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安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


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ドレスのデザイン

 オリバー様との約束の日。屋敷から馬車に乗り、少しの間揺られていると、すぐに馬車が動きを止めた。


「あの、此処ですか?」


「ああ」


 馬車から降り、周囲を見渡す。オリバー様の屋敷がある場所から、あまり離れていない。乗っていた時間と、城が少し小さく見えることから、比較的裕福な商人などが暮らす地域だろうとわかる。

 目の前にある家も、オリバー様の屋敷よりは小さいが、日本でいう戸建て住宅と比較すると少々大きい。二世帯住宅というか、そんな大きさだ。


 人が住むには十分な大きさだが、扉は一つで、家の中の様子は見えない。


「どうみても店には見えないんですが……」


 オリバー様は、ああ、と小さく頷いた。


「個人宅だからな」


「え。個人的な伝手が……?」


 仕立て屋となると、おそらく女性だろう。あまり女性と関わるイメージはないし、服へのこだわりはもっとなさそうだ。

 思わず声が漏れてしまったが、オリバー様は怒るでもなく、不思議そうに聞き返してきた。


「ユイも知っている相手だが?」


「え?」


 私の知り合いに仕立て屋はいない。女性の知り合いといえば、ミュリエル様くらいのもので。此処に居るわけがないし、ドレスは作ってもらう立場だ。


 どういうことですか、と聞くより早く。ガチャリと目の前の扉が開き、中から人が現れる。


「オリバー、ユイ嬢。来たのか」


「イーサン様?」


 そう、出てきたのは私も知っている人物。オリバー様の友人であり、騎士のイーサン様だった。


 困惑する私を見て、イーサン様はやれやれと肩をすくめた。


「なんだ、オリバー。説明していなかったのか?」


「必要ないと思ったからな」


 お前に会う予定もなかった、とオリバー様は嫌そうに言った。イーサン様の家に用事があるのに、イーサン様本人には合わなくてもいい。


 と、いうことは。


「すまないな、ユイ嬢。説明させてもらうと、俺の母と妹は、針子の仕事をしているんだ」


「そうなんですね」


 納得である。でも、それだと店に所属しているのであって、個人で仕事を受けてはいないのではないだろうか。


 普通のドレスを何人掛かりで作るものなのか知らないが、人数が足りない気がする。特に、今回は時間も二ヶ月しかない。


 かなり無理を言ってしまっているのではないか。オリバー様の顔を窺うと、気にするな、と首を横に振られた。


「これは元々、イーサン達からの提案だ」


 その言葉に、目を丸くする。騎士であるイーサン様は、警備の関係上、招待客の名前を早く知ることがある。

 リストの中に私の名前が入っていたため、ドレスの用意は大丈夫なのかと、わざわざオリバー様に確認してくれたらしい。


「私が忘れると思っていたとは、心外だったが」


「忘れるとは思ってないが、服に興味ないだろう。ユイ嬢が恥をかくことになったらいけないと思って」


 ファッションは驚きの速さで流行りが移ろう。細かなデザインや、色、布の種類などは詳しい人に聞いたほうが安心ではある。

 お二人が所属している店は、貴族向けにも販売を行っている店で、今季の社交界での流行りも抑えているという。


「大変ありがたいですが、どうしてそこまで……」


「以前、ユイ嬢には騎士団で講習をしてもらっただろう? あれで色々問題が解決してな」


 騎士という仕事は、危険と隣り合わせだ。そんな中、睡眠不足は致命的なものとなる。快適に眠れるようになるというのは、騎士達の無事の帰還を助けることに繋がるのだ。


「俺は勿論、母と妹もユイ嬢には感謝しているんだ。そこで今回、二人の衣装制作をを引き受けることにしたんだ」


「二人の腕は確かだからな」


 元々、オリバー様もお二人に依頼するつもりだったらしい。そのためにイーサン様に会いに行ったところ、先にドレスの話を切り出されたのだという。


「布はオリバーの持ち込みだから、後はデザインを決めてもらうだけだ」


「そうなんですね」


 デザインは流行りから外れすぎてはいけないので、幾つかのパターンを用意してあるそうだ。その中から好みのデザインを選び、私に似合うように調整するのだという。


「楽しみです。それで、布の色は……?」


 落ち着いた色なのに可愛らしいデザインにすると合わないだろうし、先に確認しておきたい。そう思ったのだが。


「……持ち込んだ布の種類が多くて、はっきり答えられないな。デザイン次第で使う布も変わるらしい。色を考えた上でデザイン案を出しているそうだから、好きに選んで大丈夫だと思う」


「ああ。どれもユイに似合う色だ。問題ない」


 どれだけ持ち込んだのだろうか。足りないよりはいいだろうが、選択肢が多くても選ぶのが大変なのに。


 というか、いつのまに布を準備したのだろうか。謎は増えるばかりである。


「詳しい話は中でしょう。二人も待っている」


「あ、はい。わかりました」


 待たせては悪いと中に入った途端。イーサン様と似た雰囲気の二人の女性から、10種類以上のデザイン画を渡され、私は更に困惑するのであった。

次回は来週末に更新予定です。

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