表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/67

侍女の説明

 こほん、と咳払いの音に振り返ると、宮に入って最初に出会った侍女が立っていた。


「自信満々に言っておりますが、姫様は詳しい状況をご存知ないでしょう」


「でも、わたしのことよ」


 ひとまず、お座りください。侍女に指し示された先には、部屋の雰囲気によくあったテーブルと四脚の椅子。


 お姫様が一番奥の椅子へと向かうのを確認してから、私は対角にある扉に近い椅子へ腰掛けた。


 オリバー様は私の隣、お姫様の向かい側に座る。侍女は人数分のお茶を準備をしてから、私の向かいに腰を下ろした。


「貴女は……」


「今回、特別に同席させていただきます。侍女長のマリアです」


 オリバー様には事前に伝えていたらしい。隣で小さく頷いている。侍女長は女性使用人の纏め役で、お姫様の乳母役も兼ねているらしい。


 眠っている間のことは自分ではわからないものだし、普段世話をしている人から話を聞けるのはありがたい。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 挨拶をしたところで、何から聞くべきか考える。相手は幼いとはいえ王族。失礼にならないように気を付けなければ、と作法を確認すべくオリバー様の方を見た、のだが。


 オリバー様は、出されたお茶に口を付けることなく、本題を切り出した。


「詳しい状況というのは?」


 いいのだろうか。私は思わず身を固くした。しかし、お姫様は特に気にした様子はなく、ちらりと侍女長に視線をやって促した。


「はい。およそ、三ヶ月前からでしょうか。就寝中の姫様の様子に、異変が起こり始めたのです」


 少し、引っ掛かる言い方だ。眠れていない、ではなく、就寝中の様子がおかしい、とは。


「眠れていない訳ではないのですか?」


「ちゃんとねてるわ」


「本人には自覚なし、ですか」


 オリバー様も同じことが気になったようで、侍女長とお姫様に確認するが、二人揃って首を横に振る。本人の感覚でも、他人が見ても眠っていることは確かなようだ。


 私も、スキルを使ってお姫様の睡眠時間を確認すると、おおよそ申告通りの時間で眠っていることがわかる。


「…………確かに、睡眠時間は十分そうです」


「どうした?」


 睡眠時間は十分。そして、眠った直後はしっかり深い睡眠になっている。今迄の相談者たちとは違い、そもそも眠れていなかったり、睡眠の質が良くないということはなさそうだ。


「いえ、しっかりと眠っていらっしゃるな、と。姫様、起きた時に体が痛いなどの症状はありますか?」


 睡眠の時間と質に問題が無いのなら、次は姿勢だろうか。異変、と言うくらいなので、寝相が悪いのかもしれない。


 睡眠の質に大きく影響を与えるほどではないが、無意識に姿勢を変えているなら、寝具を変えれば解消する可能性はある。


 そう考えたのだが、お姫様は少し考えてから、首を傾げた。


「んー、とくにない、かしら」


 これも違うか、と肩を落としそうになった時。眉を下げた侍女長が、お姫様を見ながら言った。


「そんな筈はありません。夜中、あれだけ動き回っているのですから」


「待て。それは、眠っている間に動いているという事か?」


「はい。私も、他にも見かけた使用人は多くいます。声をかけても反応はなく、翌朝確認しても姫様は何も覚えていないと仰って……」


 その瞬間、私の脳裏に浮かび上がってきたのは、ヨーロッパの山岳地帯に住む少女が主人公の、懐かしのアニメ。その中で、山から離れた少女にも起こった出来事。


 夢遊病。専門ではないので詳しくは無いが、子供に多い症状だったはずだ。名前の通り、眠っている間に歩いたり着替えたりすることがあるらしい。


 某アニメでは、ストレスが原因だったが、この場合はどうだろう。


「あの、もしかして……」


 最近、強いストレスが掛かることが無かったか。そう、尋ねようとした、のだが。


「やはりこれは、魔族と婚姻することになったことが原因なのでしょうか」


 侍女長の口から飛び出た、予想外の言葉に私は目を丸くした。

次回は来週末に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