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安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


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世界の問題

 放たれた言葉に、すぐには、反応ができなかった。その反応こそが答えとなると、少し遅れて理解するが、どうしようもない。


 それに、否定したところで既に断言できるだけの情報を集めているのだろう。心象が悪くなるどころか、罪に問われる可能性がある。


 つまり、私も、オリバー様も、首を縦に振るしかないのだ。理解してはいても、神父様の言葉が頭をよぎり、すぐには頷けない。


 確信を持ったざわめきが、会場全体へと広がっていく。どうして。その言葉を口に出すことすらできずにいると、オリバー様が少し低い声で口を挟んだ。


「陛下、それは……」


「確かに、女神の加護については秘匿されることが多い。本人にも秘匿する権利はある。様々な問題の種ともなるからな」


 国王陛下が堂々と認められることではないが、女神の加護を持つ人間が人身売買の対象とされることはある、と聞いている。


 このような場で、平民だと知れ渡っている私が加護持ちだと言うのは、私の安全を脅かすことでもある。


 貴族であれば簡単に手出しできずとも、平民であれば失踪しても大して問題にならない。ギリギリ犯罪にならない手段も、金をちらつかせて無理矢理婚姻を結んだり、色々とある。


「でしたら……」


 せめて、このような場ではなく、情報が秘匿できる場所で話をするべきだった。オリバー様はそう言いたいのだろう。


 しかし、国王陛下は淡々と言葉を続けた。


「だが、国益に反する場合はその限りではない。ローレル卿も、理解しているな?」


「……はい」


 一人の安全と、国全体の利益を考えた時、国を優先することは理解できる。実際、自分が当事者となれば、納得できることではないが。


「もう一度聞こう。そなたは、女神の加護を持っているな?」


 別に、加護について公表していなくても、国の役には立っていたはずだ。だから、敢えて公表するのは、私に何かさせたいと言うより、周囲の人間を動かしたい、のだろう。


 私は、諦めて頭を下げた。


「……その通りでございます、国王陛下」


「うむ。して、加護の内容は『睡眠』か?」


「加護は『安眠』です。睡眠よりも質の高い眠りを提供するものだと、考えております」


 頭をよぎるのは、神父様との会話。加護持ちの種類についてだ。


 異なる世界から加護持ちが現れるのは、この世界のものだけで解決できない事態が起こっている場合だけ。


「そうか。であれば、これまでの活躍も納得だな。ローレル卿を始めとした、王宮内の様々な問題が解決したのは、加護持ちがもたらす幸運の効果もあるのだろう」


 異世界から来た加護持ちは、与えられたスキルに関する問題に直面することが多くなる。周りの人間からすれば、幸せを運ぶものである。


 この世界で生まれた加護持ちが与える幸運とは、少し形が違う。神父様が知っているのなら国王陛下も当然、その差は知っているのだろう。


 国王陛下は、真っ直ぐ私を見据え、問いただしてくる。


「して、そなたは、女神から神託を受け取ってはおらぬのか?」


「神託、ですか……?」


 そんなものは、ない。私は、ただ、階段から落ちて、気付いたらこの世界に来ていただけだ。


「過去の加護持ちには、女神から使命を与えられたものも存在した。そなたは、どうなのだ?」


 過去の異界から来た加護持ちは、殆ど魔王との戦いに関係している。


 魔王が勢力を伸ばすと医療や工学と言った、国にはない高度な技術を持った加護もちが現れ、戦いの旅に出ていたのだ。


 睡眠という、直接的に戦いに関わることではなくとも、新たな知識をもたらした私が、魔王との戦いに関係すると考えるのは自然だ。


「……ございません」


「まことか?」


「はい。そもそも、私の加護は戦うためのものではありませんので、女神様からの神託もないのではないでしょうか」


 神託があれば達成に向けて動いていた。というか、神託も事前説明も特になかったので、教会にお世話にならなければ路頭に迷うか、もっと酷い事になっていただろう。


「そうか。ならば良い。そなたの力は、停滞していた我が国を発展させるために、女神が遣わしたものなのであろう」


 姫様からの話を聞く限り、現時点では、魔王との関係は改善しそうな状態だろう。ただ、相手は長年争ってきた関係だ。

 信用するために、加護持ちが魔王を倒す使命を与えられていないのか確認したい気持ちは理解できる。


 そして、この場で他の貴族たちに聞かせたのは、今後発表する、姫様の婚約を受け入れやすくするためだろう。


 私を犠牲にするのは納得がいかないが、為政者として、姫様の親として、なるべく反対のない婚約にしようとしているのだろう。


 周囲の貴族たちからも、安心したような声がちらほらと聞こえる。私は深々と溜息を吐きたい気持ちを我慢して、オリバー様をそっと見上げた。


「陛下。長々とお時間を頂戴し、申し訳ございません。我々はここで……」


 意図を汲んでくれたオリバー様が、そう声を上げ、国王陛下も小さく頷こうとした、その時。


「失礼。陛下、口を挟んでもよろしいですかな」


 絢爛豪華な礼服を観に纏った、白い髭が立派な男性が、そう言った。

次回は来週末に更新予定です。

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