……)
クルレディアの胸中では次から次へと文句が出てくるが、それだけを考えている場合では無い。
与えられた十分の時間以内に、どうするかを決めなければ……。
「リアは、どう思う?」
取り敢えず、他の人の意見を聞く。
自分一人ではそう簡単に決められない事であるのは、クルレディアもよく分かっていたので、傍らに立っていたオフィーリアの意見を訊こうとしたのだが……。
「え?普通に良いんじゃないの?」
「あ、ああ……そうか……」
オフィーリアは悩む素振りも見せず、アルティーノに付いて行くつもりの様だった。
絶句するクルレディア。
オフィーリアから有益な意見が期待出来ない事を理解したクルレディアは、諦めて自分一人で考える事にした。
(帝国に行けば、坊主は国仕えの仕事が貰えて、周りの奴らから酷い扱いを受ける事は無い……。リアもそれが良いと思っている……)
アルティーノにとっては、明らかに旨い話である。
しかし、クルレディアやオフィーリアにとってはどうか。
(俺達が帝国に移住するとなると、坊主に頼る事になっちまうのか……?流石にそれは大人として申し訳ねえし、うーん……)
クルレディアが悩んでいると、傍に居たオフィーリアが叫んだ。
「父さん!なんでそんな悩むの?アルが普通に過ごせる所があるなら、それでいいじゃん!」
「いや、まあ、そうなんだが、うーん……」
クルレディアは、オフィーリアがアルティーノに求婚した事を知らない。
なので、いくら二人共幼少の頃から仲が良かったとはいえ、何故オフィーリアがほぼ無条件でアルティーノに付いて行こうとしているのか、それが分からないのである。
「リアは逆になんでそんな即決なんだ?もうちょっと悩む話じゃないか?これ」
「だって、アルが差別されずに過ごせるんでしょ?良い事じゃん!」
「それは坊主の話だろ?リアや俺達が行く必要はあるか?」
「そ、それは……」
言葉に詰まるオフィーリア。
しかし、観念した様に、オフィーリアは叫んだ。
「私、は!アルの婚約者だから!」
「は、はぁ!?ちょっと待て、いつの間にそんな話が出た!?」
その発言を聞いて、心底驚くクルレディア。
当然である。
そもそもアルティーノはまだ七歳である……貴族でもないのに、何を言っているのやら。
そんな様子のクルレディアに、オフィーリアは説明する。
「だって、アルが離れていっちゃったら嫌だから……。だから、アルが村を出る前に、その、婚約者にしてもらったの……」
頬を赤く染めて、もじもじしながら言うオフィーリア。
マジかよ……と言いたげな顔をしているクルレディア。
対照的である。
「「…………」」
しばらく二人は沈黙した。
オフィーリアは恥ずかしさ故に、クルレディアは驚き故に。
しかし、約束の時間も迫っているので、クルレディアは何とか口を開いた。
「まあ、うん……それなら、坊主に付いてくか?」
「……う、うん!」
こうして、クルレディアは酷く驚愕しつつ、帝国に行く事が決定した。
オフィーリアが小さくガッツポーズしていた事には、クルレディアは気付かなかった。
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