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「あの世?」から届いた掌編奇想小説

作者: 畦道一歩

ミステリーの根源的な意味である「神秘や不可思議な出来事そのもの」を書いた。ロケット花火を打ち上げた暗闇から2枚の紙が落ちてきた。それは『「あの世」の郵便局にて』というタイトルの付いた掌編奇想小説であった。誰が落としたのか。この世界には「人間の頭で理解できる世界」と「理解できない世界」とがある。この「謎」をどう解くか。読者の妄想力が試されている。

目次

1.町内会の花火大会

2.「あの世?」から届いた掌編奇想小説

3.妄想による謎解き



1.町内会の花火大会

 ここは東町にある中央公園。町内会の夏のイベント『子ども花火大会』の会場です。総数28組の親子が集まっています。

 午後7時。町内会会長渡辺さんの開会挨拶が終わり、各役員が指定の場所に就くと、文教部長で、かつ進行係の宮下さんは注意事項をアナウンスし、子どもたちに明るく大きな声をかけた。

「さあ、みんなこっちに来て! このロウソクの火で点けるんだよ。火傷(やけど)しないように注意してやってね。いいかい。終わったら、燃えカスは必ずこの水を張ったバケツに入れてね」

子どもたちは自然とグループに分かれたようだ。

 線香花火を手にする子どもたちは、誰の火球が最後まで残っているか、を競い合った。勝った男の子が「やった! 一番だ!」と雄叫びを上げた。

 ネズミ花火を地面においている子どもたちは、火花を飛ばしながら勢いよく回転する花火に「キャーキャー」とはしゃぎ声を上げ、「パンッ」と断末魔の音を立てて消えると「うォー」と驚嘆の声を上げた。

ススキ花火を手に持つ子どもたちは、腰を引きぎみにしてパチパチと弾ける音と色に「きれい! きれい!」を連発した。

 燃えている途中で火花の色がどんどん変わっていく変色花火を持つ子どもたちは、色が変わるたびに「すげえ! また変わった! すげえ!」と感動の声を発した。

 余分に準備しておいた花火も底をついてきた。

 いよいよクライマックスの時間となった。

「最後はロケット花火だよ。シュシュシュ、ドーンって真上に飛んでいくから、気をつけてね!種類の違うのを3本飛ばすから!」

 宮下さんは子どもたちに大きな声で注意をしてから、花火のセットされた砂場へ誘導した。

「いいかい。おじさんが1本ずつ火を点けるから、もう少し後ろへ下がろうかな。頭に落ちたら火傷をしちゃうから。5メートル以上離れてくれるかい」

 子どもたちは素直に1歩、2歩、3歩……と下がった。

「じゃ、1本目に火を点けまーす」

 宮下さんはチャッカマンで点火すると、すぐに後ろに下がりしゃがんだ。

 花火は「シュシュシュルーシュルー」と音を立て白煙を噴き、暗い空を目指して勢いよく飛んで行った。みんなの目はいっせいに空を見上げた。地上から20メートルほど飛んだだろうか。空中で「パンッ、パンッ、パンッ、パンッ」と赤、青、黄、緑の火花が弾け散った。

「わー、すごい! きれい! きれい!」

 女の子たちが手を叩いて歓声を上げた。

「すっげぇ勢いで飛ぶじゃん!」

 男の子たちも声を張り上げた。

 風がないので、地上付近には白煙が漂っている。宮下さんはそれを手で払い、

「じゃ、2本目、火を点けまーす」

 花火は、また白煙を噴き、ピューッと鳴りながら暗闇に吸い込まれるよう勢いよく飛んで行った。みんなはまた見上げた。空中で「パンッ、パンッ、パンッ、パンッ」と火花が菊の大輪のように花を咲かせた。後には、白煙が残った。

 また子どもたちの歓声が沸き上がった。

「わー、すごい! 高く飛ぶんだねー」

 小躍(こおど)りする子もいた。

「すごい! すごい!」

 宮下さんは子どもたち─どの子も目をランランと輝かせている─を見やってから、「じゃ、これで最後だから。火を点けるよー」

 シューと勢いよく白煙を噴き、飛んで行くと「パーン、パーン、パーン、パーン、パーン」と赤、青、黄、緑、オレンジの傘の輪を広げたように光のシャワーを放った。それを浴びるように空を見上げているみんなの顔にも白煙が流れてきた。

