第1話
全6話、基本のお話は5話まで。6話はおまけです。
全体を通して見るとふざけた感じに仕上がっています。
もっと真面目なものが読みたかったと思われるかもしれません。
ご容赦ください。
「おい、明日はついに女王様の凱旋パレードだぞ!本当にあの方は素晴らしい方だよ!」
昼食にと立ち寄った食堂で男たちの話声が聞こえる。
「本当だよな!あの憎くて仕方なかった王族どもを追い払って奴隷解放まで成し遂げたんだもん、後世に名を残す英雄だよ!」
どうやら2カ月前に革命を起こして英雄と呼ばれるようになった女王様の話のようだ。ふう、もうこの話ばかりで聞き飽きてるんだけどね。
でもまさかあそこまで登り詰めるなんてやっぱり才女と言われただけあるわ。どこの世界でも才能があれば成り上がれるんだな。まあ、僕はただ遊ばれただけなんだなって改めて思うよ。
店主に料金を払って店を出る。街の中心部にあるこの食堂からはお城がよく見える。あそこから見える景色っていうのはどう見えるんだろうか。
いや、今さらあの城に向けて感情を抱いても無駄だ。そう、僕は女王様である金山恭子に振られた挙句、異世界転移して奴隷になった惨めな存在なんだから。
※
僕、大崎光流はなんてことはない、並以下の高校2年生だった。と言ってもその当時は並以下とは思っていなかった。成績も上位に入っていたし、スポーツもどの種目も無難にこなせるし、生徒会役員にまでなっていたから。自分はスクールカーストの上位にいると思っていた。
それでも上には上がいるもので、高校2年生にして3年生を押しのけカーストトップをいく女生徒がいた。それが金山恭子、僕の元カノだ。
恭子——いや、もうそんな馴れ馴れしい関係者じゃないか。金山は芸能人顔負けのルックス、スタイルを持ち、模試は1年から全国1位を取り続け、もちろん得意不得意はあったけど、スポーツは何をやらせても超一流。体育の授業では常に活躍していたのを横目で見ていた。そして2年生の5月、生徒会長に選ばれ学校の改革を推し進め、その実力は皆がぐうの音も出ないほど。もはや神格化すらされていたパーフェクトガールだ。
僕はそんな女神と呼ばれてもおかしくない彼女と付き合うことができたラッキーボーイだった。生徒会で金山の指示に従い業務を行っていただけだったというのに、そんな彼女から告白されたんだ。でも条件があった。
「私は私と釣り合いの取れる男性と付き合いたいと思っている。この生徒会でのあなたの働きぶりに可能性を感じたの。あなたが私にふさわしいかどうか、私を認めさせてみて。期間は3ヵ月、その間に証明してみせて」
今考えればどう考えたかって無理筋な話だったんだ。でも僕の生徒会での働きぶりを評価されたこと、また自分が上位の人間だと思い込んでいたのもあって完全に浮かれていた。「あの金山恭子が僕に告白したんだぞ!」って調子に乗っていた。
それからの3ヵ月間、僕は金山の要求に応え続け、夏休みも生徒会活動はあったのでその間も彼女とは同じ時間を過ごすことが多く、手ごたえを感じていた。デートも4回してその時の彼女のプライベートを知ることができたことに優越感を覚えた。
そして3ヵ月のお試し期間を経て、結果を宣告されることになった日の放課後に生徒会室に呼び出された。
「残念だけど、あなたは私を認めさせることができなかった。ということで別れましょう。まあ途中から無理かなとは思っていたんだけど」
まさか振られるとは思ってもみなかった。しかも途中から無理だと思われていたなんて。僕はショックも受けたけど、それよりも彼女の見る目が間違っていると思ったんだ。
「いや、ちょっと待ってくれ!そんなことは——」
彼女に物申そうとした時だった。突然生徒会室の床が光りだしたんだ。その光に包まれて数十秒、気がつけば見たこともない森の中にいた。
「おお!やっと成功したぞ!聖女様の召喚に成功だー!」
僕と金山は魔法陣のようなものが描かれた紋様の中にいて、数十人のローブを纏った魔法使いのような格好をしていた人たちが囲っていた。皆、「聖女様」と言いながら喜びを分かち合っていた。
僕は目の前の光景に訳が分からず、パニックになっていた。でも隣にいた金山は冷静だったみたいで
「すみません、これは今どういう状況なのでしょうか?説明をいただけますか?」
とすぐに今自分たちの置かれた状況の分析を始めた。
「これは大変申し訳ありません聖女様。私達はストレニス王国内で活動しているレジスタンス集団『銀の翼』の者です。今私達の王国は愚王の圧政により苦しんでおります。その状況を打開すべく、古文書にあった伝説の英雄である聖女様の召喚を試みました。それで召喚されたのがあなた様なのです!」
は?と思った。この時はまさか漫画や小説なんかでよくある異世界転移が行われたなんていう認識はなかった。ただ僕は目の前の光景と彼女に振られたショックで完全にパニックを起こしていた。
「私が召喚されたというのは理解できました。ではなぜ彼まで召喚されたのでしょうか?」
と金山が僕を指差したところで皆が僕に視線を向けたことで少し冷静になれた。周りの人達も「え?」みたいな顔をしていた。
「うーん、聖女様だけを召喚するものだと思っておりましたが違ったのですね。でもですね、彼が——」
「見つけたぞ!やはりこいつら何か企んでやがったのか!今すぐここにいる奴らを皆殺しにしろ!」
突然鎧姿の男達が僕の後方から現れたかと思うと剣を出して魔法使いの一人に斬りかかったんだ。
「うわーーーーーーーっ!」
血しぶきと共に魔法使いが倒れた。その血を見て一気に寒気がしたおかげで目の前の光景を受け入れることができた。
どうやら僕達は狙われている。このままではやばい!
「きゃーーーーーーーっ!」
血を見た金山が叫び、取り乱し始めた。僕はいつも冷静な彼女しか見ていなかったのでその姿に驚いた。
「やばい!このままでは全員殺されてしまう!聖女様をお連れして逃げろ!逃げる者以外は全力で時間を稼ぐんだ!」
魔法使いの中でも力のありそうな男が金山を担いで逃げ出そうとした。ところが
「待ってください!彼は置いていくのですか!?一緒に連れていってください!彼は関係ないでしょう!?」
「そんなことは言ってられません!すぐに——」
「ぐわーーーーーーっ!」
話なんてしている状況ではなかった。一人、また一人と斬り伏せられていく。魔法使いも負けじと炎や氷柱とか色んなものを放ちながら交戦が始まった。僕はこの時ものすごい冷静になれていた。多分金山が取り乱したからだと思う。
騎士の一人が金山と逃げようとする魔法使いに近づいているのが分かった。
考えている暇はない。彼女を守らないと!と体が勝手に反応した。即座に彼女を突き放して彼女の盾となるべく騎士に向かって身を差し出した。
ザシュッ!
僕の体から血しぶきが飛び散った。
「ぎゃーーーーーーーーーーっ!」
今までの感じたことのない激痛が体中を駆け巡った。多分渾身の一撃だったんだと思う。あとから普通なら死んでいたと言われたんだけど、僕はもう彼女を守ることしか考えていなかったから痛みを無視して騎士が彼女に近づかないように騎士の体を必死になって押した。でも数秒後、僕はそこからの記憶が全くない。
気がつけば僕はベッド——と言えないような汚い布の敷かれた台の上で寝かされていた。こうして僕は異世界での奴隷生活が始まった。
お読みいただきありがとうございました。
次話は恭子視点のお話になります。




