第2話 side金山恭子
第2話です。恭子視点のお話です。
Side:金山恭子
明日は私がストレニス王国の女王として正式に宣言する宣誓式が行われる日。国民の前で宣誓をした後、凱旋パレードが待っている。
正直そんなことはどうでもいい。私はただ彼のこと——大崎光流君が無事だという数%しかない可能性に賭けてここまで来ただけだから。
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私は自分でいうのはなんだけど、この上なく恵まれた人間だということは分かっていた。小さい頃から「かわいい」、「綺麗」と言われてきた。だから自分の容姿がどうなのか客観的に見てもよく分かっていた。
それと私の家は裕福な方だったから家庭教師をつけて色んなことをやらされた。だからどんなこともハイレベルなところまで上げることができた。
その結果が「高嶺の花」、「女神様」だなんて言われ、周りから一線を引かれて上辺だけ見られる存在になっただけだった。心から分かりあえる親友はおろか、友達と呼べる人すらいない。周りから特別な目で見られるだけ。悲しかった。
そんな中で私と対等に接してくれた人が大崎光流君。どんな無理難題を言っても必死になって食らいついてくるし、私にしっかり意見までしてくれた。そんな彼に何か感じるものがあった。私のこの状況を変えてくれるんではないかと。
それで彼に告白した。でも私はこの状況を変えてくれるだけでよかったので条件をつけた。3ヵ月という期間を設けた。
「私は私と釣り合いの取れる男性と付き合いたいと思っている。この生徒会でのあなたの働きぶりに可能性を感じたの。あなたが私にふさわしいかどうか、私を認めさせてみて。期間は3ヵ月、その間に証明してみせて」
3ヵ月で変わることに期待すると共に彼に頑張ってもらいたく発破をかけた。夏休みに入っても生徒会に入っていた私達は同じ時間を自然と過ごすことになった。彼女感を出すためにデートもした。
でも何も変わらなかった。途中からそんな気はしていた。結局何も変わらないんだと虚しさを感じた。だから彼に別れを切り出そうと生徒会室に呼び出した。ちょうど別れ話を切り出した直後だった。
部屋の床が光り出し、私達は異世界転移した。
気がつけば森の中だった。私の周りには数十名のいかにもマンガとかで出てきそうな「魔法使い」という格好をしていた。隣では光流君がパニックになっていた。それはそうだ。彼からすれば私に振られたばかり。それでいていきなり訳の分からない場所にいるわけだから仕方のないことだった。だから私は冷静になれた。
「すみません、これは今どういう状況なのでしょうか?説明をいただけますか?」
「これは大変申し訳ありません聖女様。私達はストレニス王国内で活動しているレジスタンス集団『銀の翼』の者です。今私達の王国は愚王の圧政により苦しんでおります。その状況を打開すべく、古文書にあった伝説の英雄である聖女様の召喚を試みました。それで召喚されたのがあなた様なのです!」
まさか、これが私の求めていた変化なのだろうかと思った。と同時にもし光流君がこの変化をもたらしたのだとしたら私だけでよかったはず。なのに彼も巻き込まれてしまったことになる。
「私が召喚されたというのは理解できました。ではなぜ彼まで召喚されたのでしょうか?」
と光流君を指差すと周りの魔法使い達が彼に気づいたみたいでかなり動揺していた。
「うーん、聖女様だけを召喚するものだと思っておりましたが違ったのですね。でもですね、彼が——」
「見つけたぞ!やはりこいつら何か企んでやがったのか!今すぐここにいる奴らを皆殺しにしろ!」
突然鎧を着たいかにも騎士風の男達が向こうから現れ、魔法使いの一人に斬りかかった。
「うわーーーーーーーっ!」
血しぶきと共に魔法使いが倒れる。私はいきなり始まった殺人行為を見て怖気づいてしまった。
「きゃーーーーーーーっ!」