 暗闇を引き裂くような光のシャワーに、女の子が感想を口にした。

「まるで空が破けたよう」

 男の子も続けた。

「空がパクッと割れたようだ」

 すると、光が消えて白煙がしだいに闇に溶けていく空に白い物が浮かび上がった。

「なんだ! あれ!」

 男の子が指をさして、叫んだ。

「なんだ! なんだ!」

 他の子どもたちも共鳴した。

 白い物はゆらゆら揺れてゆっくりと落ちてきた。

 我先にと男の子たちが駆け寄った。

 宮下さんと副会長の澤井さんも急いで、駆け寄り、宮下さんは子どもたちに「触っちゃだめだよ!」と大声で制止した。

 宮下さんが拾った。それはA4版のコピー用紙2枚だった。両面に文章が書かれていて、ページも付いていた。薄明るい街灯の灯りにかざし読んでみた。

 澤井さんが覗き込んできた。

「なんですか?」

 不可解な顔をして、

「なんかぁ、小説みたいな文章ですね」

 紙を手渡した。澤井さんはしげしげと見てから、横に来た渡辺さんに手渡した。

 渡辺さんは2枚の紙を交互にひっくり返し、顔にくっつくほど近づけて読んだ。

「小説かな?」

「風もないのにどこから飛んできたのかしら?」

 隣の女性役員も受け取った1枚を凝視し不思議そうに言った。

「なにかのいたずらですかね」

「どこから、誰が……」

 別の役員たちもきょろきょろと空に視線を泳がせて言った。

 子どもたちも集まってきて、

「なに、なに、なんなの、おばさん!」

「見せて、見せて、僕にも!」

 と、騒がしくなってきた。

 宮下さんは紙を受け取り、胸ポケットからスマホを取り出して、時刻を確認してから、会長に閉会の挨拶をお願いした。

 それが終わると、

「後片付けはおじさんたちがするから、みんなはお父さんやお母さんと一緒に帰るんだよ。足元は暗いから、気をつけるんだぞ。お化けにさらわれるんじゃないぞ~。解散!」

 と、ちゃかすよう子どもたちに声をかけた。

 この号令に子どもたちは紙のことなどどうでもいいという表情に変わり、親御さんに手を引かれる子、親御さんより先に駆け出す子、みんな満足して帰って行った。

 宮下さんと役員たちは花火の燃えカスを集め、残り火のないことを確認し、さらに念のため地面と砂場に水を撒いた。

「この紙、わたしが持って帰りますね」

 宮下さんはまるでゴミを処分するかのように言った。

「ああ、いいですよ。確かに、空から落ちてきましたよね」

 渡辺さんが深刻な顔をして確認してきた。

「はい。落ちてきました」

「どういうことですかね」

「さあ~」と、返してから、役員たちは互いに「ごくろう様でした。おやすみなさい」と声を掛け合って、公園を後にした。

 宮下さんは備品と花火の燃えカスの入ったゴミ袋をバケツに入れて左手に持ち、落ちてきた紙を右手に持って、帰宅した。


 リビングに入りソファに腰を下ろすやいなや奥さんが声をかけてきた。

「花火大会、どうでした?」

「あぁ、子どもたちはとても楽しんでいたよ。この町内も子どもの数が増えたんだな。余分に用意した花火もあっという間になくなっちゃったよ」

 文教部長の任務終了とばかりに答えた。

「世代交代で、若い人たちがたくさん転入してきてるみたいですよ」

 奥さんは明るく返してきた。

「そうかぁ」

 持ち帰った紙に目を落としたまま気のない返事をした。

 それに気づいた奥さんは「花火大会、無事に終わって良かったですね」と、ねぎらった。

「うん、う~ん」

 空返事をした。

「あら、どうかしたんですか? また、役員会義があるんですか?」

 奥さんは夫が手に持つ紙を会議開催の案内か、と問うた。

「いや、空から落ちてきたんだ。これ」

 この唐突な答えに奥さんは、

「えっ??」

 顔に疑問符を浮かべて応えた。

「これが、最後のロケット花火を上げた後に、空から落ちてきたんだ。火花や煙が消えるとともに……」

 言葉を止めて、紙をかざして見せた。

 奥さんの顔にはまだ疑問符が浮かんでいた。

 その疑問符を消してやろう─嘘じゃないぞ─と怖い目をして言った。

「落ちてくるのを見たのはわたしだけじゃなく、会長も副会長もその他の役員たち、子どもたちも親御さんも見ていた」

 奥さんの顔から疑問符が消えかかっていた。

「風、吹いてました?」

 風に吹かれて飛んできた、と奥さんが思うのも無理はない。

「いや、吹いてない。だから実施したんだ」

 奥さんはこのちぐはぐな遣り取りを察し、「なにが書いてあるのですか?」と建設的な問いをした。

 宮下さんは紙に目を落としたまま「掌編小説のようだ。字数にすれば、3000字ほどかな」。

「小説??」奥さんはまた顔に疑問符を浮かべ一拍おいて、火花や煙が消えると落ちてきたという言葉から「パラシュート型の花火? まさか花火の中に仕掛けられたマジックだったりして」と、できる限りの推理をし、微笑を浮かべて口にした。

