表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
安眠スキルで異世界平和!!  作者: 借屍還魂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/67

次の招待

 睡眠予測の結果。食事や入浴、アロマは抱き枕ほどの効果を発揮しないことがわかった。


 いつも通りのルーティンを試したのだが、睡眠予測時間が伸びることはなかったのである。


「ストレス性、かな……」


 睡眠予測時間が、縮むこともあった。それは、オリバー様が仕事の話をした時。


 時間の減少は10分から15分程度のものだったが、睡眠の質自体が下がっている可能性も高い。


 その後、手を繋ぎ、『安眠の加護』を使用したことで最終的な睡眠予測は6時間となったが、目標には届かなかった。


「睡眠時間は予測と同じだったから、寝るまでに極力伸ばせるようにしないと」


 本日の朝、起床した時点での睡眠予測時間は昨日と同じ五時間半。四時間でないのは、抱き枕の効果だろう。


 だが、ストレスによる影響を考えると、仕事後には予測時間が変化している可能性が高い。


「ホットアイマスクの件が上手くいっていないなら、幾つか改善案を出したほうがいいかも」


 そんなことを考えながら、屋敷の掃除やアロマグッズの作成、夕食の仕込みをしているうちに、あっという間に時間は過ぎて。


 今日も今日とて、疲れた顔のオリバー様が帰ってきたのであった。


「おかえりなさいませ」


「ああ」


 短く返事をすると、早々に食卓につくオリバー様。机の上で両手を組み、深々と溜息を吐いている。


 表示されている予測睡眠時間は、今朝から大幅に短くなって3時間。余程、疲れることがあったのだろう。


「何かありました?」


 尋ねると、無言で視線が向けられる。これは、話してくれそうな雰囲気だ。というか、私に関係する話なのだろう。


 そう判断して、作っておいた料理を手早くテーブルに並べ、オリバー様の向かいに座る。


「ユイ」


 水を一口飲んでから、オリバー様が改まった態度で言った。背筋を伸ばし、聞く姿勢を作る。


「…………大変なことになった」


「……はい」


 魔術宮に行くことになった時も、騎士団に行くことになった時も、ミュリエル様に呼ばれた時も。

 面倒とは言っても大変と言わなかったオリバー様が、大変というようなこと。


 頭によぎるのは、ミュリエル様に言われた、夜会の話だ。


「……2ヶ月後に開催される、王宮での夜会に招待された」


 オリバー様が、ではない。宮廷魔術師や騎士は騎士爵を持っているので、元から招待されている。


 つまり、招待されたのは。


「……私が、ですか」


「ああ」


 招待への返事は、明日しなければならないらしい。とはいえ、答えは最初から「はい」しか用意されていない。


 オリバー様は頭に手を当てたまま、話を続ける。


「魔術宮としては、前例がない事態なので断りを入れた。ユイの案は素晴らしいが、温めるための技術はこちらで開発したことにしているからな」


「そうですね。アイマスクが私、オリバー様が温感について開発したことにしていましたよね」


 ぽっと出の平民が、発熱機能を考えたと言っても信じてもらえないだろう。


 私も材料を提案してもらったからスキルでホットアイマスクを作れただけで、何を使えば良いのか、量産するにはどうすれば良いのかを考えたのは魔術宮側である。


「一部貴族で人気は出ているものの、まだ一般流通もしていない。それだけでは、ユイを王宮に呼び出す理由としては弱い」


「功績を上げた人物が呼ばれるとは聞いていましたが……」


 まだ、功績がいまいち形になっていないのである。夜会に呼び、功績を周知するならば他に適した人物は幾らでもいるだろう。


「ホットアイマスクだけでは理由が弱いとして、もし、魔術宮と騎士団での話を入れたらどうですか?」


 結局、オリバー様と私が気にしているのは、王宮がそのことを知っているのか、そして私の加護に気付いているのか。その二点だけだ。


「……魔術宮全体の能率向上、騎士団の不満解決。この功績は大きいだろうな」


 騎士団に関しては、不満解決だけでなく徐々に体調改善にもつながっていくだろう。


 王宮側としても、国防に関わる騎士団のパフォーマンス向上は見逃せないということだろう。


 功績として讃えるだけでなく、より良い手法があるなら提案しろ、という点で。


「……アーロン子爵令嬢がユイに依頼をかけた時点で、もう少し噂に気を配るべきだった」


「いえ、オリバー様に責任はないかと」


 むしろ、余計なことに巻き込まれないよう、色々と手を回してくれていたのだと思う。


 それでも問題を呼び込むのは、女神の加護によるものだろう。


「私を呼ぶということは、睡眠上の問題があるということ。夜会への参加以前に、一度お伺いできればいいのですが」


「そうだな」


 そのまま秘密裏に問題だけ解決して、以降は静かに暮らすことが理想である。


「今回、招待の打診も内々のものだった。交渉してみよう」


「よろしくお願いします……」


 オリバー様に全て任せるのは心苦しいが、私が王宮に行くわけにもいかないので仕方がない。


 せめて今日はゆっくり眠ってもらおう。安眠の加護と子守唄、安眠フルセットを受けてもらおうと心に決めたのだった。

次回は来週末に更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