大声で叫んでしまい、取り乱した。こんなことは初めてかもしれない。
「やばい!このままでは全員殺されてしまう!聖女様をお連れして逃げろ!逃げる者以外は全力で時間を稼ぐんだ!」
一人の魔法使いが私を担いでこの場から離れようとした。だから
「待ってください!彼は置いていくのですか!?一緒に連れていってください!彼は関係ないでしょう!?」
「そんなことは言ってられません!すぐに——」
「ぐわーーーーーーっ!」
切迫した状況で話をしてしている場合ではなかった。別の魔法使いが一人斬られて倒れた。その時にふいに光流君に目がいった。彼の顔は何か覚悟を決めたようでその時の表情だけは私の頭の中にはっきりと残っている。
突然彼が私を突き飛ばした。そして振り返ると血しぶきを上げながら叫ぶ光流君がいた。
「いやーーーーーーーーーっ!」
そこで私は意識を失った。気がついた時は馬車の中だった。
「ここはどこですか!?」
「お目覚めになられましたか聖女様。なんとかストレニス王国の騎士達から逃れることができました。彼が——あの一緒に召喚された少年があなたを庇ってくれなかったら死んでいたかもしれません」
嘘……。私が光流君に感じたのはあの斬られた瞬間だったんだと悟った。もし私が一人召喚されていればあそこで死んでいた。そう、私が生き延びるという変化をもたらしたのが光流君だった。でもこんな形だなんて残酷すぎる……。
「ううっ……。そ、そん……な……、うわーーーーーーーーっ!」
初めて号泣した。こんなに感情が揺り動かされるなんてこと今までになかった。私はこの日、拠点に着くまでの間、ずっと泣き続け、彼に対してのこれまでのことを後悔した。
変化さえもたらしてくれればよかった、なんて思ってしまった自分がどれだけ愚かだったのかを深く嘆いた。彼は必死に私と付き合おうと向き合ってくれていた。そして振ったにも関わらず、私のことを命を賭してまで守ってくれた。というのに、その自分が自分のことしか考えていなかったことへの情けなさを感じた。
「彼は、光流君は無事なんでしょうか!?」
「分かりません。我々は逃げるのに必死でしたから。おそらく全員死んでいるか、死んでいないとしても奴隷として扱われることになるでしょう」
絶句した。死んでも地獄かもしれないけれども、奴隷になんてなっていたらそれこそ生き地獄。死んだ方が一瞬の地獄だけで済むかもしれないくらいに光流君の状況が最悪だということだけは分かった。
「も、もし!彼が生きていて奴隷になっていたとしたら、どうやったら救えるでしょうか!?」
「聖女様、お言葉ですが、あの少年が生きているという可能性はほぼありません。あそこにいた仲間も死を覚悟して聖女様をお守りしました。ですが、もし、もし聖女様の仰る通り、彼や仲間が生きていて奴隷になっているとしたら、それを救うことができるのはあなた様しかいないのです!」
魔法使いの話だと、私達が召喚されたのはストレニス王国から二つほど離れた別の国だったみたい。ストレニス王国で動いていればバレるかもしれないということで離れた地での召喚を行ったと。
それでも結局ストレニス王国の騎士がそれを阻止するために追いかけてきていた。だからもし光流君が生きていたとしたらストレニス王国で奴隷として生きることになる。今、ストレニス王国では王族が好き放題していて圧政を敷いているということだった。そしてその王族が先んじて奴隷にひどい扱いをしているという説明を受けた。
私のやることが決まった。ストレニス王国を救う。そして奴隷を解放するということを。
※
幸いなことにこの異世界の暦は私達の世界と同じだった。私達が召喚されてもうじき3年。私は20歳を迎える。まだ誕生日は迎えていない。その誕生日を彼と——光流君と祝いたい。
明日、私はストレニス王国で女王として宣誓する。そして王命で光流君を見つけ出す!
お読みいただきありがとうございました。
次話は光流視点のお話に戻ります。