「パラシュート型じゃない」突き放すよう強く返し、続けた。「マジック? ありえない」。

 火薬の筒の大きさからして、ありえるわけがない。そんなイベントでもない。

「じゃ、どこから、誰が……」と奥さんは言い淀み、「小説なら、タイトルと作家名があるでしょ」と発展的な問いをした。

「タイトルは『「あの世」の郵便局にて』。作家名は (ゆめ)()(かなえる)でいいのかな?」と紙を奥さんの顔の前へ持っていった。

「ゆめお・かなえる、でしょうね。そんな作家さん、いた?」

「いや、俺が知る限りいない」

「わたしも聞いたことないですよ。で、それ、読んだのですか。内容は?」と、また訊いてきた。

「うん。3分もあれば読める。内容は私小説ふうのミステリー、奇想……」と言いかけて、「興味あるなら読んでごらん」と手渡した。

 受け取ると、奥さんはメガネを掛けて読み始めた。



2.「あの世?」から届いた掌編奇想小説


「あの世」の郵便局にて     夢尾叶

 人間の命というものは(はかな)いものです。昨日まで元気だった人、ついさっきまで息をしていた人がコロッと死んでしまうなんてことがときどきあります。そんなとき、後に遺された家族や関係者たちは生きているときに、もっとこうしてあげれば良かった、ああしてあげれば良かった、と後悔するものです。『後悔先に立たず』。亡くなった方が親であれば、『孝行したいときに親はなし』なんてことも言われます。

 一方、これは想像するしかありませんが、亡くなられた方もあの世へ行ってから、生きているうちにああしておけば良かった、こうしておけば良かった、最後に家族や友人たちに「ありがとう」と言ってから死にたかった。あるいは死ぬ前に臍繰(へそく)りの隠し場所は、(こめ)(びつ)の底。女房にはバレないよう浮気をしていた。会社の金を横領していた。借金を踏み倒したなど、これだけは伝えておきたかった、これだけはやっておきたかった、白状しておきたかった、と亡くなった方にもいくつかの心残りはあるかもしれません。

 あの世、彼岸(ひがん)の三途の川のほとりに郵便局があります。亡くなった方がそこから現世、()(がん)へ手紙を出すのです。そこでは亡者たちの色んな会話が飛び交っています。

 汚職事件で重職を更迭(こうてつ)された後、その心労から大病を患い亡くなった元大臣は「あの事件は贈収賄ではなく、検察に()められたんだ。雇った弁護士たちもヘボなヤツたちだった。これじゃあ、犬死だ! 身の潔白をこの手紙で証明したい!」と鼻息を荒くしていた。

 亭主がつくった借金で一家4人が無理心中をした。がしかし、死なぬは亭主ばかりなり。すぐに再婚し、幸せに暮らしている。死んだ子の年も数えない。浮かばれない女房は「恨み、辛みを書いた手紙を送りつけたい」と嘆く毎日であった。

 小・中学校で受けたイジメを苦にして高層ビルの屋上から投身自殺をした女子生徒は自分をイジメた同級生たちに「死んで(のろ)ってやろうと思ったが、うまくいかない。死んでも花実は咲かなかった。せめてこの不幸の手紙だけでも読ませてやりたい」と、書いては消し、また書いていた。

 ある期間、テレビにも頻繁に出て売れっ子だった芸人は、闇営業で所属事務所を解雇された。行き場を無くし、冬の日本海へ入水自殺した。そのときに書き残した遺書を手に「ヤクザからもらった金は老母が還付金詐欺で騙し取られた金を返してもらっただけだ。みんな、俺のことを誤解している。これを読んでくれれば、分る!」と涙ながらに訴えていた。

 そんな中に生前、作家になることが夢で定職にも就かず、アルバイトをしながら執筆活動に明け暮れていた男がいた。手に持つ原稿をかざして言った。

「この小説は奇想文学界新人賞を取れる力作だ。作家を目指して苦節30年、四捨五入すれば50歳になる」

横で聞いている亡者が訊ねた。

「で、それがどうした?」

「色んなジャンルで書いては色んな文藝賞に投稿してきたが、どこからも賞をもらえなかった。その憂さを晴らそうと貯めた金で自棄酒(やけざけ)を飲む日々が続いた。スナックで酔いつぶれて、外へ放り出され、階段を踏み外したまでは覚えているが、気がつけばここにいた」

「だから、どうしたいのよ!?」

 そう問う隣の亡者の声は苛立っていた。

「誰でもいいからわたしの代わりに投稿して欲しいんだ。わたしには作家としての能力があるんだ。これを読めばどんな選考委員も分かるはずだ。賞を取って作家デビューをしたいんだ。でなければ死んでも死に切れない。う~~」

 男は唸り、首を垂れた。

「……?」

 周りにいる亡者たちは返す言葉がなかった。

このように郵便局内では亡者たちが現世で体験した悲劇、不平不満や悔恨を口にして騒いでいます。しかし、現世とは違い亡者たちは自由に手紙を投函できるわけではありません。手紙は郵便局長が一通ずつ開封し、その文面を検閲することになっているからです。

