ゆるふわな感じで始まりました。
足をお運び頂き、ありがとうございます。
「リュダール…もう…嘘は吐かないでいいのよ…」
今にも雨が降りそうな空の下、私は静かに口を開いた。自分でも聞いたことのないような冷たい…いや、何の感情も篭らないような声だった。
「ティアラ…?」
目の前に座るリュダールは驚きに目を見開き、一体何の事を言われているのかと言わんばかりに不思議そうに私の名を呼んだ。
「あなたが本当に好きな…アリーシャと婚約したら?」
にこり、と音が付きそうな程に私は微笑んだ。かつてあなたが、必ず守ると言った笑顔。
私の、最後の意地だった。
「ティアラ…本気で言っているのか?」
リュダールは月の女神も平伏しそうな美貌を強張らせ、低く唸るように言葉を紡ぐ。
「本気でなければ、言わないわ。嫌いな女と結婚するより、好いたアリーシャとあなただって添い遂げたいでしょう?」
「アリーシャを女として好きだと思った覚えはない」
「まぁ!ふふふ…!あんなに密会を繰り返し続けてもまだ否定するの?」
「え……」
リュダールの顔からごそりと何かが崩れ落ちたようだ。彼の顔色は青いというよりも、白い。
私の心は限界を超えてしまった。だからもう、愛しいあなたへの想いを終わりにするのだ。
熱く苦しい…焼けた鉛のような愛を、今、ここで。
「私は、あなたと婚約解消を要求します」
きっぱりとリュダールにそう告げて、私はその場を去った。
もちろん、リュダールが追いかけて来る事はなかった。
ぽつ、ぽつ、ぽつり、と空が泣き出したと同時に、私の目からも雨が降り出した。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
合わないな、と思われた方はそっとページを閉じて下さいませ。