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安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


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文通手段

 アッシュ様との打ち合わせは、事前に質問事項を確認してから来ていたようで。食事の合間に簡単な確認をするだけで、あっさり終わった。


 長居することもなく、アッシュ様は食事をして、書類に話を纏めると早々に帰って行った。


 就寝前。ソファに並んで話す時間に、アッシュ様から受け取っていた小さな箱について聞いてみると。


「明日、使うものだ」


「そういえば、明日は姫様の所へ行く予定でしたね」


 こんな小さな箱に入るものを、どうやって使うのだろうか。素材になるのか、これ自体が手紙を送る手段になるのか。


 じ、と見ていると、私の視線に気付いたかのか、オリバー様が少しだけ笑う気配がした。


「明日、ユイも付いてきてくれるか?」


「はい。勿論です」


 姫様のことも気になるし、どうやって文通をできるようにするのかも気になっていた所だ。


 勝手に着いていくわけにはいかないが、オリバー様がこう言うということは、姫様からの許可も降りているのだろう。


 私が小さく頷くと、オリバー様も頷き返してくれた。


「服は……、向こうで着替えればいいだろう」


「そうですね」


 姫様の趣味に合う服装を、私も、オリバー様も持ち合わせていない。姫様もその事を知っているので、今回は服を用意しないと良いと伝えてくれていたらしい。


「成果は、楽しみにしておくといい」


「はい」


 ずっと気になっていた箱の使い道は、明日実演してくれるようだ。楽しそうな声音で言って、オリバー様がソファから立ち上がる。


 差し出された手を借り、私も立ち上がる。


「おやすみ、ユイ」


「おやすみなさいませ、オリバー様」


 オリバー様の睡眠予測時間、七時間。問題のない数値に少し、目を細めて、自室へと足を向けた。



 翌朝。姫様の宮に到着すると、前回同様、まずは風呂に案内され、ドレスを借りて、姫様の前に通された。


「ユイ、オリバー。よくきてくれたわね」


「ご機嫌麗しく、ウィスタリア姫」


 形式的に頭を下げるオリバー様は、以前ほど機嫌は悪くなさそうだ。姫様は、オリバー様の様子を見て少し目を見開いてから、小さく咳払いをして本題を切り出した。


「それで、おねがいしていたことは?」


 にっこり、とした微笑みは天使のように可愛らしい。が、要求の難易度を考えると小悪魔に見える。


 オリバー様は、眉を顰めて隠す気もなく溜息を吐いた。


「気が早いですね」


「ようけんは、さっきゅうに、よ」


「兄君たちの口癖ですか?」


 ええ、と姫様は頷いた。王子である兄君たちは既に公務を任されていると聞く。口癖からすると、仕事はかなり忙しそうだ。


 それで、と姫様はオリバー様を急かす。その目はキラキラとしていて、プレゼントを早く開けたい子供、そのものだった。


「できているの?」


 じ、と見つめる瞳に負けたのだろう。オリバー様が、小さな箱を取り出し、姫様の前に差し出した。


「……できてはいますが」


「さすがね、オリバー」


 これだけちいさいなら、かくすのもかんたんね。確かに、箱は姫様の手に収まるサイズで、机の引き出しにでも隠せそうな大きさだ。


 中身となると、さらに小さいものだろう。姫様ほどではないが、私も少しワクワクしながら、箱に視線を向ける。


「簡単に言ってくれましたが、かなり苦労しましたので。次からは軽率に言われないようお気をつけを」


「あら、そうなの? オリバーのことだから、すぐにつくってしまったのかとおもったわ」


「正当な手段を踏んで良いなら、もう少し早くできましたが」


 国王陛下や、魔術宮の長には知られないようにというのが姫様からの要望である。国王陛下は兎も角、魔術宮全体の力を使えないとなると、色々と制限があったのだろう。


 普通なら気圧されるような、低い声のオリバー様に、姫様は呆れたように返事をする。


「だめよ。はんたいされたら、めんどうでしょう」


「あ、できないとかでは、ないんですね……」


 思わず口に出してしまった。慌てて誤魔化そうとするが、侍女長がお気になさらず、と前置きをしてから説明してくれた。


「陛下は姫様に甘いので。とはいえ、安全の問題等を考慮して、反対はされるでしょうね」


 お願いの難易度は兎も角、父親が反対するから内緒にしたい、というのは年頃の女の子らしくて少し微笑ましい気持ちになっていたのだが。


 すぐに国が絡む規模の話となり、お姫様も大変だな、と思い直した。くちうるさいのよね、と呟いた姫様は、箱の蓋に手を掛ける。


「あけるわよ」


「どうぞ」


 ぱか、と小気味良い音を立てて空いた箱の中には、丸い、少しだけ厚みのある赤と青の物体が詰め込まれていた。


「これって……」


「封蝋……でしょうか?」


 日本では百均でも売っている、封蝋風シールに良く似た見た目である。


「ろう、って、てがみのさいごに、つかうものよね」


「はい。その通りです」


 手紙や封筒に封印をするために使う蝋。本来ならば、手紙などが開封されていない証明として使うものだが。


「手紙を書き終えたら、こちらの赤い封蝋を貼ってください。青い封蝋は最初の手紙に同封して、あちらからの返信の際に使ってもらうようにすれば良いかと」


 どうやら、この封蝋風シールを貼るだけで、姫様は文通できるようになるらしい。

次回は来週末に更新予定です。

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