第3話
第3話です。
光流視点のお話になります。
すごい人だかりだ。今日は女王様の宣誓式がある。そしてそのあとにこの王都であるフラッツで凱旋パレードがある。パレードで彼女の顔を見たら旅立つ予定だ。
「それにしてもお前の初めての願いがパレードを見たいだなんてな。こんなところで願いを使ったらもったいないぞ?」
僕の隣で文句を言うのは僕の主人であるフェルナンデス。彼の言うことを聞いて彼の願いが実現すれば願いを3つ叶えてくれるという。だから必死で僕は彼の言うことを聞いて彼の願いを実現させる手伝いをした。というのに願いを使えば文句を言う始末。質が悪い。
「俺はこんな人ごみは嫌いなんだよ。女王様とやらの顔が見れたらすぐに次の場所に向かうぞ?」
※
宣誓式はあっという間に終わったらしい。そしてパレードも一瞬で終わった。僕の目の前を女王様が通り過ぎていった。それだけ。でも彼女の顔はあの時と変わらない、いやそれ以上に輝いていた。
「お前が言うだけあって女王様は中々に美人だったな。元カレのミ・ツ・ル君!」
一瞬だけ彼女と目が合った気がしたけど、ぱっと通り過ぎていったからよく分からない。少しだけ感傷に浸っていたいというのにこのご主人は……。
「本当に隷属していることをいいことに好き勝手言うんだから……。それは絶対言わない約束でしたよ?」
「何言ってんだ?もうとっくの昔に隷属は解いただろう?お前が勝手についてきただけだろうがよ?」
「でもそれならそれでなぜ僕に願いを叶えさせようとするんです?勝手についていっただけですよ?」
そんなくだらない話をしながらフラッツを離れた。勇者フェルナンデスと共に。
※
僕はストレニス王国の騎士によって捕らえられ、奴隷に堕ちた。目が覚めた場所は死体置き場だった。僕が目を覚ましたことに驚いたという。そしてそのままどこかの貴族の家に飼われることになった。
毎日毎日貴族の息子のストレスの捌け口とされ、暴言は吐かれるし暴力は振るわれる。食事はまともに取らしてくれない。生かされるわけでもないし、殺されるわけでもない。本当の意味での生き地獄。そんな地獄を救ってくれたのがご主人、勇者フェルナンデスだった。
「よう賢者!やっと見つけたぞ!これでようやっと魔王を倒しに行けるぜ!」
何を言ってるんだこの人は?という状態だった。賢者?僕が?どういうことだろう?
「お前は聖女と一緒に召喚されただろ?聖女と一緒に召喚されるってことはそれだけの力を秘めているってことなんだよ。お前の力は賢者。この世のあらゆる魔法を使えることのできる最高の相棒なんだよ!」
どこでどうやって情報を得たのか分からない。ただ僕が金山と一緒に召喚されたことを知っていた。
「ちょうどいいわ。お前行かないって言いそうだからこのまま俺の奴隷として生きろ!いいな?」
フェルナンデスの指が僕の額に当てられると僕の体はいうことを聞かなくなった。これはさっきまで貴族に繋がれていた時と同じだ。そうか、さっき一瞬自由になれたのはご主人が貴族を殺したか隷属を解いたかのどっちかだったというわけだ。
そういうことで僕は勇者フェルナンデスと一緒に魔王を倒す旅に出ることになった。ご主人からするとストレニス王国で起きていることなんて些末事だと。それよりももっと裏で大きなことが起きている。
それが魔王の復活だった。ご主人は魔王の復活に気づき再び旅を始めたと言っていた。一度倒したことがあると言っていたけど、復活するのであれば厄介だ。二度と復活しないようにするためには賢者の力が必要だということを調べ上げたらしい。
そこで白羽の矢が立ったのが僕だった。僕はただ単に金山の召喚に巻き込まれただけだと思っていたけど、単純にこの世界が賢者の力を欲していた。それがちょうど聖女と一緒に現れただけだったとご主人は酒場で酔っ払った勢いで話していた。
つまり、世界が欲していたのは聖女ではなく賢者の僕だったというわけ。金山も金山で何か大変な運命を背負わされていたけど、僕も僕で使命があったんだ。そして僕が勇者の願いを叶えたら3つ願いを叶えてくれることになった。それが僕のモチベーションとなった。
魔王を倒す。そんな難しいことを任された僕は必死になって魔法を覚えながら魔王の配下達を次々と倒していった。ストレニス王国以外の国では実際に被害に遭った場所もあり、平和ボケしているアホの集まりだとストレニス王国のことを評していた。
そうだよな、普通に考えたら魔王の復活の方が大事だもんな。でもなんでストレニス王国には聖女が必要なんだろう?
「それはな、聖女にだけ奴隷を解放できる能力があるんだよ。あそこはお前を飼っていた貴族のように腐った奴らがごみのようにいる。それに抗うために喚ばれたんだよ」
どちらにせよ、この世界で本当の意味で奴隷の身分から解放されるには聖女の力が必要なんだ。隷属するしないは使役する方の自由。だから僕は旅の途中でご主人から隷属は解いてもらった。でも奴隷の身分であることには変わらない。聖女の力で解放されない限りは。
そういうことで僕が誰かに隷属されないようにするには身を潜めているしかない。それと勇者の力であれば仮に隷属されたとしても権限を使って解放させることは可能。どちらにせよご主人にはついていかないと僕の身が危険なんだ。
※
気がつけばストレニス王国の最南端、フーラの村に来ていた。この村は隷属をいいことにご主人から僕の過去を隠すことなく話せと言われ、金山に振られたことも全て話した僕にとって黒歴史誕生の場所だ。
「ここは、お前の——」
「ご主人!それは言わない約束でしたよね!?」
危ない危ない、この人は僕が困ることはニヤニヤしながらやってくるから本当に質が悪い人だ。
今僕達は魔王はすっかり倒して残党狩りをしているところなんだ。ストレニス王国は全く危害が加わることがなかったから気がついている人は少ない。だけどこの最南端を越えた先ではまだ苦しんでいる人達がいる。
奇しくも僕らが魔王を倒した日、聖女がストレニス王国を解放した。聖女はそのまま女王として君臨することとなり、先日の凱旋パレードが行われることになった。だからタイミングを合わせて立ち会えたというわけ。
それにしても僕らのいた世界でも「女神だ」なんて言われていた金山はその言葉通り、この世界でもトップとして輝くんだもんな。すごい奴だよ。それに比べて僕は……。
「おいミツル!今日は俺の酒に付き合えよ!そうじゃなかったらこの村であった話を……」
だからそれは言わないって約束だろ!?
すっかり平和ボケして毎日酔っ払いになってしまった勇者の代わりに僕が残党狩りをメインでやるハメになってしまっている。そして毎日奴隷に再びなるかもしれない恐怖と戦っているんだ。
片や女王様、片や奴隷。この差は何なんだろうね……。今の僕にあの時のような自信に満ち溢れていた自分はもういない。あるのは奴隷という身分と、平和になって残党狩りにしか使わない強大な力だけ。
そういう意味ではご主人は絶妙なポジションにいる。僕を活かすことも殺すこともできる。この関係は死ぬまで続くんだろうな、そう思っていた。
それは僕達がストレニス王国を離れて2週間が経った頃だった。僕達が魔王の配下を倒し、いつものようにご主人の酒に付き合わされようしたところにストレニス王国の役人が現れたのは。
お読みいただきありがとうございました。
次話は再び恭子視点のお話になります。




