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12.皆で食事

 アルティーノが眠ってしばらくした後。


 メローナはアルティーノに膝枕をしたまま、読書に興じていた。

 そして、その部屋に白髪の男が入ってくる。


「あら、フルス、今日は早いのね?」


「早くないぞ。君の時間感覚がおかしいだけだ」


 男の名前はフルス。

 異能持ち保護会の会員の一人である。

 そして、この拠点に寝泊まりするギーアロスとメローナを除けば、唯一毎日拠点に顔を出す会員だ。


 フルスは持ってきた袋から料理を取り出して、机の上に広げていく。


「あれ?今日はがっつかないんだね……ん、その子誰だい?」


 フルスは今更アルティーノの存在に気付いた様だ。

 料理を置き終わってメローナに向き直り、訝し気に質問した。


「新しい会員候補よ」


「ああ、なるほど……同胞か」


 納得したフルスは、数時間前までアルティーノが座っていた椅子に腰掛けた。


「そういえば、昨日ギーが出掛けていたね。その子を迎えに行った訳か」


「ええ」


 メローナは受け答えをしながら、本を閉じて傍らに置いた。

 そしてアルティーノを撫でようとすると――アルティーノが声を漏らした。


「ん……」


「あら、起こしてしまったかしら?」


 アルティーノは声を漏らしながら、ゆっくりと目を開けた。

 メローナはそんなアルティーノの顔を覗き込む。


「わ、わぁぁぁぁ!?」


 アルティーノは一瞬で眠気が吹き飛び、メローナの上からコロコロ転がっていき、壁に頭を打った。


「いっ、たた……」


「あれ?どうしたの?」


「いや……今のは、メローナが悪いと思うよ……」


 何が起きたか分からないメローナ。

 首を傾げるメローナに対して、フルスは呆れていた。


 誰しも、寝起きに美女の顔が間近にあれば、驚いて声を上げる事だろう。アルティーノの反応は至極当然の物である。


「坊や、こっちにおいで。治してあげよう」


「え……そんな酷くないですけど?」


 フルスの存在に驚きつつも、そこまで痛みは無いのですぐに立ち上がるアルティーノ。


「いや、頭っていうのは、思った程痛くなくても実は酷い可能性がある。ちゃんと治した方が良いんだ」


 フルスはそう言って椅子から立ち上がると、アルティーノに近付く。

 そして、アルティーノの患部に手を当てた。


「……?」


 すると、フルスの手が光り、アルティーノの患部に温かみが生まれた。


「あ……気持ち良い」


「そうだろう?よし、これで大丈夫な筈だ」


 フルスが手を離すと光は消え、患部の温かみも消滅した。


「さて。そういえば、まだ自己紹介をしてなかったね。私はフルスだ。君は?」


「アルティーノです」


「ふむ、じゃあアル君だね。アル君もご飯を食べていくかい?メローナに少し我慢してもらえば君の分もあると思――」


 ガチャリ。

 フルスの発言の途中でドアが開き。ギーアロスが入ってきた。


「おう、フルス、来てたのか。飯はあるか?」


「やあギー。悪いけど、君の分までは無いねぇ……多分メローナが全部食べちゃうから」


「ちょっと!私が大食いみたいな言い方やめてよね!」


「おめぇは大食いだろうがよ」


「あー!本当に言ったー!アルくーん!二人がいじめてくるー!」


 ギーアロスに大食い呼ばわりされたメローナは、半泣きになりながらアルティーノに抱き着いた。


「え、あ、あの……?」


 突然抱き着かれたアルティーノは困惑するばかりである。


「アル君から何か言ってやって!」


「え、えーと……女性にそんなデリカシーの無い事を言うのは、ちょっと良くないと思いますけど……?」


「そうだよね!ほーら、子供のアル君でも出来る事が出来ないのかなぁ?」


「俺は事実を述べただけだぞ」


「まあ、実際毎日持ってきた物は全部食べちゃうからねえ……」


「酷い……傷付いた……」


「まあまあ、ご飯食べる?」


「食べるー!」


 あっという間に椅子に飛びつき、食事を食べ始めるメローナ。

 「傷付いた」とは一体……。


「まあ、この感じなら大食い女が全部食うか。おい、アルティーノ。お前、あの飯出すヤツは使えるか?」