 これに腹を立てた亡者が尋ねます。

「プライバシーの侵害だ。なぜ、検閲をするのか? 憲法に反しているぞ!」

 局長は慈悲に満ちた笑みを浮かべて答えます。

「はい。ここはヨミ(黄泉=読み)の国ですから」

「……??」

 納得のいかない亡者はさらに反論します。

「ここにいる亡者たちは生きていたとき、いかなる悪人であったとしてもお釈迦様の前ではすべて善人として処遇されると聞いてやって来た。その善人の手紙を検閲するとは?」

 これに対して局長は首を大きく横に振り、諭すよう答えます。

「いいえ。それは大きな誤解です。この(あの)世に来ても現世へオレオレ詐欺を仕掛ける亡者もいますから」

「この手紙を使って、詐欺をする?」

 亡者は目を見開いて訊き返します。

「そうです」

 局長は冷ややかに答えます。

「ここへ来ても現世の生者を騙そうとする悪人がいるのか? 信じがたい」

 と、別の亡者も口を挟みます。

「残念ですが、いるのです。そんな輩が。現世が変りつつあるように、この(あの)世も一刻一刻と変りつつあるのです。すべての方を善人として扱うわけにはまいりません。悪人はどこまでいっても悪人です。生粋の悪人根性はたとえ死んでも治りません。南無阿弥陀仏、アーメン、南無妙法蓮華経」

「う~ん。なるほどぉ」

亡者は感心してしまいます。返す言葉がありません。

 しかし、まだ大きな疑問がありました。もし投函できたとして、手紙は誰がこの(あの)世から現世へ届けるのか。この(あの)世から現世へ帰って行った者などいないからです。また本当に届いたのかどうか、を確認することすらできません。

 局長はこの疑問に静かに答えます。

「大昔なら陰陽師、今も存在するイタコやシャーマンに託すのです」

「そういえば、イタコの言っていることは当たっていた」

 生きていたとき、イタコに死者を呼び戻してもらう(口寄せ)祈祷をお願いしたことのある亡者がポツリと言った。

 すると、先ほどの作家志望男が手に持つ原稿を小刻みに振りながら口を挟んだ。

「検閲をしてくれてもいい。きっと感動するはずだから。陰陽師、イタコ、シャーマン、誰でもいい。この原稿を投稿してくれ。頼む~~~」

 周りの亡者たちは一瞬、ポカ~ンと呆けた顔をした。

 我に返った別の亡者が話を戻し、また疑問を口にします。

「あれは生者が死者と話してみたい内容を事前に誰かがイタコにそっと教えているのだろ?」

 この一言で亡者たちの疑心に満ちた目がいっせいに局長に向けられた。

 それでも局長は(ひる)むことなく、きっぱりと言い切った。

「正しく成仏(じょうぶつ)することです。もう、お止しなさい。死人に口なし。いいえ、愚痴(ぐち)なし」

 最後のダジャレに呆れて亡者たちは目を丸くし口をあんぐり開けてしまった。

 その空気も読めず、作家志望男だけが顔を紅潮させて絶叫した。

「誰でもいいから、この原稿を、原稿を、原稿を文藝賞へ投稿してくれ!」(了)



3.妄想による謎解き

 読み終えると、奥さんは壁に掛けたカレンダーに目をやり、右手でメガネのツルをぐいと上げ、「今日はお盆の2日目ですね」と、頬を緩め意味ありげな声音でポツリと言った。

 つられて、宮下さんもカレンダーに目をやった。8月13日、火曜日、仏滅の表示を見た。「迎え盆だな」ボソッとこぼし「で、どういう意味?」。奥さんの顔を見て訊き返した。

奥さんはまた頬を緩めて、少し弾んだ声で答えた。

「迷信ですけども、よく言うでしょ。お盆の期間中は『地獄の窯の蓋も開く』って。その隙に、亡者が落としたりして。あるいは勘違いした亡者がどこかの文藝賞へ投稿しようとこの世に戻ってきていたりして」

「ふん。ありえない」

 思わず、鼻で笑って─えっ、本気かい?─その顔をまじまじと見返した。

 それにかまわず奥さんは明らかにちゃかした声音で続けた。

「芥川龍之介の『杜子春』の中に、(あん)(けつ)(だう)というこの世と地獄を結ぶ道があって……」ここで言葉を切り、夫の表情を窺ってから「水木しげるの『鬼太郎夜話』によると地獄には出入口が404あって、人間はその一つも分からないそうですよ……」

「んんっ」奥さんの言葉を遮り、「小説だろ。漫画だろ。バカバカしい。いい加減にしろ」そう声を出したいところをぐっと(こら)えて、数秒、()を取ってから、強い口調で薀蓄(うんちく)を披露した。

