第6話 side金山恭子
おまけの6話となります。
恭子視点のお話になります。
Side:金山恭子
世界会議を開くことを決めて3週間。あっという間にことが運んだ。それもそうで私達の国だけが勇者特権のことを知らないでいて、勇者から早く勇者特権を剥奪したい各国はすぐにでもという気で準備していたみたい。
私は日に日に近づいていく世界会議に向けて気が気でいられなくなった。
「どうしよう!光流君と会える!ねえ宰相!どんなドレスで行ったらいいかな?」
「女王様、最近キャラが変わってきたような気がするんですけど、気のせいですか?」
「あ、いや、違うのよ?勝手に浮足立ってるだけなわけじゃないですからね」
「本当は聞きたかったんです。どうしてそこまであの少年に気をかけるのですか?私は正直賢者様だって思ってもみなかった少年です。何があったか教えていただけますか?」
もう、私は胸がいっぱいだった。ここまで吐き出すことなく政権争いに集中していたから。それが終わり、もうあとは光流君に会うだけ。だから私はここまでのいきさつを宰相に話してしまった。
光流君との出会いから別れまでの日々を赤裸々に語った。そして別れてから思っていた想いを宰相にぶつけてしまった……。宰相、引いてないよね?
「じょ、女王様~!そんな、そんなことだったら言ってくださいよ~!女王様は今でも孤独と戦ってたってことじゃないですか~!我々は女王様の味方ですよ!どんな判断をなさっても我々はついていきますから!」
まさかの宰相、号泣。こっちが引いちゃった……。でも宰相の言ってた孤独、確かにそうだった。でもここで話したことで孤独ではなくなったことに気づいた。
そっか……、私が壁を勝手に作ってたんだって。もっと素直になって私からも歩み寄っていれば味方は増えていたんだ……。あの頃からずっと孤独を感じ続けていた悲しさが一瞬でなくなった。それも秒で。
宰相のバカ、言わないでって言ったのに、お城で働くみんなに広めてしまったの。そしたら私に同情してくれる人が沢山いてみんなが味方になってくれたの!
本当に私ってつくづくバカだったんだなって思った。もっと早く気づけばよかった……。でも気づかせてくれたのは誰でもない、光流君。それだけは変わらない。
そういうことで私が光流君を振ってしまったことはお城のみんなの内緒ってことであくまで噂話で真実ではないということを広めてくれた。そしてみんなが世界会議で光流君とやり直しをさせよう作戦を考えてくれた。嬉しかった。
でも私は振った側。やり直してくれるかどうかは彼次第。だから彼に身を委ねる。そう決めていたのに……。
私は世界会議で光流君を見るなり我慢して溜まりに溜まっていた心のダムが決壊した。みんなが考えてくれた作戦は全てパー。いきなり光流君に抱きついて号泣してしまった。
それでも私の想いを聞いてくれていたみんなは作戦抜きで泣いてくれた。光流君は政略的な意味で喜んで泣いていたと思ってたみたいだけど全然違うからね!
多分私がいきなり抱きついてしまったせいで場が荒れてるのは肌で感じていた。それが恥ずかしかったのと光流君の胸の中にいることの嬉しさでどうしたらいいか分からなくなっていた。多分私の胸の鼓動が最大値になっていたのは気づいていないはず。
なんだろう、この今までになかった安心感とドキドキ感は。すごい心地が良かった。この時間が永遠に続けばいいのにって思ってた矢先に光流君が場を仕切り出した。もう、光流君の意地悪!
「さあ、おふざけはここまでとしてやることやってしまいましょう。まずは勇者特権の廃止!異議はなしでいいですね?」
勇者特権……。こいつのせいで光流君に会えなかった。速攻で廃止!絶対廃止!私は分かってもらうために全力で首を縦に振りまくった。
「異議なし!」
各国の王達が声が聞こえた。光流君の胸に身を預けながら大泣きしているけど、ちゃんと聞いてるよ。一言一句、絶対に聞き逃さない!
