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受け継がれていくこと

作者: 白夜いくと

◇◆◇


秋風に

はらりはらりと

流されて

落ちる葉には

みちるおもいで


◇◆◇


急に、思い出話がしたくなった


その時が訪れたら

潔く無になると言っていた祖母

最後まで苦しんでいたらしい

私はその場に居なかったけれど……


あのとき握られた手の冷たさ

もう忘れかけている

今は暖かな母の手を握りしめているから


人ってそんな風に忘れられるのかな

顔も身長も今では朧気で

憶えているのは母の昔語りの中の祖母

人との繋がりを大切にしていたってさ


毎晩ハガキを書いてお得意様に送る

今みたいに全体メールじゃなくて手書きで


母子家庭を学校でバカにされたときは

泣いて怒って帰ってきたらしい

その分働いて二人の子どもを何不自由なく育てたって


祖母の人と人との繋がりのお陰で

喫茶店で好きなご飯を後払いで食べられた親

デパート勤めだった祖母は

そこそこ質の良い食べ物を安く買ってくる

だから食べ物で争うことはご法度だったらしい


それを受け継いでか

私の親も食には寛容だ

私が食べてみたいといった物はたいてい買ってくれる

といっても江戸前寿司とかそういう高級なものではない

みんなが食べてそうな流行りのスイーツとかだ

私もそれで満足している


冗談でも「ひもじい」と言えば親は怒る

「いやしいこと言いな!」って


決して貧困を指すからではない

「こんなに尽くしてまだ何が欲しいねん!?」という

親の本音なのだ

よくわかっているつもりだ


我が家のNGワード「ひもじい」

それは代々続く先祖たちが防いできた災いの言葉

食べたいものが食べられる毎日があること

決して運なんかじゃない

勘違いしないようにしなきゃな

そう想う


私はあの時の祖母の手の冷たさを忘れかけている

親は……どうなのかな

あの時一番近くに居た人だ


最近変わった冷たさを親に感じるようになった

老いて朽ちるという表現は好きじゃない


居なくなってから輝く人も居るのだ

もしかしたら全ての人がそうなのかもしれないな


◇◆◇


秋風に

はらりはらりと

流されて

落ちる葉には

みちるおもいで


◇◆◇

読んでくれてありがとうございます。

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