「使えますけど?」


「よし、じゃあ出してくれ。ついでに机と椅子も頼む」


「分かりました」


 メローナが食べている食事がある机の横に、もう一つ机を召喚し、自分の分の椅子とギーアロスの分の椅子を召喚する。


 自然な流れで、アルティーノはメローナの隣に座る事になった。対面にはギーアロスが。


 なんとなく寿司が食べたい気分だったアルティーノは、自分とギーアロスの座る机の上に寿司を並べていく。


「なんだこりゃ?生魚?」


「寿司という料理ですよ。生ですけど、新鮮なので食べられます」


「スープがアツアツだったのと同じ原理か……なるほど。頂くぜ」


 ギーアロスが寿司に手を付け始めたので、アルティーノも素手で手に取り、醤油皿に浸けて食べる。

 醤油と魚の組み合わせは最高である。


「おや?見た事無い調味料だね。味見させて貰ってもいいかい?」


「ええ、どうぞ」


 フルスは醤油に興味を持った様で、醤油皿の一つを手に取ると、傾けて少し啜った。


「うーん、しょっぱいね……でも、結構色んな料理に使えそうだね。これ、君が作ったのかい?それとも

、君の故郷の調味料とか?」


「あー、まあ僕が作った、の方が正しいですかね」


「ふむ。後で一瓶貰ってもいいかい?使ってみたい」


「いいですよ」


 そんな風な会話をしながら、各々食事をした。

 フルスだけは何も食べなかったが。


 メローナはバクバク食べていたので会話に加わらなかったが、ギーアロスとアルティーノ、フルスはそれなりに会話をしながら食事をした。


「保護会ってこれだけしか居ないんですか?」


「いや?そんな事は無いよ。ただ、毎日居るメンバーはこれだけだね」


「後の奴らはたまに来るぐらいだな。基本的に、大体の異能持ちは帝国に流れて行くからな」


「なるほど……帝国に行くと好待遇、って言ってましたね。具体的にはどんな感じなんですか?」


「戦闘向きの異能だったら、最初っからある程度の階級で軍人として迎え入れてくれる。そうじゃなければ、普通の文官ぐらいで雇ってもらえる」


「ああ、だからギーアロスさんは軍人なんですね」


「そういう事だ。俺としては、このフルスも軍に入れてえんだけどな」


「いやあ、私はいいかな」


「なんでなんですか?」


「私は妻が居るからね。子供も作ろうと思っているし、離れる訳にはいかないよ」


「妻……」


「そうさ。私が異能持ちである事を知っても受け入れてくれた、心優しい妻さ。いつか君にも紹介しよう」


「チッ、惚気やがって……」


「まあまあ。アル君はどうするんだい?帝国に行くのかい?」


「おう、そうだな。それが気になってたとこだ。どうすんだ?」


「僕は……」


 突然今後の事を考えさせられ、食事の手が止まるアルティーノ。


(村にはリアが居るし、帝国に行ったら簡単に会えなくなるよね……一緒に連れて行けるなら連れて行きたいけど、でもリアは大人になるまでは村に残るって言ってたし……)


 アルティーノが熟考しているのを見かねてか、フルスが助け舟を出す。


「まあまあ、そんなすぐに決めなくても良いんじゃないかな?ゆっくり決めていけばいいよ」


「そうかぁ?早い事は良い事だぜ」


「ギーは直感で物事を決め過ぎなんだよ。人には考える時間も必要さ」


「まあ、いいが……」


「なんか、すみません……でも、少し考える時間を下さい」


「謝る事は無いんだ。少しこの町を見て回ってからだって、悪い事は何も無い」


「ま、そういう事なら数日は待ってやる。俺は食い終わったから、ちょっと外に出てくる」


「ああ、いってらっしゃい」


 いつの間にか寿司を食べ終わっていたギーアロスは、部屋から出て行ってしまった。


 アルティーノも慌てて寿司を食べていく。会話に夢中で、ほとんど手が付いていなかったのだ。


「ギーはああ言ってたけどね。本当は君が考えたいだけ時間をくれる筈だよ。なんだかんだ言って、仲間には優しいからね、彼」


「はぁ……まあ、ゆっくり考える事にします」


「それがいいさ」


 アルティーノ達は会話を切り上げ、一先ず食事を楽しんだ。

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