「それを言うなら、『パンドラの箱が開いた』だろ。『地獄の窯の蓋も開く』というのは地獄の鬼が亡者の呵責(かしゃく)を─亡者を煮る窯の蓋を開けて─休む日のことだ。この世でも、すべての人が仕事を休んで骨休めをする習慣のこと。江戸時代かな、藪入りとも言った。奉公人や丁稚さんの有給休暇の日だ。古典落語を聴くと、ときどき出てくる」

「だからぁ、迷信、勘違いした亡者って言ったでしょ」

 奥さんはすぐに笑みを含んだ声で─冗談に決まってるでしょ─不満げに言葉を返した。

 こんな遣り取りをしても、奥さんはこの紙が空から落ちてきたとはとうてい信じてはいなかった。

 このトンチンカンな会話を打ち切るように、宮下さんは「どこの誰が……、なぜ、……よう分からん」と苛立ち腕を組んで黙ってしまった。


 翌日、奥さんが外出した後、静かなリビングで宮下さんは紙を前に置き、ありそうなことを推理していた。そこへ、インターフォンが鳴り、渡辺さんと澤井さんがやってきた。

 ドアを開けると、すぐに渡辺さんが訊いてきた。

「昨夜の紙、小説でしたっけ。どうしました?」

 宮下さんは紙をかざし、

「捨ててません。ここにありますよ。どこから、誰が落としたのか、色々と推理してましてね」

 と、小首を傾げた。

「わたしたちも気になって……」

 ソファに座ると渡辺さんは紙を受け取り、黙読した。読了後、「やはり小説だな。ふ~ん」と鼻を長く鳴らし額の皺の数を増やした。そして澤井さんに手渡した。澤井さんも黙読した。

「じゃあ、わたしには知識も知恵もないので、それをお2人から拝借して、ご一緒に推理してみましようか」

 宮下さんは頬を緩めてそう誘った。

「いやいや、わたしもありませんよ。お互いに知識を出して知恵を絞ってみましょう」

澤井さんは右手を胸の前でさよならをするときのように左右に振って笑みを浮かべた。

「見たり、聴いたりしたことなら見間違いや聴き違いとも考えられますが、具体的に空から落ちてきましたから」

 渡辺さんの声はいかにも難問だと言っていた。

「はい。考えられるのはまず、建物と木ですよね」

 宮下さんが先に切り出した。

 すぐに渡辺さんが答えた。

「でも公園の近くには高いビルや民家はないので、誰かが2階から紙飛行機のように飛ばしたとは思えない。木については公園の右側奥にありますが、それらは30メートル以上離れてますよ。その木に引っ掛かっていたものが、飛んできたとも思えない」

 あくまでも暗闇の空から落ちてきたことを再確認する口調だった。

「はい。昨夜は微風すらなかったですから。建物や木じゃないとすると……」

 予想したとおりの答えに宮下さんは渡辺さんの顔を見て促した。

「パラシュート型花火じゃなかったし、ましてやマジックとも思えない」

 渡辺さんはいかにも分からんとこぼした。

 宮下さんは─奥さんと同じこの推理に─思わず頬を緩めたが、なにも返さなかった。

「暗闇を飛ぶ鳥はどうですかね?」

 腕を組んだままの澤井さんがとっさに思い付いたという声音で言った。

「んんっ? 暗闇を飛ぶ鳥ですか?」

「はい」

「コウモリ?」

 渡辺さんは質問の意図を解さぬまま、即答した。

「いえ。もっと大きい」

「モモンガ?」

 また、すぐに答えた。

「いえね、たとえば、ヨタカやミミズクがどこかで見つけた紙を(くわ)えて飛んでいて、それが花火の音と光に驚いて、落としてしまったと」

 こう聞かされると、宮下さんは困ったような顔をした。

「確かに、昼間であればカラスがお菓子の袋を銜えて飛んでいるのを見たことはありますが、でも夜に鳥が紙を銜えて飛びますかね?」

 そう言うと腕を組んで、視線を紙に落とした。

 この程度の推理力ではこの超常現象の「謎」は解けそうになかった。ありえないことが起こったのだから、ありえない妄想─根も葉もないことを信じ込む─を巡らせてみるしかない。というのも偉大な科学的発見や芸術の成果なども、それはとんでもない妄想からの産物である一面を持つからである。

「う~ん、妄想かぁ」と澤井さんは亀が首をもたげるようにして、今度は深刻な表情をして知識を口にした。

「時空連続体にほころびが生じたのかも」

宮下さんは澤井さんの豊かな妄想力に「えっ? まさかぁ」という顔をして「時空連続体なら聞いたことはありますが」。

「時空連続体? ほころび? なに? それ」

 そう問う渡辺さんの顔には複数の疑問符が浮かんでいた。

 かまわず澤井さんはぽつりと言った。

「太陽フレアが起こす時間の乱れ……」

「太陽フレア???」

 渡辺さんの疑問符は増えた。

 表情を変えないまま澤井さんは説明した。

「太陽フレアとは、太陽の表面が大規模な爆発フレアを起こすこと。爆発すると地球に高温の電気を帯びた「磁気嵐」や高エネルギーの粒子、X線などが飛んでくる。大規模かつ深刻な通信障害が発生する」

