表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/67

身支度

 侍女に連れられた私が向かったのは、風呂場だった。此処も所々にパステルカラーが散りばめられており、随分と可愛らしいデザインだった。


 そこで私は全身を洗われかけて必死に断り、背中だけ流してもらうことになった。


 精神的に疲れる入浴を終えたかと思えば、次はマッサージや保湿が始まり、身動きが取れないまま暫く。


 やっと立ち上がることを許可されたのだが、目の前には若葉色のドレスを手に持った侍女。


「あ、あの、これは……」


 先程まで着ていたワンピースとは、手触りが違う。刺繍やレースの数も多い。とても上品なデザインなのだが、シルエットはふんわりとしていて、可愛らしい印象を受ける。


 どう見ても高級そうなドレスを借りるのは気が引ける。そう思って侍女に視線を送ってみたが、心は通じず微笑みを返されただけだった。


「お気になさらず。これらは宮に常備してある物ですから」


「そう、なのですか」


 有無を言わさぬ笑みに諦めて従うことにすると、別の侍女が手に何かを持って戻って来た。


「それは……?」


「コルセットです」


 コルセット。ドレスなどを着る際に使う、ウエストを細く見せるためのもの。中世貴族女性の必需品とも言えるアイテムだ。


 コルセット自体のデザインも良いので、ファッションとして身に付ける人もいるようなものだが、私が使ったことはない。


「ユイ様が先程までお召しになっていたワンピースには、使っていないようでしたので」


「そう、ですね。基本的に着替えは一人でしているので……」


 きちんと絞めるのは難しいという理由が一つ。そもそも、コルセットが必要な服装をしないことが一つ。そして、最大の理由は、純粋にコルセットを使うと圧迫されて苦しいからである。


 加減すれば良いのだろうが、やはり使うだけで若干苦しいし、そもそもタイトな服装よりも、ゆったりとしたデザインの方が好きなのだ。


 そのため、コルセットの存在自体知っていても、今迄触れることなく過ごしてきたのだが。


「ご安心を。私どもが着付け致しますので」


 どう考えても断れそうな雰囲気ではない。あちらに手をどうぞ、と示された先には掴まるための手すり。


 容赦なく絞められることは間違い無いだろう。


「…………よろしくお願いします」


 結局、お手柔らかにお願いしますと言う勇気は出なかった。



 内臓がひっくり返りそうな程にコルセットを絞められ、自分なら絶対に選ばないプリンセスラインのドレスに袖を通す。


 服装に合うように化粧をしてもらい、髪を丁寧に纏め、見えない箇所に幾つか装飾品も付けられる。


 仕上げに、甘いバニラの香水を付けられ、身支度が終わる頃に聞こえてきたのは鐘の音。


 午前六時の朝の鐘ではない。これは仕事始め、午前九時を知らせる鐘だ。


 三時間半も身支度をしていたのか、と少々驚いたが、侍女たちは微笑んで互いにアイコンタクトを取るだけだ。


「丁度いい時間ですね」


「ローレル卿の準備も終わっているでしょうから、姫様にお声を掛けて頂戴」


 姫様。宮の内装から予想はしていたが、此処は王女様が暮らす宮なのだろう。


 調度品や使用人たちの服装から考えると、まだ幼いのだろう。何らかの原因で眠れなくなって私が呼ばれたのだろうか。


 仕事で来たのだから、しっかりしなくては。深呼吸して、気合いを入れ直す。


「あの、姫様について、お聞きしたいのですが……」


 本人が睡眠不足について自覚できていない可能性を考慮して、前もって侍女から情報を聞いておいた方が良いだろう。


 最近の変化。普段の生活リズムや、食事、睡眠環境。確認することは多い。


 そう思って声を掛けたが。


「まあ、ローレル卿!!」


「驚きましたわ」


 私の声は、年若い侍女たちの色めいた歓声に掻き消された。


 オリバー様が支度を終えて合流したようだが、どうして歓声が上がるのか。振り返ると、そこにいたのは。


「…………オリバー様?」


 少し癖のある緑の髪をオールバックにした、輝く金の眼をした青年だった。

次回は来週末に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