「では次に僕の処遇ですね。僕は基本ご主人である勇者様に仕えている身ですので、どこの国にも属するつもりはありませんが、異議はなしでいいですか?」
「異議あり~!」
そんなの絶対許さない!速攻でブロック!
「い、異議ありだ!」
「わ、私もだ!」
他の国の王達も賛成してくれた。光流君の処遇は絶対に譲らない!もう私は光流君の気持ちを優先する気なんて失せていた。あの時は本当にどうかしていたのよ。ごめんね。
「光流君は私のです!絶対に渡しません!譲らないなら戦争します!」
どんなに後れをとっていても絶対勝ってやる。なんなら勇者を買収してやる!くらいのことは考えていた。本当にごめんなさい!
「ふう、じゃあ俺からお前に言ってやろう。お前以外の全員な、この女王様がお前のこと大好きだって知ってるんだよ」
「はあ!?何言ってるんですか!僕は彼女にふ——」
「言っちゃだめえ!それはうちの国では嘘ってことになってるんだから~!」
「女王様よ、それ言ったら振りましたって言ったようなもんだぜ?いいのか?」
「はっ!」
ぐぬぬ……。勇者め!なんて狡猾なのかしら!ていうか私の光流君への想い、みんなに知られてたのね……。恥ずかしい!
「お前な、この世界はいくら情報を得られるかにかかってるんだよ。だからお前が女王様と召喚されたことも、奴隷に堕ちたことも、俺と魔王退治に行ってたことも全部みんなすでに知ってるんだよ。お前だけ知らないの。賢者じゃねえの?」
ひどいことを言う勇者。私の光流君に何てこと言うの!ちらっと光流君の顔を見た。まともに顔を見たのはあの時、覚悟を決めた顔以来。何かを悟ったのか、あの時と同じ覚悟を決めた表情をしていた。カッコいい……。
「ああ、そういうことですね。分かりました。じゃあご主人。僕の願い2つ叶えてくれますか?」
「ああ、もちろん。諸国の王達よ。私は先の魔王との戦いで賢者と約束事をした。それは魔王討伐が実現した暁には、私がどんなことでも3つの願いを叶えようという内容だ。だからこの3つの願いだけは勇者特権以上の特権だ。異論はないな?」
こればかりは反論しても覆らないと思うし、あの覚悟を決めた光流君の顔。絶対に信じようって私も決めたから黙って頷いておくことにした。
「1つはすでに叶えてある。だから残り2つだ。さあ賢者よ、言うがよい」
「では、まず僕はストレニス王国に属することにします」
やったーーーーー!
「おう、分かった!それで残りの1つは?」
「ストレニス王国が復興した後、僕と女王様は元のいた世界に戻ります」
嘘……、元の世界に戻れるの!?そんなこともできるようになってるの光流君は。
「おう、分かった!じゃあこれで解散!」
私の感情はこの世界会議で揺さぶられすぎた。歓喜、歓喜、歓喜!