「さっぱり分からん。それで?」

 渡辺さんは「さっぱり」に力を込め、その声はなぜか怒気を帯びていた。

「今回は時間エネルギーに影響が及んだのかもしれない。過去と現在をつなぐ四次元通路ができて、時間の川に架けられた橋を渡って、紙は過去からやってきたんじゃないかな」

 と、澤井さんは続けた。

「時間のひずみを利用してエネルギーとするものですね。説明はとてもとても難しい」

 澤井さんが持つ知識に感心しつつ宮下さんが付け加えた。

 その言葉を援軍として、澤井さんは妄想を続けた。

「花火の上がった地上20メートルあたりに『あの世』へ通じる裂け目ができたのかもしれない」

「なんじゃそれ? SFかい?」

 渡辺さんの顔からは疑問符が消えないままだった。

「でも、ありうるかな~」

 宮下さんが軽く否定した。

 続けて、渡辺さんはすべて拒否した。

「太陽がそんな爆発を起こしていれば、ニュースになったはず。見ても聞いてもいない」

にもかかわらず澤井さんはこりずに妄想力をたくましくしていた。

「花火を打ち上げるたびに、紙が落ちてくるといいですけどねぇ」

「どうして?」

 渡辺さんが不思議そうに訊いた。

「それを逆手にとって、この町をミステリースポットと銘打ち夏の観光資源にすることもできますよ」

 澤井さんは得意げな顔をしていた。

「……? なんてアピール、広告キャンペーンをするの?」

 宮下さんはちゃかしてみた。

 数秒、思案してから澤井さんは、

「『紙の降るあやしい里への旅』。どうですか?」

 と相好をくずした。

「そんなアホなことを……」

 渡辺さんはたまらず、小バカにした口調でまた拒否した。

 話題が本題から外れていくのを戻そうと、宮下さんは「冗談はさておいて」と、2人を見て続けた。「小説の趣旨からすると、この紙は『あの世』から落ちてきたことになります。『あの世』と『この世』を結ぶものはなにか。その境界はどこにあるのか。わたしは宗教めいたことにはまったく疎いのですが、小説の中に『陰陽師、イタコ、シャーマン』という宗教用語があります。が、これらは人を介した交信手段ですよね」ここで二人の顔を交互に見て、「花火大会に参加していた住民の中にそんな人物はいますか? 町内にいますか?」と確認してみた。

「70年近く、ここに住んでますが、そんな人物はいませんよ。聞いたこともない」

渡辺さんが自信にあふれる声で答えた。澤井さんもコクンと首を下げた。

「いませんよね。うん」宮下さんはうなずき、「問題は人ではなく、紙が落ちてきたわけだから文書による『あの世』と『この世』の交信手段だと思うんですよ。そんな宗教儀式ありましたっけ?」短く伸びた(あご)(ひげ)を指先の腹でジャリジャリと撫でながら答えを期待する目で、そう訊いた。

 2人は「宗教儀式」と問われ、あれやこれやと考えてみるが、さっぱり思い浮かばない。

気分を変えようと宮下さんは立ち上がり両手を組んで万歳をするように高く伸ばして「プハーッ」と炭酸飲料を飲んだときのように息を吐き、そのまま上半身を右へ左へと数回傾げた。そして順を追って考えてみることを提案した。

「交信手段の前に『あの世』と『この世』を結ぶ境界はあるのか。入って、出てくる具体的な場所。あるのならどこにあるのか。まず、考えられるのは三途の川ですよね。小説にも書かれてました」

 すぐに渡辺さんが返した。

「三途の川は確かに境界ではあるが、あそこは『あの世』への入り口であって出口じゃないでしょ」

「渡って、戻ってきた経験がないから、分からんなぁ。でも入り口でしょ」

 そう答える澤井さんは微笑を浮かべていた。

「そうですよねぇ」と同意しつつも、宮下さんは奥さんの口から聞いた『地獄には404の出入り口』があることや、『闇穴道』とも通じていて、出口にもなりうる、と自嘲ぎみに説明してみた。

「なるほどぉ、ふ~ん」

 渡辺さんは、そんな漫画や小説があるのか、でも納得はしないぞ、という応え方をした。

 3人の妄想はまだ空回りしていた。

 次に、交信手段は文書という物。これに限定した宗教儀式を色々と考えてみた。がしかし、なにも浮かばない澤井さんは、なんでもいいからヒントをくれ、と問うた。

 宮下さんもどん詰まりの状態であったが、くれと言うのであれば、

「その方面の知識はまったく持っていませんがぁ、仏教の経典とか、民間信仰とか、古文書とか、怪奇文学とか、心霊術とか、神話とか、寓話とか、『万葉集』とか、『日本書紀』とか……どうですかね」

