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安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


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可愛い姫様

 眉間に皺を寄せたまま、色めき立つ侍女たちの間を通って来たオリバー様は、私の前に立つと口元を少しだけ緩めた。


「ユイ。よく似合っている」


 声音は、いつもと変わらないのに。表情がはっきり見えているだけで、金の瞳が細められただけで。


「あ、ありがとうございます」


 本当にそう思っていることが伝わってきて、いつも以上に照れてしまう。


「オリバー様も、良くお似合いです」


「ならいいが。慣れない服装で落ち着かない」


 本当に良く似合っている。着せられた礼服は髪の色と相性の良い、濃いめの紺色。侍女や使用人に比べて落ち着いた色味だが、それが金の瞳を際立たせている。


「髪を上げられるのは珍しいですね」


 というか、私は初めて見た気がする。基本、オリバー様は朝起きてから寝るまで、重たい前髪で目は見えない。


 人と目を合わせることを苦手とする人は一定数いるし、魔法で周りが見えているなら、とあまり気にしたことはなかったが。


「面倒事が増えるからな」


 切れ長の瞳に、やや青白い顔色。眉間に皺を寄せていると、いかにも神経質そうに見えるが、それを差し引いても見目が良い。


 同性からは愛想が悪いとやっかまれ、異性からはアプローチを掛けられるのだろう。それを全て面倒事、で済ませるのがオリバー様らしい。


「この服装は姫様の趣味、ですよね?」


「だろうな。全く、あのままでも問題はないだろうに」


 余計な手間が増えた、と深々と溜息を吐き、再び眉間に皺を作る。侍女たちから熱い視線を送られているのも苛立ちの原因だろう。


 客観的に考えると、オリバー様は序列二位の魔術師で屋敷持ち。実力は確かで結婚すれば生活の心配はなく、貴族位を持ちつつも厄介な実家はない。


 おまけに見目も良いとなると、女性が放っておくはずのない優良物件である。


「着替えにも時間が掛かりましたからね」


「本当に、非効率的だ。意味がない」


 そうオリバー様が言ったところで、意味はあるのよ、と鈴を転がすような可愛らしい声が響いた。


「かわいくないなら、ここにはいっちゃだめなのよ」


 ゆるいウェーブの掛かった金髪。大きなサファイアを嵌め込んだような瞳。フリルがふんだんに使われた、プリンセスラインのドレス。


 なるほど。本人が言う通り、可愛いを凝縮したような外見だ。年齢は五、六歳だろうか。子供特有の丸みも相まって、天使のような愛らしさがある。


「これはこれは、ウィスタリア様。ご機嫌いかがですか?」


 そんな可愛らしいお姫様の登場に対し、オリバー様は畏まった口調で丁寧な礼をする。


 明らかに貼り付けた笑顔だが、お姫様は慣れているようで。わるくないわ、と短く答えた。


「なかなか、にあってるわね。オリバー、いつもそうしてたら?」


 満足そうに笑うお姫様だが、オリバー様の答えに容赦はない。


「嫌です」


 しかし、お姫様も中々引き下がらない。


「めいれいよ」


 命令し慣れた、人の上に立つもの特有の口調で告げるが、オリバー様は態とらしく肩をすくめた。


「姫様に魔術師への命令権はありませんよ」


「もう!!」


「それで、わざわざ呼び出した理由はなんです?」


「オリバー様、流石に……」


 子供相手に、あまりに大人気ないのでは。事情を聞くにしろ、もう少し相手に寄り添うべきだろう。


 そう思ったのだが、オリバー様は呆れたようにお姫様を見るだけだった。


「問題ない。既に一定の教育をされている王家の姫だ」


 ふざけてないで、説明してください。オリバー様がそう言うやいなや、天真爛漫な笑顔から一変、お姫様は、淑女らしい穏やかな笑みを浮かべて礼をした。


「ごめんなさいね、なら、さっそく、はなしましょう?」

次回は来週末に更新予定です。

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