14.お姉さんに相談
(子供って良いわね……)
アルティーノより一足先に目が覚めたメローナは、すぐ傍で眠るアルティーノの寝顔を見ながら心の中で呟いた。
(純粋だし可愛いし、襲ってこないし……。アル君には、この純粋なまま大人になって欲しいわね)
そう思いながら、アルティーノの頬を突っつく。
「ん……」
すると、アルティーノは声を漏らしながら薄っすらと目を開けた。
「あら、起こしちゃったかしら?ごめんなさいね」
「んぅ……大丈夫、です……」
そう言うアルティーノはまだ眠そうだ。
(か、可愛い……)
寝惚け眼をこするアルティーノにズキュンとしつつ、メローナは体を起こした。
アルティーノも欠伸をしながら体を起こす。
「眠そうなとこ悪いんだけど、お腹減ったからご飯出せる?」
「ふぁ~……分かりました」
二人でリビングに移動し、アルティーノが出した食事を食べる。
これまた和食の定番朝食メニューだ。アルティーノの浅い知識では、これ以外のレパートリーが無いのかもしれない……。
「そういえば、ギーアロスさんが居ませんね」
「あー、まあその内帰ってくるでしょ。一日中居ない事だってあったし、気にしてもしょうがないわよ」
「そ、そうですか……」
どうやら、ギーアロスは別にこの拠点にずっと居る訳では無いらしい。
まあ、帝国の軍人ならば色々仕事もあるのかもしれないが……。
ともかく、アルティーノは気にせず食べ進める事にした。
「でも、やる事が無いと暇よねー」
「……そうですね……」
「アル君の魔術適性が雷だったら教えてあげられるけど、適性が分からないしね……」
「……そうですね……」
「アル君、何か悩んでる?」
「……え?なんて言いました?」
食事を摂る手も止め、アルティーノは上の空になっていた。
メローナの返答にも曖昧な返事をするばかりだ。
「何か悩んでるならハッキリ言っちゃった方が良いわよ」
「……えっと。これからどうしようかなって悩んでて。昨日ギーアロスさんに、帝国に来るかどうかを訊かれたんですよ」
「……え?いつの間に?」
「昨日のご飯食べてる時です」
どうやらメローナは食事に夢中だったあまり、アルティーノ達の会話を聞いていなかったらしい。
「あー。それでどうしようか、って訳ね……」
「ちなみに、帝国に行かなかった場合の話を聞いてないんですけど……その場合どうなるんです?」
「その場合は、私やフルスみたいな感じね。保護会に入ってこの町で暮らしてもいいし、もしくは町から出て一人で暮らしてもいい……でもどっちにしろ、ここの鍵は貰えると思うわよ。異能持ちは助け合わなきゃ生きていけないから」
「なるほど……」
仮にギーアロスの誘いを断っても、保護会に入る事は出来る。
保護会に入れば、いざという時に助けてもらえる。
「で、なんで帝国に行こうかどうか悩んでるの?非戦闘系だから?」
メローナは話を戻した。
「えーと、まあそれもあるっちゃあるんですけど……その、村に……大事な人が居て、その人を置いて帝国に行くのはなぁ、と」
「あー、婚約者?」
「――ッ!?ごほっ、ごほっ……」
揶揄い半分で訊いたメローナだったが、アルティーノが分かりやすく動揺したので、驚いてしまった。
「え、本当だったの!?その歳で!?もしかして、元は貴族だったりする?」
そして、邪推を始めるメローナ。
「い、いや、貴族じゃないですけど……」
「ふ~ん?まあいいわ。その婚約者ちゃんとは一緒に居ないのね?」
「えと、リア――相手の母親が亡くなったので、父親と一緒に村に……」
「なるほどねぇ。帝国に行くとしたら、その二人を一緒に連れて行きたいと」
「まあ、そういう事です」
話の流れを理解したメローナは、味噌汁を啜りながら頷いた。
「そうねぇ……。アル君の事だから私は助言しか出来ないけど……アル君のやりたい事が、帝国と王国、どっちの方がやりやすいかを考えてみると良いかもね。その婚約者ちゃんを守りたいだったり、一緒に暮らしたいだったり、もしくは何か、他の事をしてみたいとか……」
「やりたい事……なるほど、少し考えてみます」
「うん。それがいいわよー」
アルティーノが顎に手を当てて考え始めたので、メローナは会話を切り上げて食事に集中する事にした。
対するアルティーノは、自身のやりたい事について考えていた。
(やりたい事……リアと一緒に暮らしたいのもそうだけど、やりたい事って言ったら、やっぱり……)
異世界の知識を得た時に感じた、あの気持ち。
平等で平和な世界を作りたい。
アルティーノの一番の夢は、今も変わらずそれだ。
(帝国って、王国を滅ぼす為に異能持ちを集めてるって言ってたよね、確か……それじゃあ結局平和じゃないし、負けた側の方の人は差別されるんじゃないかな……)
戦勝国の民は、負けた方の国の民を下に見る傾向がある、気がする。
それに、戦争なんて物は、平和では無い。
(でも、このまま王国に残ってたとして……貴族ですらない僕に、そんな壮大な夢を叶える事が出来るのかな……?)
帝国に行けば、それなりの地位を用意される。そこから成り上がっていく事だって、熱意があれば出来るかもしれない。
王国であれば、ただの平民の子供だ。しかも、お金の無い。そんな子供が、国どころか大陸中の常識・認識を変える事なんて、果たして出来るのだろうか?
(だとしても、リアは大事だ。夢も大事だけど、リアも同じくらい大事……。帝国に、リアとクルレディアおじさんは連れて行けないのかな?)
しばし悩んだ結果、アルティーノは、オフィーリア達を帝国に連れて行く事が出来るのなら帝国に行こう、と決めた。
もしそれが叶わなければ、王国内で方法を模索する。
そうする事にした。
結局のところ、ギーアロスに詳しく条件を訊いてみるしか無いのだ。
「……よし」
今後の方針を決めたアルティーノは、顔を上げて食事に手を戻した。
(……あれ?)
食事を食べながら、アルティーノは何かがおかしい事に気が付いた。
そう、対面に座っているメローナが、さっきまで食事をしていた筈なのに、本を手にしていたからだ。
「どうかした?」
アルティーノの視線に気付いたのか、メローナは本から顔を上げてアルティーノの方を見た。
「え、あれ?ご飯食べてませんでした?」
「食べてたわよ。でも、アル君が考えてる間に食べ終わったわ」
「え……僕、そんな長い間考えてました?」
「ええ」
アルティーノは、自分が思っていたよりも長い間黙考していたらしい。
もう少し、周りに注意を払いながら考える様にした方が良さそうだ。
言われてみれば、味噌汁が冷めかけている。
折角の食事を美味しくない物にしない為に、アルティーノは急いで食事を再開した。
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