 と、いい加減ともとれる返事をしてみた。

 すると、澤井さんの頭にピーンと閃くものがあった。

「あ~ぁ。思い出しましたよ。『古事記』の中に書かれた儀式がありますね」

「んんっ? ありますか?」

 思わず顔を突き出して確認した。

 渡辺さんは「ほ~。あるんだぁ」と、澤井さんの持つ知識に感心し目を丸くした。

「はい。この世の人が亡くなった大切な人に宛てた手紙を火にくべる『たき上げ』の儀式がありますね。それは今もおこなわれてますよ」

「それはどこですか?」

「場所は確かぁ、島根県の黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)

「よもつひらさか?」

 宮下さんははじめて聞く地名を復唱した。

「はい。この地は、イザナギが死んだ妻イザナミを慕い黄泉比良坂を通って黄泉の国を訪れたのですが、その変わり果てた姿に驚いて逃げ出し、この世との境を巨大な岩で塞いだ場所とされてますよ」

 話し終わると、澤井さんはパッと笑顔を咲かせた。

 渡辺さんは知識の無さを覚られまいと苦笑して応えた。

 宮下さんの目がキラッと光った。

「それですよ。そうかぁ。『あの世』と『この世』を結ぶ境界は黄泉比良坂にあったんだ。それに手紙という文書」

 ここから一気に「謎」が解けそうに思えた。がしかし、もし、この紙が黄泉比良坂へ落ちてきていたのなら─話したところで誰も信じてはくれないだろうが─つかぬ理屈もつけられる。『あの世』と『この世』を結ぶ境界なのだから。

 ところが、落ちてきたのは我が町内の公園である。我が町内は、はるか大昔は原始林、次に畑として開拓され、さらに住宅地として整備されてきた場所。どこをどう探ろうが『あの世』と『この世』を結ぶ境界のある場所ではありえない。『古事記』の内容とは無縁の場所。

 渡辺さんが眉間の皺を増やして根本的な疑問を口にした。

「じゃ、黄泉比良坂じゃなくて、なぜ花火をしている公園に落ちてきたのかなぁ?」

 妄想も振り出しに戻ったようだ、と思いつつ、宮下さんが答えた。

「この季節、花火大会ならいろんな地域でおこなわれてますよね」

 すると澤井さんが、「こんな妄想はどうですかね」と2人の顔を順に見て、「なにか別のメッセージじゃないですかね」と含みをもたせて言った。

「別のメッセージ?」と問い返す宮下さんに続けて、渡辺さんは、「ただ文壇にデビューしたいという思いで書かれた小説のようにしか読めませんけども」と付け加えた。

「その文壇への恨みとか?」

 澤井さんは不気味な笑みを浮かべ複雑な顔をしていた。

「受賞できないことへの恨みですか?」

 宮下さんが確認した。

「はい。それが元でわが町内に祟りのようなことが起こらなきゃいいですが。わたしはちっとも信じてませんけどね」

 澤井さんは眉間の皺を微かに緩めて言った。

「そう妄想しますかぁ? それじゃ、さっきのミステリースポットと同じで公園は心霊スポットですよ」

 宮下さんはまた澤井さんの豊かな妄想力に呆れたという声を返し、視線を天井へ移した。

「う~ん」渡辺さんは顔をしかめそっぽを向いた。

 それでも澤井さんは愉快そうな顔をして言った。

「郵便局長はシャレ気のある人物として書かれてますね。読み方によればコント……」

 話題はまた外れていきそうだった。

「んんっ」

 宮下さんは意図して話の腰を折った。

 考えが行き詰れば、発想や視点を変えるしかない。公園と黄泉比良坂を関係づけるものはなにか。公園での花火、黄泉比良坂での『たき上げ』。共通するのは火。もし火がキーワードだとすれば……。

 澤井さんはド忘れしていたことを思い出したように「火であれば、『火渡りの儀式』がありますね」と声を弾ませた。

「それはなんですか?」

「仏教のとくに修験道で行われている儀式です。火をつけて燃やした薪炭の上を裸足で歩く修業の一つですよ」

「は~」

 宮下さんは─ピントが外れているぞ、と─気の抜けた声をもらした。

「もう一つありますね」

 今度は渡辺さんが目尻を下げて言った。

「えっ? なんです?」

 とっさに宮下さんは訊き返した。

「不要になった雛人形を供養するために『おたき上げ』をする儀式ですよ」

 そう聞かされると、テレビで放映されていたことを思い出した。

「送り火なら京都の『大文字焼き』が有名だね」と笑みを浮かべて言う澤井さんに続けて、渡辺さんが「60年代には『お盆の迎え火』を各家で焚いていたよなぁ」と懐かしそうに続けた。