「私、光流君とあんな別れ方をしたことで気づいたの。光流君のことが好きだってことに。でも私……。ぐすっ。自分のことしか……、ぐすっ、考えてなかった……。本当にごめんなさい!」
世界会議は勇者の号令で即解散となった。私は気持ちを抑えきれず、光流君と二人きりの時間を作ってもらって想いの丈をぶつけてしまった。今振り返れば本当に自分勝手。完全に光流君の意志を無視している。でも抑えられなかった。
この約3年間、ずっと想ってきた。無事を祈っていた。自分が壊れないために数%の可能性に縋りついた。みっともないことは分かっている。そして生き地獄を息抜き、魔王という脅威と戦い続けた光流君の方が私なんかよりずっと苦労をしているって分かっているのに。ここでも私は自分のことしか見ていない愚かな女だった。
「まあ、金山も金山で苦労したんでしょ?だって国一つ獲ろうなんてことやってのけたんだから。すごいことだよ。でもそこまで溜め込んでたなんて思ってもいなかった。もっと余裕があると思ってたよ。昔の僕なら受け止められなかったと思う。でも今は違うよ。ちゃんと金山のこと受け止められる。だから覚悟を決めてストレニス王国に属することにしたんだ」
光流君はあの時と同じだった。どこまでも優しくて私と向き合ってくれた。そこで私の何かが壊れたのが分かった。そこから私のキャラは完全に崩壊した。
「ねえ、光流君!一緒にご飯食べに行こうよ!ダメかな?」
「み、光流君、きょ、今日はい、一緒に寝てもいいかな?なあんてね!てへ!」
「ちょ、ちょっと!そんな恥ずかしなるようなこと言わないでよ!光流君のバカ」
自分でも分かっている。なんかすごいあざとい系女子になっていることに。でももう光流君への愛が止まらなかった。少しでも一緒に、そしてカワイくいようって決めたから。
それに光流君も満更でもないって感じで嬉しそうにしていたからよし!こんな自分勝手で我儘な女なんてって思う時もある。でもそんな私を受け止めてくれる。そんなの、甘えてしまうしかないじゃない!
多分、これまで抑えてきた反動が来たんだと思う。私はどこまでも自分勝手で我儘に光流君を振り回してしまっていた。
いつのまにか、私は光流君抜きでは生きられない人間になっていた。
「あなたが私にふさわしいかどうか、私を認めさせてみて」
なんて言っていた自分が愚かだ。
「どこまでも自分勝手でごめんなさい。好きです!大好きです!私ともう一度付き合ってください!お願いします!」
こちらの世界での四度目の誕生日は光流君と一緒に過ごすができた。人生で初めてかもしれない。こんなに祝福されて嬉しかったのは。その勢いで告白してしまった。
「まあ、恭子の我儘は今に始まったことじゃないからね。気づいてないかもしれないけど、元の世界にいた時から無理難題押し付けられていたからね。それが恭子なんだよ。でも今の方がいいと思うよ。愛嬌があるからさ。これからもよろしくね」
「どうして、どうしてこんな私と付き合おうとしてくれるの?」
「簡単だよ。惚れた弱みってやつだよ。この世で最強の武器だよ」
そうやって女王であることを忘れるくらい濃密な2年間を過ごすことができた。光流君も最初は奴隷として生きてきたからか結構暗かった。でも最近は
「まあ俺と恭子の苦労は天と地ほど違うけどね!」
なんてことを明るく言えるくらいには元気になったと思う。私も好き勝手やらせてもらってる。だから光流君の言うことはちゃんと受け止めようと思っている。
そしてもう十分にストレニス王国が復興したと思える日がやってきた。それはこの世界とのお別れを意味する。
私の人生は大きく変わった。変えてくれたのは他でもない光流君。そんな彼と高校2年生の私が振った直後からやり直せる。今度は私から壁をぶち破って今のキャラ全開でやっていくつもり。多分引かれると思う。でも私は私らしく生きるって決めたから全力でみんなを振り回していく。
「じゃあ、帰ります!皆さんお元気で!」
そう言って時空間魔法を唱えて私達はあの世界から元の世界に戻ってきた。しかもあの振った直後からの再スタート。だから私はもう一度宣言する。
「あの時振っちゃってごめんなさい。大好きです!それでこれからもよろしくね!てへ!」
光流君の顔は今までで一番優しい笑みだった。これからも絶対一緒にいる。私と光流君の旅はこれから再び始まる。
お読みいただきありがとうございました。
全体を通して見ると、後半は崩れたように感じるかもしれませんが、恭子のキャラ崩壊は初めから決めていたことなのでお許しください。
感想は作る際の参考になりますので、いただけると幸いです。