「今じゃ、近所迷惑だって、消防車を呼ばれちゃいますよ」宮下さんは口を挟み、「でも、どれも文書とは関係ないですよね」と、軽く反論する頭には『どんど焼き』が浮かんでいた。

 それを口にすると、渡辺さんは「『どんど焼き』は小正月の頃に神社でおこなう儀式ですし、神様との交信手段ですよ。今はお盆の期間中。場所は公園です」いとも簡単に否定した。そしてまた根本的なことを口にした。

「公園に落ちてきたことの意味はなんですかねぇ?」

「さっきと同じで、それですよね。知りたいことは」宮下さんも同じ気持だと伝え、「この町内に小説に書かれているような作家志望の方がかつていたのかなぁ、あるいは現にいるのかもしれませんね」

「いたとしてその人に届けて欲しくて、落としたと」

 澤井さんが神妙な声で付け加えた。

「小説内の郵便局長の言葉だと、この世に届けられる手紙もあるようだが、そんなバカなことが……」

 渡辺さんは、ありえない、冗談だろ、勘弁してくれ、という顔をして返した。

 2人は宮下さんの考えを待った。

 数秒後、宮下さんは大きく「ふーッ」とため息をつき答えた。

「まるでミステリー小説を体験させられているような感覚ですよ」

「はい。それも謎を解く明快なヒントすら見つけられない」

 澤井さんは反射的に続けた。

「いや、ヒントがない。お手上げだ」

 渡辺さんはギブアップ宣言をした。

 このように3人は答えを出しあぐねていた。さらなる妄想はあるのか、できるのか。

 宮下さんは諦めにも似た声音でぽつりと言った。

「あれしかないのかなぁ?」昨夜、聞かされた瞬間に一笑に付した奥さんのある言葉が蘇った。

「公園での花火を『たき上げ』の火と勘違いして、亡者が誤って─あるいは意図して─ここに落とした、とは考えられませんかね? 縁者に届けて欲しくて。う~ん」

 こう話す宮下さんの疑問符であふれた声は、この超常現象の「謎」を解くカギはこの妄想以外にない、と聞こえた。

「謎が解けた」と、結論を聞かされたと受け取った澤井さんは「えっ?」という顔をし、どう返せばいいのか分からず、たっぷり5秒ほどポカンとしてから「あの世から落とした……ふ~ん」なんとも腑に落ちないという顔をした。

渡辺さんは額に増やした皺の数で複雑な思いを現した。

 人間は理解できないことを不安に感じる。もっともなことだ。そのため理解できない物語には意味を見出したい生き物でもある。不条理であればあるほど考察欲をそそられる。この世に決して実在しない妖怪だって理解できないことが起きたとき、それを妖怪の仕業ではないかと頭の中で想像して、作り上げたものである。それでもって人間は不安を和らげている。今直面している超常現象もその類なのだろうか。紙が落ちてきたという現実はあるのだが……。

 長い沈黙の後、40秒ほど経っただろうか、それでも澤井さんは、

「この小説が私小説だとすれば、小説に書かれている作家志望男のトンマそうな性格からすると、ありうるかなぁ」

と肯定したような口ぶりではあるが、とてもじゃないがまだ納得していないぞ、という顔をしていた。

 しかしこう考えてみると、妄想も空想─事実の世界に足をつけて虚構を想像する─の域に入ってきた。これ以上の妄想はありえない。

「でもなぁ、これでいいのかなぁ?」

 宮下さんとて、それらしき説明はできても、とうてい納得できたわけではなく目を閉じて腕を組み黙ってしまった。

 澤井さんも腕を組み、紙に視線を落としたままだった。

 渡辺さんは考えることに疲れたようで呆けたように床の一点を見つめていた。

 3人とも心の中では、この超常現象と現実とをなんとか結びつけようと悶え苦しんでいた。妄想ももう出尽くした。ようやく結論らしきものをまとめてみた。

 この世には科学─その現象がなぜ起こるのかについて、モデルを作ってメカニズムや因果関係を探る─では説明のつかない超常現象がある。UFO、心霊写真や座敷(ざしき)(わらし)。それが映画に作られ、テレビの番組になることだってある。空想や妄想と思える神話や物語の中にも、現実の種が埋め込まれている。人の経験や体感は神話や物語の姿を借りて、後世に教訓として残されてきたものもある。

 これが、3人が出したおよそ科学的ではない結論─結局、よくは分からない─ではあるが……。世の中には人に知られていない不思議なことがたくさんある。それは我が身にふりかかってみてはじめて分かる。この超常現象の「謎」を解くカギはなにか。あるのか、ないのか。読み手の妄想力が試されている。(了)


参考文献。

芥川龍之介『杜子春』青空文庫より。

水木しげる(2024)『鬼太郎夜話(下)』ちくま文庫、25頁参照。





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